Mon Cœur Mis à Nu / 赤裸の心

「美」といふものは「藝術」と人間の靈魂の問題である

2021-06-01から1ヶ月間の記事一覧

シェカール・カプール『エリザベス: ゴールデン・エイジ(Elizabeth: The Golden Age)』2007

シェカール・カプール(Shekhar Kapur)監督作。エリザベス1世の半生を描く。メアリー・スチュアートの処刑、アルマダの海戦。ケイト・ブランシェットの飛躍的に向上した演技力も見物。孤独な女の羨望、不安、苦悩。

シェカール・カプール『エリザベス(Elizabeth)』1998

シェーカル・カプール(Shekhar Kapur)監督作。エリザベス1世の前半生、ノーフォーク公の処刑までを描く。カトリックを悪趣味に描いていて嫌なイギリス映画。我らがDr.ワトソン(エドワード・ハードウィック)が、アランデル伯役で出演していて愕いた。良い役で…

三島由紀夫『文章読本』1959

三島が『鏡子の家』を書いている時期に綴られた文章論。世間の普通読者(lecteurs)を精読者(liseurs)へと導くことを目的とする。 昔の人が小説を味わうと云えば、それは文章を味わうことであった。しかし十分に舌の訓練がないことには味わうこと能わぬ味があ…

ドールヴィイ『罪の中の幸福(Le bonheur dans le crime)』1871

『魔性の女たち』を構成する短篇の1つ。観察者たるドクターが、パリの植物園(Jardin des Plantes)で遭遇した美しい対の男女の罪を、同行者に語って聞かせる。美が罪に勝利するという一例。 ミザントロープ(misanthrope) 世間の人と付き合うのを嫌う人アルセ…

ドールヴィイ『ホイスト・ゲームのカードの裏側(Le dessous de cartes d'une partie de whist)』1850

『魔性の女たち(Les Diaboliques)』1874を構成する、会話文体の短篇。語り手がサロンで物語を語ってみせ、聴衆に息詰まる興奮を巻き起こさせる。明らかになる事実は限定的である、何故なら語り手による事件の「主観的な」観察しか、物語に反映されないから。…

フローベール『聖アントワーヌの誘惑(La tentation de saint Antoine)』1874

ブルーゲルの絵画「聖アントニウスの誘惑」に着想を得たフローベールは、30年に渡り、本作品の執筆に取組んだ。 悪魔の誘惑に曝され、その信仰心を試される聖アントニウスを描く。紀元3世紀頃の話であるから、彼の他作品、つまり俗悪な現代社会を舞台とする…

ユイスマンス『彼方(Là-bas)』1891

現代世界に厭いているデュルタルが、ジル・ド・レー男爵の研究を通して、超自然的世界をみる。彼は中世キリスト教の世界を理想視し渇望するも、信仰を持つには至らない。ジル・ド・レーの一代記として読んでいて面白いが、物語としてはどうか。シャントルー…

ラ・ファイエット夫人『クレーヴの奥方(La Princesse de Clèves)』1678

描写が殆ど恋愛心理の明晰な分析に集中しており、心理小説の祖と云われている。ラ・ファイエット夫人が生んだ、新たな近代心理小説の伝統は、ラクロ『危険な関係』、コンスタン『アドルフ』、ラディゲ『ドルジュル伯の舞踏会』等に引継がれた。また、『クレ…