Mon Cœur Mis à Nu / 赤裸の心

「美」といふものは「藝術」と人間の靈魂の問題である

2022-04-01から1ヶ月間の記事一覧

ワーグナー『交響曲ハ長調』1832

www.youtube.com ワーグナーが唯一完成させた交響曲。私はこの曲を面白いと思う。溌剌としていて色彩豊か。ドラマティック。深みがないとも云える。だがもっと演奏機会があって良いと思う。 ランキング参加中音楽

ドヴォルザーク『オセロ(Othello)』op.93 1892

www.youtube.com 『オセロ(Othello)』は、ドヴォルザークの演奏会用序曲『自然と人生と愛』のうち、「愛」に相当する楽曲である。 愛を代表しているからには、甘美でのんびりとした調べを想像するものであるが、そうではない。一種の憂いを帯びた、暗く情熱…

20220422日記

晴れ。暑い。伊勢丹で靴を買う。 絲の如く 麻の如く尠くとも(すくなくとも)holocaust 燔祭(はんさい) 猶太人虐殺の意で使われるが、原義は生贄を火焙りにして神に捧げる行事のこと。いや、同義か。ゆくりなく 思いがけなく、突然に心緒(しんしょ) 心の中で思…

アイヴォリー『眺めのいい部屋(A room with a view)』1986

『日の名残り(The remains of the day)』のジェームズ・アイヴォリー(James Ivory)監督作。原作はエドワード・フォースターの同名小説。 O mio babbino caro! プッチーニ、ベートーヴェン、シューベルト、モーツァルトが使われている。見事な映像美、アイヴ…

坂東玉三郎『外科室』1991

五代目 坂東玉三郎氏の監督。原作は泉鏡花の同名小説。 ledilettante.hatenablog.com こんなに美くしいことがあるか。90年代に於て比類に絶する美くしき映画。美を表現するに言葉は多く要らぬと、納得せしめらる。伯爵夫人の高峰を見初めし時、閉じられた雙…

泉鏡花『化銀杏』1896

鏡花の短篇。「銀杏」は「銀杏返し」のことを言っている。解説に「自立した女ないし女の自立に対する共感的な関心」が本作にはあると述べられているが、この見方には賛同しかねる。強調されているのは女の不貞と、自己中心主義である。婚姻を軽んじ自立を図…

サルヴァトーレ・サンペリ『エルネスト(Ernesto)』1979

サルヴァトーレ・サンペリ(Salvatore Samperi)監督作。同性愛が主題の映画。年端のいかぬ少年の、己の性的指向を判断しかねる話か。少年の苦悩を映している訳ではなく、寧ろ少年は周囲の人間を惑わす悪魔。話に深遠さはなく、映像的な美しさもない。主人公が…

泉鏡花『海城発電』1896

短篇小説。鏡花が描く非日常の世界に、読者は数頁のうちに取込まれる。 軍人が捕虜となった後帰還した赤十字の看護員を尋問する。軍人は、支那兵相手に立派に己が職務を全うしてきた看護員を、非愛国的、国家の観念が欠如していると責めるが、看護員は意にも…

泉鏡花『外科室』1895

その時の二人がさま、あたかも二人の身辺には、天なく、知なく、社会なく、全く人なきが如くなりし。 短篇小説。一度目をかわしただけで恋に落ちた男と女が、幾年の後、外科医師と患者の伯爵夫人として再会し、愛に殉ずる。 文庫にして18頁しかない。この短…

レイフ・ヴォーン・ウィリアムズについて

レイフ・ヴォーン・ウィリアムズ(Ralph Vaughan Williams)。メリット勲章叙勲者。国民主義的な作風を特徴とする英国の作曲家である。日本での演奏機会は少ないが、生涯に9つの交響曲を遺した大作曲家であり、祖国イングランドではBBC promsで取上げられる程…

20220410日記_齋藤先生の墓

小石川にある伝通院を訪ねた。かの地に眠る齋藤磯雄先生に手を合わせるため。

ゴーチエ『金髪をたずねて(La Toison d'or)』1839

ああ!気の毒な青年よ。きみの蔵書を火に投じ、絵をさき、塑像をくだき、ラファエルやホメロスやフィディアスを忘れてしまいたまえ。おろかしいきみの情熱はどういう効果をもたらすのだ。謙虚な心をもって、きみの愛するものを愛したまえ。 ゴーチエの短篇小…

ゴーチエ『詛いの星をいただく騎士(Le Chevalier double)』1840

パリの文芸雑誌、Musée des famillesに発表された短篇小説。題名は直訳すれば「二重の騎士」なのであるが、ストーリーに因んで「詛いの星を戴く」としてある。 ドッペルゲンガーを主題とする幻想的小説。中世ノルウェーの伯爵家に子、オルフが生まれる。占星…

シュウォッブ『少年十字軍(La Croisade des Enfants)』1896

世紀末から20世紀への過渡期に於て輝く「小さな奇蹟の書」。詩的な短篇小説である。「詩的な」と云うのはつまり、①凝ったストーリーを持たず、②無駄を徹底的に省いた構成で、③選び抜かれた美くしい言葉が用いられていること。 ヴァンドームとケルンからそれ…

アラン・レネ『二十四時間の情事(Hiroshima mon amour)』1959

ヌーヴェル・バーグの「左岸派」、アラン・レネ監督作。フランス語を話す岡田英次が恰好良い。 私の愛する映画、三本の指に入れてもよい。1959年にして、英国や米国のそれと異なる、「フランス映画」の確立を知らしめる先駆的作品。フランス映画、それは即ち…