Mon Cœur Mis à Nu / 赤裸の心

「美」といふものは「藝術」と人間の靈魂の問題である

リラダン『アクセル(Axël)』1890 再々読

幾度目かの再読。

人の世の否定。須臾の裡に楼閣は崩れ、肉は腐り、思想は消え失せる。だから「非創造・実在≪つくられずしてあるもの≫」の裡に遁れ去れ。本作に於る教役者は斯く唱える。だがサラとアクセルはこの理想を抛棄する。「黄金の夢」が、「青春」が、彼等を呼んだからだ。

ヴィリエは、現世の徒事を蔑して「絶対的なもの」を欣求する人物を諸作品に登場させる。『トリビュラ・ボノメ』のクレエル然り、『至上の愛』のリジヤーヌ然り。そして、此等人物の語る所を、他の思想に優越させる。

「絶対的なもの」、人々はこれを「神」と呼ぶ。だが「神」とは何者か?
「天地の創造主、全能の父」と呼ぶのが人間に能う限界である。だがヴィリエは、この天才は、この「絶対的なもの」の再定義を、本書に於て試みている様に思う。そこに本書の非凡さがあると考える。

 

易易諾諾 唯々諾々の異字
佩帯(はいたい)
鹿爪らしい 形式ばっている
溜飲を下げる 胸をすっきりさせる
刺客(せっかく)
苛斂誅求(かれんちゅうきゅう) 厳しく税を取り立てること「苛斂誅求を飽かず」
よしたとえ 仮にそうだとしても
要害(ようがい) 地勢が嶮しく敵を防ぐのに適している場所
濠(ほり)
蹣跚(まんさん) 足元がよろめくさま、蹌踉
狭隘(きょうあい) 狭いこと「狭隘な土地」
悵然(ちょうぜん) 失意の状態で嘆くさま
多息(おおいき・たいそく)溜息をつくこと
已んぬる哉 もうおしまいだ
違背(いはい) 命令に背くこと