Epistula ad mē

「美」というものは、藝術と人間の霊魂の問題である

Lexicon

2022.01.02日記

イギリス文学とは何か? アメリカ文学とは何か? 私には説明がつかない。世間の関心は薄い様に思われる。その証左となるかは分からぬが、岩波の『○○文学案内』シリーズも、英米文学についてはカバーしていない。 私にしても、シェイクスピア、エドガー・アラン…

2021.11.17日記

快晴、暖かい。六義園へ行く。風流なことなんて何もない。こんなものを有難がって、東京の人間の田舎臭さにはほとほと呆れる。 夜は『タンホイザー』を聴いた。 怯懦(きょうだ) 臆病で気の弱いこと爾余(じよ) それ以外端倪(たんげい) 物事の成行を見通すこと…

リラダン『アクセル(Axël)』1890

斎藤磯雄氏譯、東京創元社。ヴィリエの理想主義的な夢と中世趣味が見事に結晶した詩劇。ヴィリエの死後に出版された。 青春から逃れ、シュヴァルツヴァルトの古城で現身と永劫世界の間に揺れる男。美しき姫サラ(レオン・ブロワの言葉を借りれば、「無限に美…

2021.08.28日記

惨めな思いをしてまで、義理のために生き続ける必要があるか 悪鬼羅刹(あっきらせつ) あらゆる恐ろしい魔物ratiocination 推論ポンス(pons) ポンチのこと素馨(そけい) 植物、白い花を咲かせる骨相学(こっそうがく) 頭部の骨相をみて、その人の性格・運命を判…

2021.08.10日記

2021年の夏が私に残すものは 蹌踉(そうろう) よろめくこと易わる 変わるaccomplished 嗜みを身に付けたvexed いらいらして聟(むこ) 婿当代浮薄見晴るかす はるかに見渡すこと凭れる(もたれる)星辰(せいしん) 星々のこと悉皆(しっかい) 残らずすべてhitherto …

リラダン『未来のイヴ(L'Ève future)』1879

御冗談でせう!「美」といふものは「藝術」と人間の霊魂の問題です! 公に発表されたのは1880年のこと『ル・ゴロワ(Le Gaulois)』紙上にて。赤貧の貴族ヴィリエ・ド・リラダン唯一の長編小説。女性観、恋愛観、反ブルジョワ精神の結晶。私が読んだのは、東京…

ドールヴィイ『罪の中の幸福(Le bonheur dans le crime)』1871

『魔性の女たち』を構成する短篇の1つ。観察者たるドクターが、パリの植物園(Jardin des Plantes)で遭遇した美しい対の男女の罪を、同行者に語って聞かせる。美が罪に勝利するという一例。 私はもうユーラリィではありませんわ。私はオートクレール、彼のた…

ユイスマンス『彼方(Là-bas)』1891

万事が俗悪で空虚な現代世界に厭いているデュルタルが、ジル・ド・レー男爵の研究を通して、超自然的世界に触れる。彼は中世キリスト教の世界を理想視し渇望するも、信仰を持つには至らない。そんなフラストレーションが描かれている。 ・シャントルーヴ夫人…

ラ・ファイエット夫人『クレーヴの奥方(La Princesse de Clèves)』1678

自然描写が殆どなく、恋愛心理の明晰な分析に集中しており、心理小説の祖と云われている。ラ・ファイエット夫人が生んだ、新たな近代心理小説の伝統は、ラクロ『危険な関係』、コンスタン『アドルフ』、ラディゲ『ドルジュル伯の舞踏会』等に引継がれた。ま…

リラダン『殘酷物語(Contes cruels)』1883

実利主義的なブルジョア社会を告発する短篇小説集。 『ビヤンフィラートルの姉妹』「金を稼ぐこと」を絶対善とする実利主義思想を揶揄した作品。清らかな恋愛や情熱は、金と結びつかなければ「身の堕落」と看做される。 もろもろの行為はかくのごとく形而下…

2021.05.01-06日記

2021.05.01青蓮院門跡の楠を見た。親鸞が植えたものと書いてあるが眉唾物。服を作りに四条まで出かける。 2021.05.02行きつけの紅茶屋に寄り、お決まりの散歩道をゆく。南禅寺から禅林寺、若王子神社、安楽寺、法然院を経て慈照寺に至る。高度に洗練されたル…

日記2020.12.01

今日は紅葉を観に鹿ケ谷辺りを廻った。写真は法然院の境内。 南禅寺から鹿ケ谷通を上がる。途中冷泉通に入り哲学の道へ出た。安楽寺と法然院に寄る。静かで落ち着く。 今日の散歩は成功だった。すぅっと心が透通った気持ちがして、活力が湧いた。柄にもなく…

2020.11.26日記

どうも僕は旅行が嫌いらしい。帰心矢の如し。はやく京都へ帰ろう。 衣桁(いこう) 着物を掛ておく家具感情の飽満 満足していること

2020.11.14日記

心の晴れない日が続く。どうしようもない。 相伴(しょうばん) 正客の相手となり一緒に接待を受けることまんじりともせず 少しも眠らないさま棚卸し 人の欠点を言い立てること内証 表向きにせず、内々にしておくこと諒察 相手の事情を思いやること侍史(じし) …

2020.11.05日記

教会の敷地で遊ぶ子供たち。彼らの声を聴けるのは幸せだ。 あんじょう 具合よく、うまくと胸を突く びっくりする就中(なかんずく) 特に彳む(たたずむ)世故に長ける 世情によく通じているスレート 屋根材の1種義理一遍 世間体を飾るために形式的に物事をする…

アルベール・カミュ『転落(La chute)』1956

全編を通してクラマンスと名乗る男が聴き手に対し「告白」をする形。自身が「二重性」ある人生を歩んできたこと。自身が持つ傲慢さ、偽善性、孤独を独白する。 しかしそれは「懺悔」とは異なる。「だがあなただってそうでしょう」と言わんばかりの、云わば自…

2020.10.27日記

鴨川へ出かけた。川辺のベンチに寝ころび太陽の光を浴びながら3時間ほど読書した。北向きのじめっとしたアパートの1室にいるよりも余程気持ちが良い。 日が暮れてきたので喫茶店へと移動した。今や貴重な喫煙可能店。周りを見渡すと、みな煙草を呑んでいた。…

『家族の肖像(Gruppo di famiglia in un interno)』1974

ルキノ・ヴィスコンティ監督作。演劇のような高潔さ。音楽趣味の良さ。 モーツァルトを愛し、18世紀の「団欒画(conversation piece)」に囲まれて暮らす教授と60~70年代の若者の交流を描く。孤独に馴れてしまった教授は、騒々しい彼らと暮らしながら何を想う…

2020.10.16日記

コートの注文を済ませてきた。 黒のバルカラーベルテッド。仕上がり迄ひと月程待たねばならない。 仕立て屋さんは、僕が今日どのようなコートをオーダーする積りであるかを、初めの会話でピタリと当ててきた。これには全く感心させられた。普段の僕のファッ…

三島由紀夫『サド侯爵夫人』

第三幕の渾沌の前に読者の「道徳」が問われる。諸価値をそれぞれ代表する女6人が想描くサド侯爵"像"。どれも真実ではないのだ。 三島は本作品と『わが友ヒットラー』をお気に入りの戯曲に数えていた。 剣呑 危険を感じている様子 杜氏 酒の醸造工程を担う職…

三島由紀夫『太陽と鉄』1965-1968

1965年から1968年に渡って佐伯彰一らの文芸同人雑誌『批評』に連載された。晩年を生きる三島が「芸術と生活、文体と行動倫理との統一」を図るにあたり、その根底に置く観念が紹介されている重要な作品である。 その密度と、論理的飛躍が相俟って極めて難解だ…

三島由紀夫『女神』

1954年から雑誌で連載を始めた本作は、三島文学の中では初期から中期のものにあたる。女性美を追い求める男。彼は自分の娘を「理想の女性」にしようと情熱を注ぐ。理想と現実とが対比されながら話は進み、娘朝子は現実を乗越え「女神」となる。 斑鳩一をみて…

三島由紀夫『肉体の学校』1964

元男爵夫人の女性が、美しい顔とからだを持つゲイバーのバーテンに入れ込む話。本作を基にした、ブノワ・ジャコ(Benoît Jacquot)によるフランス映画もある。 話の構成力は流石の一流である。私は小説を読みながら要所要所で話の行きつく先を、つまり結末を予…