Mon Cœur Mis à Nu / 赤裸の心

「美」といふものは「藝術」と人間の靈魂の問題である

ミロス・フォアマン『アマデウス(Amadeus)』1984

特に、天才を排す—近代の標語

 

ヴィリエ・ド・リラダンに『二人の占師』という小篇がある。世に出たければ凡庸であれというマクシムを遺した皮肉な作品なのだが、『アマデウス』の鑑賞が、私にそれを思い出させた。畢竟天才の行き着く先はいつの時代も共同墓地である。

 

本作は癲狂院で死を待つアントニオ・サリエリの告白を通じてモーツァルトの半生を描く。皇帝ヨーゼフ二世の宮廷にモーツァルトが現れる。モーツァルトは人々に持て囃されるが、彼の「真価」に気付いたのは獨り、時の宮廷楽長(Court Composer)サリエリのみであった。彼はモーツァルトの音楽に感動しつつも、同時にその才を激しく妬み、神を詛った挙句にモーツァルトの排除を企図する。

 

サリエリが史実を外れてdisgracefulに描かれているのはこの通り。だが映画の公開によってそれまで人類の忘却の裡にあったサリエリの名と音楽は甦った。これもまた皮肉なことではないか。"Mediocrity is Everywhere, Mediocrity is Everywhere"。神父への告白を了へたサリエリが、不気味な笑みを浮かべながら吐き捨てるこの言葉は、人類社会に存在する数少ない真理である。

 

次は『ショパン 愛と哀しみの旋律』2002を観よう(酷い作品名だ)。音楽家の伝記映画は見応えがあって可い。

 

comprehensible 理解できる
elevated 高尚な
play on 感情を刺激する
still on 良好な関係である
cometh the hour, cometh the man. 
prerogative 特権、権利
腹蔵ない(ふくぞう) 心中にふくむところのない
軽羅(けいら) 薄い絹織物
汨羅(べきら)の水に身を投じる 入水自殺を図ること
牢晴(ろうせい) 穏かに晴れること
dead giveaway 決定的証拠
servile 卑屈な
mole ほくろ
trade secret 企業秘密
tossing and turning 寝返りを打つ、転じて寝付けない
gamine おてんば娘
concubine 側室
resuscitation(=resurrection) 蘇生
somerset house サマセットハウス、倫敦の戸籍本署が置かれていた建物
preposterous ばかげた
partial to を特に好む
radiant(=dazzling, glaring) 耀く
just to be on the safe side 念のために
watch the birdie はいチーズ
travesty 滑稽な, 紛いもの
荷が勝つ 責任や負担が過重である
泰斗(たいと) ある分野で最も高く評価される人の喩え
むくつけし 気味が悪い、恐ろしい
日長し(けながし)
たゆたえども沈まず パリの標語。シテ島を舟に見立てて設定されたとか。不撓不屈、七転八起_
拝絹(はいけん) 絹を用いたショール・ラペルのこと。tail coatなどの装飾。
一定(いちじょう) かならず、きっと
equestrian 乗馬の
turret 櫓、塔
雅契(がけい) 友情、交流
staggering figure 驚異的数字

mortuary 霊安室
funeral parlour 霊安室(死体安置所)
shroud 経帷子
dainty 優美な
fiddle 民謡演奏に使われるヴァイオリン
all thumbs 不器用な
reiterate 何度も繰り返し言う
dough パン生地