Mon Cœur Mis à Nu / 赤裸の心

「美」といふものは「藝術」と人間の靈魂の問題である

Music

『ヴィディ・アクアム(Vidi aquam)』カトリック聖歌集502番_羅和対訳

www.youtube.com Ego sum pastor bonus, et cognosco oves meas, et cognoscunt me meae.我は善き牧者にして、我がものを知り、我がものは我を知る(ヨハネ傳10:14、ここに云ふ牧者(羊飼ひ)はイエズス・キリストを指す) ヴィディ・アクアムは復活節(East…

ワーグナー『トリスタンとイゾルデ(Tristan und Isolde)』1865_愛と死に就いての覚書

www.youtube.com 新国立劇場の最上席での観劇。本歌劇の半音階的な重音進行や不協和音の構成は、後期ドイツロマン派を予感させる。内面的響きが特徴である。 前奏曲、「憧れの動機」に始まり、そこからとめどなく流れる美の奔流を受けて、私は忽ち夢うつつ。…

カトリック聖歌集105番『来ませ救ひ主』

Lentも第6週を迎へてゐるが、本日紹介するのはAdventに歌はれるホ短調の聖歌。ヨハン・マッテゾンはこの調に就いて沈思的、悲しみ、痛みと述べてゐるが、この聖歌には相応しい調である。 この聖歌に歌はれてゐるのは、人類の大いなる罪への悔恨と、キリスト…

リヒャルト・シュトラウス『ヴァイオリンソナタ 変ホ長調 』1888

www.youtube.com リヒャルト・シュトラウスが遺した唯一のヴィオロンソナタ。3月になると思ひ出す。或る人が好んで弾いてゐたのだ。彼女はヴィオロン奏者であつた。彼女は深碧色のドレスでステージに立ち、いつも不機嫌さうに演奏するのだ。私の前でバッハを…

『アスペルジェスメ(Asperges me)』カトリック聖歌集501_羅和対訳

www.youtube.com 主日、神田教会でミサに與る。本日が七旬節なので暫くグロリアは聴けなくなる。 さて「アスペルジェス・メ(Asperges me)」とは、ミサ前の灌水式で歌はれる交唱である。今日の「新しいミサ」を執り行ふ教会で聴く事はないだらう。といふのは…

救い主を育てた母/アルマ・レデンプトリス・マーテル(Alma Redemptoris Mater)

www.youtube.com アルマ・レデンプトリス・マーテルはカトリック教会の聖母賛歌。低劣卑陋なる日本の教会では忘れ去られてゐるが、フランスに於ては彌撒の終りによく歌はれてゐた。先唱の"ALMA"に、会衆の歌が続く。 おゝ巴里よ。斯の地のオルグの高揚が既に…

シューマン「美しい五月に(Im wunderschönen Monat Mai)」『詩人の恋(Dichterliebe)』1840

www.youtube.com Im wunderschönen Monat Mai,五月てふ麗はしき月にAls alle Knospen sprangen,冬籠りの蕾咲き出づるDa ist in meinem Herzenそして我が胸裡にDie Liebe aufgegangen.ゆくりなく愛は灯りぬ Im wunderschönen Monat Mai,五月てふ麗はしき月にA…

『ナチス・ドイツに於る音楽(Music in Nazi Germany)』DW Documentary

www.youtube.com "Music in Nazi Germany"なるDeutsche Welleのドキュメンタリー。「おすすめ動画」として出て来たので視聴。フルトヴェングラー、ワーグナー、ユダヤ人、バイロイト、アウシュヴィッツ=ビルケナウ。話を敷衍した割に、Music is immortalと云…

フォーレ「メリザンドの歌(Chanson de Mélisande)」『ペレアスとメリザンド(Pelléas et Mélisande)』1901

www.youtube.com モーリス・メーテルランクの戯曲『ペレアスとメリザンド』、英訳版の劇付随音楽。第三幕第二場、塔の窓際に坐すメリザンドが、光の束のやうな美くしい金色の髪を、くしけずり乍ら歌ふ「王様の三人の盲の娘」。これはロレイン・ハント・リー…

ワーグナー『パルジファル(Parsifal)』高木卓譯

偕に悩みてさとりゆく 純真無垢(Parsi)のおろかもの(Fal)かかる男を待てよかし 我の選べる者なれば 『パルジファル』はワーグナーの死の前年、1882年に完成しバイロイトで初演された。 作曲家は『パルジファル』を舞台神聖祝典劇(bühnenweihfestspiel)と銘し…

ワーグナー『ロオエングリン(Lohengrin)』高木卓譯

1845年、『タンホイザー』で疲労困憊したワーグナーは、ボヘミアのマリエンバードに保養していた。毎朝ヴォルフラム・フォン・エッシェンバッハの叙事詩を脇に抱えて、森へ出かけたという。 ワーグナーははじめ、ヴォルフラムの手が入った『ロオエングリン』…

『Louange à Dieu, Très-Haut Seigneur(その聖所にて神をほめたたへよ)』

www.youtube.com 動画はノートルダム大聖堂のミサ。その入祭唱で歌はれてゐるのがこの聖歌である。歌詞は詩篇第150篇のやうな神を賛美する内容だが、正確な出典は不明。 Louange à Dieu, Très-Haut Seigneur,その聖所にて神をほめたたへよ pour la beauté de…

ワーグナー『トリスタンとイゾルデ(Tristan und Isolde)』高木卓訳

昧爽の光が窓帷の隙間から漏れている。朝まで一文にも成らぬ事に精を出して愚かな事だと思うが、これが私の生である。 先刻まで『トリスタンとイゾルデ』のリブレットを読んでいた。岩波上梓の高木卓譯。この三幕からなる楽劇の台本は、作曲者自らが「トリス…

『Out of the deep(De Profundis)』詩篇 第130篇

されど人の子の来る時地上に信仰を見んや ルカ傳18:8 この頃希望を見出せずに居る。 www.youtube.com アングリカンで歌われるデ・プロフンディス。The Choir of King's College, Cambridgeの録音。Reverentな響き。 ledilettante.hatenablog.com 1. Out of t…

リヒャルト・シュトラウス『サロメ(Salome)』1905

新しき背広を著て、新国立劇場まで出かけ鑑賞。一幕のオペラたる本作は、オスカー・ワイルドの戯曲『サロメ』を台本に、リヒャルト・シュトラウスが曲をつけたもの。 ledilettante.hatenablog.com ヨハネの首を摑み始まるサロメの長い告白。 本日のオペラの…

チャコフスキー「スペインの踊り」『白鳥の湖』より

www.youtube.com 第三幕の音楽。スペインではあろうけれど、寒村だろうか。 ランキング参加中音楽

プーランク『カルメル会修道女の対話(Dialogues des carmélites)』1957  

本ブログのテーマは副題として書いてある通り「美というものは、芸術と人間の霊魂の問題である」、即ち「芸術と信仰」である。だがこの頃は宗教色が強すぎると思っている。復活祭で一区切りをつけたい。 さて本日、四旬節第5主日の福音朗読箇所は「ラザロの…

ワーグナー「ヴェーヌス讃歌(Dir, Göttin der Liebe, soll mein Lied ertönen!)」『タンホイザー』第二幕より 対訳

www.youtube.com タンホイザーは童貞達の面前で淫蕩な歌をうたい城を追い出された。 Dir, Göttin der Liebe, soll mein Lied ertönen!愛なる女神!汝に捧げん我が歌をGesungen laut sei jetzt dein Preis von mir!今高らかに汝を称へさせ給へDein süsser Rei…

ワーグナー『タンホイザー(Tannhäuser)』1845

誉むべきかな、稀世の大芸術家リヒャルト・ワーグナー。 私はオペラのはじまりと偕に倏忽として地上から攫われた。斯の至高の音楽が続く限り、舞台上の幻想こそが実在で、それ以外の全ては非存在である。私は斯く確信させられたのだ。それは引力の束縛から解…

グレゴリオ聖歌_キリアーレ(Kyriale)について

www.youtube.com キリアーレ(Kyriale)とはグレゴリオ聖歌のミサ通常式文集のこと。18組のミサ曲が所収されており、例えば有名な天使ミサ(De Angelis)は8番、クム・ユビロ(Cum jubilo)は9番、オルビス・ファクトール(Orbis factor)は11番である。各々どの祝日…

『Hark! The Herald Angels Sing(あめにはさかえ)』カトリック聖歌集652番

www.youtube.com 本日の主の降誕ミサの入祭唱。私にとってクリスマスキャロルと云えば、この『あめにはさかえ』か『よのひとわするな(God Rest You Merry, Gentlemen)』になる。対譯は原詩に忠実なものにした。カトリック聖歌集のものと異なるため注意された…

オスカー・ベーメ『トランペット協奏曲 へ短調op.18』1899

www.youtube.comあなたはオスカー・ベーメもトランペット協奏曲もご存じないでしょう。私も或る人に出逢わなければ、この両者を知ることはなかったに違いない。ベーメはドレスデンに生れソヴィエト・ロシアに没したドイツ人演奏家、作曲家。『トランペット協…

ムソルグスキー『ボリス・ゴドゥノフ(Борис Годунов)』1874

彌早、今宵のオペラも酷かった。新国立オペラは屡々私を失望させる。現代に於る鹿鳴館の猿共め。ムソルグスキーの音楽は良かった。オーケストラは及第。だが歌手、演出。これらが低劣極まる。歌はピーメン役を除いてあまりに貧弱。演出は軽佻浮薄で貧乏臭い…

ドビュッシー「相思の人の死(La mort des amants)」『ボオドレエルの五つの詩(5 Poèmes de Charles Baudelaire)』1889

www.youtube.com ボオドレエル、『惡の華』の第121篇「相思の人の死」という4.4.3.4の十四行詩<ソネット>に、ドビュッシーが曲を付けた。詩は、相思の2人の愛と死、そして復活という主題。詩譯は齋藤磯雄氏のものを参照した。 Nous aurons des lits pleins d…

ラモー「未開人(Les sauvages)」或いは「平和な森(Forêts paisibles)」『優雅なインドの国々(Les Indes galantes)』1736 より

www.youtube.com ラモー作曲、オペラ=バレ『優雅なインドの国々』から。第4幕第6場のロンド。ルイ王朝時代の音楽。ラモーにリュリ、フランス王国が誇る二大作曲家。 ledilettante.hatenablog.com 【対譯】Forêts paisibles,平和な森よ、Jamais un vain désir…

ドビュッシー『フルート、ヴィオラとハープのためのソナタ(Sonate pour flûte, alto et harpe)』1915

www.youtube.com ドビュッシーによる三楽章から成るソナタ。フルート、ヴィオラそしてハープの三者の組合せは他では知らぬ。特に第二楽章、ヴィオラが良い味を出している。この曲は彼の死の3年前に書かれた。病に臥す日々の中で作曲されたからだろうか。その…

シベリウス『交響曲第4番イ短調』1911

www.youtube.com 演奏会に初台まで出掛ける。演目はエルガーのヴァイオリン協奏曲とシベリウスの交響曲第4番イ短調。 シベリウスの第4番を通して鑑賞するのは初めてのことだった。古典的形式美を誇る前半のエルガーとは好個の対照を為しており面白かった。暗…

フォーレ「贈物(Les Présents)」『2つの歌(2 Mélodies)より』op.46-1, 1887

www.youtube.com 数あるフォーレの歌曲の1つである。詩はヴィリエ・ド・リラダンのもの。『残酷物語』に集録される「恋の物語」の第3篇、「贈物」が出典。「恋の物語」に集録されている7篇の詩は、恋愛の眩惑、歓び、苦悩、そして忘却に至るまでをうたうので…

ウェーバー「狩人の合唱(Jägerchor)」『魔弾の射手(Der Freischütz)』より, 1821

www.youtube.com 『魔弾の射手』第三幕にあるコーラス。残念ながら私はドイツ語を少しも解さない。Ich spreche kein Deutsch. Was gleicht wohl auf Erden dem Jägervergnügen,Wem sprudelt der Becher des Lebens so reich?Beim Klange der Hörner im Grüne…

ドビュッシー『ペレアスとメリザンド(Pelléas et Mélisande)』1902

本日新国立劇場まで出掛けて鑑賞。クロード・ドビュッシーが完成させた唯一のオペラ。台本はメーテルランクの同名戯曲殆どそのまま。明確に異なるのは、私が確認した限り、メリザンドが窓辺に坐り、髪を櫛りながらうたう歌くらい(出典は何だろう?)。 ledilet…