Mon Cœur Mis à Nu / 赤裸の心

「美」といふものは「藝術」と人間の靈魂の問題である

2023-05-01から1ヶ月間の記事一覧

リヒャルト・シュトラウス『サロメ(Salome)』1905

新しき背広を著て、新国立劇場まで出かけ鑑賞。一幕のオペラたる本作は、オスカー・ワイルドの戯曲『サロメ』を台本に、リヒャルト・シュトラウスが曲をつけたもの。 ledilettante.hatenablog.com ヨハネの首を摑み始まるサロメの長い告白。 本日のオペラの…

ハーマナス『生きる LIVING(Living)』2022

オリヴァー・ハーマナス(Oliver Hermanus)監督、カズオ・イシグロの脚本による黒澤明監督『生きる』1952のリメイク。 ledilettante.hatenablog.com 1953年の英国。London County Hallに務める定年間際の凡庸な役人。生気の無い姿はMr. Zombieと渾名さる程。…

メーテルランク『青い鳥(L'Oiseau bleu)』1908

作者の空想が駆使された童話劇。堀口大學譯を読む。 主人公の兄妹チルチルとミチルは「青い鳥」を探す冒険の途上、作者によって擬人化された物質・概念と出逢う。擬人化の対象は犬、猫に始まり、夜や光、植物に家畜、幸福や喜びなど様々。彼ら「人間の言葉」…

20230513日記

雨。過し易い気温。 カルミーナの革靴を買ひ、手入れとトゥスチールの埋込みを依頼する間、上野の国立西洋美術館まで出掛けた。目的は「ブルターニュ展」。 国内のコレクションが殆どで、大した展示ではなかつたけれど、行かぬよりは行つて良かつた。数々の…

メーテルランク『モンナ・ヴァンナ(Monna Vanna)』1902

1925年新潮社より上梓された山内義雄の飜譯を読む。 『モンナ・ヴァンナ』。"Monna"は既婚女性に対する尊称"Madonna"の省略形、Vannaは女性名"Giovanna"の省略形、つまり「ジョヴァンナ夫人」の意である。名こそドン・ジョヴァンニに通ずる所があるが、本作…

メーテルランク『闖入者(L'Intruse)』1890

一幕からなる戯曲。1925年新潮社上梓の山内義雄譯を読む。 「闖入者」とは運命の事を云っている。「逃れられぬ運命は如何に我々に逼って来るのか」という主題を、彼一流の対話法と、音や光の象徴で表現している。 メーテルランクの運命論には、『青い鳥』(実…

メーテルランク『マレエヌ姫(La princesse Maleine)』1889

山内義雄譯、1925年新潮社上梓。メーテルランクの飜譯と云うのは、『青い鳥』と『ペレアスとメリザンド』以外、中々為されない。斯く云うこの『マレエヌ姫』も、管見の限りでは大正時代の山内譯が最も新らしい。山内は泰西戯曲の分野に多くの譯業を為した人…

20230505日記

悲しみの紗にかすんだ薄闇にわたしは見るのです わたしたちの淫らな想いのまっ青な剣の傷あとが 縦横十文字うぬぼれのまっ赤な肉に刻まれているのです 「誘惑」モーリス・メーテルランク 女は帰った。漸く。

メーテルランク『温室(Serres chaudes)』1889

10日間の休暇も残す所3日。この休みに私は何をしただろう? 幾度目かの禁煙を始めた、特筆すべきはそれ位。あとは平生と変わらない。だがそれでいい。連休に出掛けるべきではない。先日薔薇園に出掛けたが、薔薇の馥郁たる香が愚衆の臭気に覆われて、私は文字…

ウォレス『仮面の男(The Man in the Iron Mask)』1998

ランダル・ウォレス監督作。ルイ13世~14世時代の鉄仮面伝説と三銃士物語(Les Trois Mousquetaires)に着想を得た本作。ジョン・マルコヴィッチ、ジェラール・ドパルデュー、『ミッション』のジェレミー・アイアンズ。矢鱈に俳優が豪華だが、節操無く、不快な…