Mon Cœur Mis à Nu / 赤裸の心

「美」といふものは「藝術」と人間の靈魂の問題である

2020-09-01から1ヶ月間の記事一覧

20200930日記

これほどに何かを楽しみに想うことがあっただろうか。少なくともここ数年来は無かった。降誕祭の日を、あの神秘的な愉しみを待望む気持ちとよく似ている。

三島由紀夫『肉体の学校』1964

元男爵夫人の女性が、美しい顔とからだを持つゲイバーのバーテンに入れ込む話。本作を基にした、ブノワ・ジャコ(Benoît Jacquot)によるフランス映画もある。 話の構成力は流石の一流である。私は小説を読みながら要所要所で話の行きつく先を、つまり結末を予…

グノー「トゥーレの王(Il était un roi de Thulé)」『ファウスト(Faust)』1859

www.youtube.com 『ファウスト』第3幕第6場で歌われる童謡風の歌曲。 Il était un roi de Thuléトゥーレの王は、Qui, jusqu'à la tombe fidèle,死ぬ時まで誠実な方で、Eut(had), en souvenir de sa belle,妃の形見として、Une coupe en or ciselé(vessel)! …

20200927日記

女優竹内結子が亡くなったという。映画『いま、会いにゆきます』で初めて彼女をみて、なんて美しい人なのだろうと思った。私は当時7歳。初恋の人によく似ていたからでもあるのだが、それ以来「好きな女性のタイプは」との質問には「竹内結子のような女性」と…

ルイ・マル『恋人たち(Les amants)』1958

ルイ・マル(Louis Malle)の2作目。『死刑台のエレベーター』に引続き、ジャンヌ・モロー(Jeanne Moreau)を起用。全体を通して使用されるブラームスの弦楽六重奏曲第1番第2楽章の調べに心を掴まれる。 AVかと思うほどのラブシーンが面白い。むつかしい女性の…

ルイ・マル『五月のミル(Milou en Mai)』1990

ルイ・マル(Louis Malle)監督作。音楽をジャズヴァイオリニストのステファン・グラッペリ(Stéphane Grappelli)が担当。若きフランソワ・ベルレアン(François Berléand)も出演している。 1968年5月革命の最中。南仏のブルジョワ一族の、遺産相続の話。5月革…

ルイ・マル『ルシアンの青春(Lacombe Lucien)』1974

ルイ・マル(Louis Malle)監督作。Occupied Franceでの少年の物語。マルが戦争を映画にする時、その舞台は戦場や収容所ではない。そこに彼の創造性があると思う。ルシアン・ラコームという少年は、剛健で野性的。或いは牧歌的で純粋。無知。レジスタンスへの…

ヴァルダ『ジャック・ドゥミの少年期(Jacquot de Nantes)』1991

妻アニエス・ヴァルダ(Agnès Varda)による、ドゥミ少年期の記録。作中に溢れる音楽は、亡き夫へのオマージュだろうか。ドゥミはルイ・マルのような恵まれた環境に生まれた訳ではない。父は息子が芸術の道に進むのを許さなかった(まぁ当然だ)。映画への気持ち…

ヴァルダ『5時から7時までのクレオ(Cléo de 5 à 7)』1962

「ヌーヴェルヴァーグの祖母」アニエス・ヴァルダ(Agnès Varda)監督作。彼女はジャック・ドゥミの妻。音楽をミシェル・ルグラン(Michel Legrand)が担当。

ドゥミ『ローラ(Lola)』1961

京都駅から南に歩き東寺の近く。京都みなみ会館という小さな映画館がある。そこで「ミシェル・ルグランとヌーヴェルヴァーグの監督たち」なる特集が組まれていた。 観たのは『ローラ(Lola)』。「ヌーヴェルヴァーグの真珠」に喩えられる名匠ジャック・ドゥミ…

乗馬検定5級(全乗振)の筆記試験

全国乗馬倶楽部振興協会による技能認定試験の1つ「乗馬検定」。5級は入門であって、3日程度、5~10鞍の騎乗で取得できる。審査は緩い(インストラクター談)。実技面では乗下馬。停止と常歩。そして軽速歩。筆記は馬の性質、馬の手入れ、馬体の名称について問わ…

谷崎潤一郎『細雪』1948

静的で優雅な関西の時の流れ。破滅的な戦争に到る前の最期の静寂。絵巻物をみているかのような物語文学。作者の主観は一切登場しない。『源氏物語』を彷彿とさせる。谷崎自身は『源氏物語』と比較されることを何よりも厭うたようだが。 だが『細雪』と『源氏…

ゴダール『女は女である(Une femme est une femme)』1961

ジャン=リュック・ゴダール(Jean-Luc Godard)監督作。ベルリン国際映画祭の審査員特別賞を受賞。雰囲気が良い。カラーでみる60年代のパリが最高に洒落ている。ロケ撮影はヌーヴェルヴァーグの真骨頂。

カラックス『ポンヌフの恋人(Les Amants du Pont-Neuf)』1991

レオス・カラックス(Leos Carax)監督作。シテ島とパリの両岸を結ぶ橋「ポンヌフ(Pont neuf: 新しい橋の意)」。ここを舞台にしたホームレスの男と失明しかけの女画家の話。ゾルターン・コダーイ(Kodály Zoltán) の無伴奏チェロソナタが使われている。

フィトゥシ『間奏曲はパリで(La Ritournelle)』2014

マルク・フィトゥシ(Marc Fitoussi)監督。コメディタッチの面白さはあるけれど、特別語ることはないかな。最近の映画は老人が人生を見つめなおす系の話が多いなと思う。

ルイ・マル『死刑台のエレベーター(Ascenseur pour l'échafaud)』1958

ルイ・マルの実質的なデビュー作。マイルス・デイヴィスの即興ジャズ、手持ちカメラを主体とした撮影技法。ルイ・マルの演出力に舌を巻く。 本作で主役を演じるのは『鬼火(Le Feu Follet)』のモーリス・ルイ(Maurice Ronet)、『恋人たち(Les amants)』のジ…

ハーマン『縞模様のパジャマの少年(The Boy in the Striped Pyjamas)』2008

英米合作のホロコースト映画。マーク・ハーマン監督。 Too English。これに尽きる。顔も、表情も。仕草も。彼らはとても綺麗なクイーンズ・イングリッシュを話す。例外的に主人公の少年の顔はとてもゲルマン的だった。しかし演技が酷い、監督の責任だ。カメ…

フランス語でアヴェ・マリア(Je vous salue, Marie)

Je vous salue, Marie chanté a cappella ノートルダム大聖堂が燃えた日、シテ島を望む河岸に人々が集まって、アヴェ・マリアを唱えていた。その時歌われた旋律がこれであった。 Je vous salue, Marie, comblée de grâce聖寵満ちみてるマリア Le Seigneur es…

20200901日記

教会の鐘の音にノスタルジアを感じる。別にそれを聴きながら育ってきた訳でもないのに。ノスタルジアという感情は、自己評価の向上や心理的脅威への対抗手段として役立つという説もあるが、全くの間違いだと思う。戻らない過去への郷愁、アナクロニズムの感…