Mon Cœur Mis à Nu / 赤裸の心

「美」といふものは「藝術」と人間の靈魂の問題である

2020-10-01から1ヶ月間の記事一覧

20201029日記

植物園へ行った。バラが綺麗だった。

アンドレ・ジッド『田園交響楽(La symphonie pastorale)』1919

動物的で虱の湧く盲目の娘(ジェルトリュードと名付けられる)を、慈悲の心から引取った牧師。娘は牧師の下で教育を授かり、美しく心豊かな女へと変身した。牧師は妻と家族を持つ身でありながら、無意識的に彼女を愛するようになる。娘は娘で、意識的に牧師を…

20201027日記

鴨川へ出かけた。川辺のベンチに寝ころび太陽の光を浴びながら3時間ほど読書した。北向きのじめっとしたアパートの1室にいるよりも余程気持ちが良い。 日が暮れてきたので喫茶店へと移動した。今や貴重な喫煙可能店。周りを見渡すと、みな煙草を呑んでいた。…

アルベール・カミュ『異邦人(L'Étranger)』1942

社会の倫理や道徳から逸脱した男が、「異邦人」のようにして扱われ、社会から抹消される。社会的通念に対する「諦め」。「怒り」ではないのだ。繰り返される「そんなものに何の意味があろう」という言葉が印象的である。 「それではあなたは何の希望ももたず…

シューマン『交響曲第4番ニ短調op.120』1841

www.youtube.com 1841年のクララの誕生日。ロベルトが妻に捧げた交響曲。力強く舞踏的な第3楽章が好み。

ルルーシュ『男と女(un homme et une femme)』1966

「フランス映画らしさ」とは。 クロード・ルルーシュ(Claude Lelouch)監督作。カイネ・デュ・シネマ誌から冷遇を受け、長いこと日の目をみなかったルルーシュが、その実力、美学を世界に知らしめた作品。1966年のカンヌ国際映画祭でパルム・ドール。 映像の…

ブニュエル『昼顔(Belle de jour)』1967

『アンダルシアの犬』で有名なルイス・ブニュエル(Luis Buñuel)監督作。彼らしく、どこか浮世離れした背徳的仕上がりとなっている。1967年金獅子賞。 カトリーヌ・ドブーヌ(Catherine Deneuve)が、マゾヒスティックな欲求を持つ貞淑な妻を演じる。彼女は夫を…

ヴィスコンティ『家族の肖像(Gruppo di famiglia in un interno)』1974

ルキノ・ヴィスコンティ監督作。演劇のような高潔さ。音楽趣味の良さ。モーツァルトを愛し、18世紀の「団欒画(conversation piece)」に囲まれて暮らす教授と60~70年代の若者の交流を描く。孤独に馴れてしまった教授は、騒々しい彼らと暮らしながら何を想うの…

ドゥミ『天使の入江(La baie des anges)』1963

ジャック・ドゥミ(Jacques Demy)監督の3作目。ジャンヌ・モロー(Jeanne Moreau)演じるギャンブル中毒の女が、堅物の銀行員の男をギャンブルの世界へと引きずり込む話。ファム・ファタールを演じるモローが美しい。 オープニングでは、ミシェル・ルグラン(Mic…

20201016日記

コートの注文を済ませた。黒のバルカラーベルテッド。仕上がり迄ひと月程待たねばならない。仕立て屋は、僕が今日どのようなコートをオーダーする積りであるかを、初めの会話でピタリと当ててきた。これには全く感心させられた。普段の僕のファッションや、…

ドゥミ『シェルブールの雨傘(Les Parapluies de Cherbourg)』1964

ジャック・ドゥミ(Jacques demy)監督のミュージカル映画。音楽を担当したのはミシェル・ルグラン(Michel Legrand)。ヌーヴェルバーグが生んだ名コンビ。カンヌ国際映画祭でパルム・ドールを受賞。 全編音楽の完全なミュージカルでまるでオペラのよう。ストー…

ブレスト『セント・オブ・ウーマン(Scent of a woman)』1992

www.youtube.com ”odor di femina”か、小洒落た題名だと思う。マーティン・ブレスト監督。「ザ・アメリカ映画」という感じ。芸術点は低いが、フィーリング・グッドな作品。有名なタンゴシーンで流れるのは"Por una Cabeza"という曲。『シンドラーのリスト(19…

三島由紀夫『サド侯爵夫人』

第三幕の渾沌の前に読者の「道徳」が問われる。諸価値をそれぞれ代表する女6人が想描くサド侯爵"像"。どれも真実ではないのだ。 三島は本作品と『わが友ヒットラー』をお気に入りの戯曲に数えていた。 剣呑 危険を感じている様子 杜氏 酒の醸造工程を担う職…

行定勲『春の雪』2005

「私がもし急にいなくなってしまったとしたら、清様、どうなさる?」 行定勲監督。原作は勿論三島由紀夫。健闘したといって差し支えない仕上がりだと思う。 次作『奔馬』へと繋がらぬことを前提としているからであろうか。飯沼は出て来ない。しかしそうである…

三島由紀夫『夜会服』1967

嫁姑物語。貴族趣味的な小説。1966年から1967年にかけて女性雑誌『マドモアゼル』上に連載。1966年といえば、三島は既に『豊饒の海』の執筆に取り掛かっている頃だ。そんな時期にこれほどに軽快な娯楽小説を書く三島は、職業作家だったのだと思う。

ウェーバー『ピアノソナタ第4番ホ短調』

www.youtube.com カール・マリア・フォン・ウェーバー(Carl Maria Friedrich Ernst von Weber)は『魔弾の射手』しか知らない私に、フランス語の先生がおすすめしてくれた。貸してもらったのはディノ・チアーニ(Dino Ciani)の録音。ウェーバーが最後に遺した4…

アントン・ウェーベルン『弦楽四重奏のための緩徐楽章』1905

www.youtube.com シェーンベルクと同列に語られ、「前衛」のイメージが強いアントン・フォン・ウェーベルン(Anton von Webern)。しかしながらこの『緩徐楽章』は、彼が十二音技法を用ゐる前の作品であり、ブラームスを思はせる森厳甘美なメロディーが特徴。…

20201007日記

物事を分類して話すということ。 目的・手段・結果の分類。短期・中期・長期的観点の分類。 「三島由紀夫の思想と行動」『文芸春秋』1990年12月 pp.306-321 評論家吉本隆明、西部邁の対談。大した事は話していない。・右翼的思想と左翼的思想。前者は行動、…

石橋湛山について

石橋湛山について戦前はジャーナリスト。戦後政治家に転身。国民からは鳩山や岸と並んで「反吉田派」と受け止められた。首相を務める。 石橋の「対米自主論」について米国に依存することを盲目的に受容れる日本人に対しての批判的視座。個人主義や自由主義を…

20201004日記

三島の定義に従うなら、僕は純然たる「文人」になりたい。すなわち「花と散る」人種ではなく、「不朽の花」を育てる人種だ。僕は昔から桜が嫌いだった。いつ散ってしまうか分からぬ儚さに心を乱されることが嫌いだった。僕が求めるのは永遠、ギリシアやロー…

三島由紀夫「自衛隊二分論」1969

三島がいうところの「現実主義的情勢論」しか論じられない私にとってみれば、「自主独立の精神」など眉唾物であるが。 主張の概略日本の「自主防衛論」は「情勢論」。全く現実的な見地でいえば、アメリカの強大な軍備に守られてこそ、ようやく日本の自主防衛…

三島由紀夫『私の遍歴時代』1963

三島自身の17歳から26歳までの古典主義への熱情や、人との出会い、作家としての歩みを38歳の時点で振り返る。1963年の1月から10月にかけて『東京新聞』上で発表された。 戦中戦後の作者の心情は、大切に嚙み砕いてゆかねばならない。殊に終戦のことは豊饒の…

三島由紀夫『太陽と鉄』1968

1965年から1968年に渡って佐伯彰一らの文芸同人雑誌『批評』に連載された。晩年を生きる三島が「芸術と生活、文体と行動倫理との統一」を図るにあたり、その根底に置く観念が紹介されている重要な作品である。 その密度と、論理的飛躍が相俟って極めて難解だ…

20201002日記

寂しい気持のまま家に帰りたくなかった僕はバーに寄った。夜想曲の20番が流れている。何もこんな日にショパンじゃなくてもよい。昔僕が得意としていた曲だ。今ならより上手に演奏できるだろう。

三島由紀夫『女神』1955

1954年から雑誌で連載を始めた本作は、三島文学の中では初期から中期のものにあたる。女性美を追い求める男。彼は自分の娘を「理想の女性」にしようと情熱を注ぐ。理想と現実とが対比されながら話は進み、娘朝子は現実を乗越え「女神」となる。 斑鳩一をみて…