Mon Cœur Mis à Nu / 赤裸の心

「美」といふものは「藝術」と人間の靈魂の問題である

2021-08-01から1ヶ月間の記事一覧

ポオ『天邪鬼(The imp of the perverse)』1845 

ここに、最も重要なことがある。己惚れた世紀に生れ、他のあらゆる国民に較べて最も己惚れた国民の兒であるこの作家が、人間本然の邪悪を明瞭に見、平然と確言した、といふことを我々は注意したい。彼は言ふ、人間の裡には、近代哲学が考量に入れたがらぬ神…

ポオ『モルグ街の殺人』1841, 『盗まれた手紙』1845

帰納法の大家、霊妙怪異なエドガー・アラン・ポオ。ポオの美学は感覚的なものではなく、精確無比、理知的計算の上に成り立つ。ポール・ヴァレリーはポオの作品を指して、あの「数学的阿片を決して忘れることはできぬ」と云った。 ポオについて、美の評論家デ…

川端康成『雪国』1937

高校生の時分以来に再読。 どことなく退廃の香り。人の世の虚しさ(作中「徒労」という言葉に集約されている)に充ちていて、そこに純粋な美しさを見出す日本人の性がよく顕れた作品。

20210810日記

2021年の夏が私に残すものは 蹌踉(そうろう) よろめくこと易わる 変わるaccomplished 嗜みを身に付けたvexed いらいらして聟(むこ) 婿当代浮薄見晴るかす はるかに見渡すこと凭れる(もたれる)星辰(せいしん) 星々のこと悉皆(しっかい) 残らずすべてhitherto …

溝口健二『雨月物語』1953

溝口健二監督作。京マチ子、田中絹代らが出演。ヴェネツィアでの銀獅子をはじめとして国際的な評価が高い。ゴダールやユスターシュなどヌーヴェル・バーグの系譜に與えた影響も大きい。 銀獅子も宜なるかな。この作品ほどに表現力に富み、芸術性の高い映画と…

メルヴィル『サムライ(Le Samouraï)』1967

ジャン・ピエール・メルヴィル監督作。アラン・ドロンが殺し屋を演じる。これほど言葉少ななフランス映画も珍しい。 三島由紀夫の評価を引用。 「〈サムライ〉は、沈黙と直感と行為とを扱った、非フランス的な作品で、言葉は何ら重要でなく、情感は久々の濡…

リラダン『トリビュラ・ボノメ(Tribulat Bonhomet)』1887

信仰の思想を凌駕せるは猶思想の本能を凌駕せるがごとし -スウェーデンボルグ 東京創元社より斎藤磯雄氏の翻譯。トリュビラ・ボノメ博士。その心は実用主義、折衷主義、進歩主義で芸術家嫌悪。「白鳥を殺す輩」。そうしたボノメが、不滅の霊魂に関心を寄せる…

パトリス・ルコント『イヴォンヌの香り(Le Parfum d'Yvonne)』1994

パトリス・ルコント(Patrice Leconte)監督作。ルコントの脚フェチ。凡そ無気力で厭世的な男の理想を詰込んだような作品。有閑階級の男(イポリット・ジラルド,Hippolyte Girardot)が避暑地で女と出逢う。美しい女性を思うようにすることなどできない。 なんて…

セドリック・ヒメネス『ナチス第三の男(The man with the iron heart)』2017

ローラン・ビネ(Laurent Binet)原作の小説『HHhH』を映像化したもので、フランス、イギリス、ベルギーの合作。ナチスの親衛隊ラインハルト・ハイドリヒの伝記であると同時に、チェコのレジスタンスを描いている。全編英語。

ジェラール・ピレス『タクシー(Taxi)』1998

『レオン』リュック・ベッソンが脚本を担当しているカー・アクション映画。 脇役の俳優、どこかでみたことがあると思い調べた。フィリップ・ドゥ・ジャネラン(Philippe du Janerand)という名らしい。『コーラス』2004に脇役として出演しているのを確認した。…

ブロワ『リラダンの復活(La Résurrection de Villiers de l'Isle-Adam)』1906

リラダンは『イシス』から『アクセル』に至るまで、この無限に美はしく、天を支へる柱の如く強く、智天使らの上に君臨する者の如く全智にして、神そのものともなるべき女性、即ち、永遠の女性に対する憧憬の夢を犇と心に抱いてゐた 森開社による上梓。ヴィリ…