Mon Cœur Mis à Nu

「美」といふものは「藝術」と人間の靈魂の問題である

Diary

20241213日記

晴、寒し。藝術愛好者が人間性を失ふてふアイロニー。 私は護国寺西の交叉点にゐた。上のはうから2人の男が歩いて来た。青年といふには弱弱しく、少年といふには逞しい感じがした。1人は盲か、目を病んでゐるらしく、もう1人を頼り、腕を組んで歩いてゐた。2…

20241124日記

晴、寒し。荘厳に落ちて来る黄昏に反射して金色に耀くメタセコイア。それにツワブキにコダチダリア、この嬋娟たるクリザンテームらは、その花言葉に相応しき高貴なる色彩を晩秋のかなしさに添ふる。かうした美に惹かれての事であらうか、ここ数日の人手の多…

20241112日記_保守主義とは何か

お馬鹿ちゃん!さあ、そんな突飛な空想は鎮めて、実際的に生きなさい。 晴、楓葉紅に染む。多忙也。読書の秋とはよく言つたもので、色々と読み返したい本が頭に浮かんで来る。書架から探し出し、ビューローのうへに置いてある。数ふるに15册を越ゆ。机上はひ…

20241110日記

20241109 晴、寒し。晏起。ツイードを着用。カテドラルで荘厳司教ミサ、過日枢機卿に任命されたと報道のあつた菊池大司教の司式。猊下に対する私の印象。まず談話が論理的である。司祭団の中にあつて、際立つてお話がお上手、聡明な御仁。そして教皇聖下に対…

20241104日記_Month of Remembrance

20241102 雨、萬霊節。仏蘭西料理店で昼餉、季節の野菜が美味。午刻疲労を推して所用を済ます、忌々し。 20241103 快晴。友人と新宿御苑を散策、秋色に染まつた篠懸並木は美くしいが、私の心はまづ群聚に愕ゐた、小石川の植物園を逍遥する時の斯の幽婉な心地…

20241031日記

晴、涼気、だがツイードを著る程ではない。アザミ、ハギ、スイフヨウが咲いてゐる。銀木犀も馥郁たる香を放つてゐる。良い時節になつた。不思議に思ふのはフヨウは夏の花ではなかつたか、渾沌たる気候の影響? 『君主論』が見つからない。これでも私は大学で…

20241009日記

Odi Profanum Vulgus et Arceo <我ハ下賤ノ凡俗ヲ忌ム而シテ之ヲ隔絶ス> 女に會ひに行く?鞭を忘れるな! ニーチェ 微雨。女性の前で聲を荒げる失態。だが私が笞を振はずして、誰か彼女を矯正できよう?彼女を人間にして遣らねばならない、私にはその責任が…

20240929日記

微雨のち陰、涼気。身体は疲れてゐるが約束のため早起き。洗濯と身支度とを済ませ、いつもの仏蘭西料理店で食事、本日は印象的な料理も会話もなかつたが、換言すればいつも通りの平安があつたと云ふ事だ。省線の水道橋驛で降りて友人と合流。神田教会で聖伝…

20240927日記

雨。時既に零時を回つてゐるので昨日の事になるが、私の守護聖人、即はち聖ヴァンサン・ド・ポールの記念日であつた。尤も私は日を跨ぐ迄気付かなかつたのであるが。私はこの聖人が好きだ。強き行動者、幼子に対する慈愛、彼の名を頂いた事を誇りに思つてゐ…

20240926日記

我が人生 神と芸術を賛美すること、人の期待に応ふること、而して強く美くしく生きること

20240923日記

22日、雨のち陰。友人と横濱の山手まで出掛ける。元町のフランス料理店で食事。京都の紅茶店に紹介頂いたMitsu Teaに立寄り、ウダの茶葉を購入。その後山手本通りを上がる。そぞろ歩きの人影もまばら。カトリック山手教会を見学、過不足のないゴシック様式の…

20240921日記

晴、後微雨。先日のさやけき十五夜は大層見事で、今や彼岸である。この頃は風に秋の匂ひを感ずる事も増えた。その為か心が弾む。実に調子が良い。 昼食の前菜、グリビッシュソースの添へられたテリーヌを提供された。「香りが良い」と私。一寸変はつた香辛料…

20240816日記_送り火 

晴。炎暑乍ら夕べには松が枝を揺らす風が心地良い。処暑は近い。盂蘭盆なので京を訪うてゐる。識合ひをおとなひ、茶葉を買ひ、冬服の註文を済ませる。 今回註文したのは、秋冬用のハッキングジャケット。抑もスコットランドのツイードで本格的に仕立てさせる…

20240728日記

晴、炎暑。聖霊降臨後第十主日を迎へてゐる。行きつけの仏蘭西料理屋で昼餉を済ませた後(デセールの無花果のコンポートが夏を思はせた)、神田教会へ。Orbis Factor。福音朗読箇所、ルカ傳18:9-14、私の聖書に下線が引いてある。 然るに取税人は遙に立ちて…

20240714日記_教授の還暦

13日、学部の指導教官が還暦を迎へられ、その祝賀会のため京へと赴く。 陰、涼気。ホテルオークラの宴会場。偉い政治家、旧家の歴々としてよき人々、また今を時めく気鋭の財界人ら数多。数百人はゐただらう、そこに場違ひな陰気者一人。Me voici!DNAの奥深…

20240708日記

連日の炎天溽暑。前回の更新から2週間を隔ててゐる。書く事が無い訳ではない。ただ御頭と肉体のキャパシティが足りてゐない。読書?望むべくも無し。 土曜、沛然豪雨。行きつけの仏蘭西料理店で彼女と夕餉を伴にする。彼女はナヴァラン・ダニョーと白身魚の…

20240616日記

晴、溽暑。 昨日は仏語学校の後、行方知らずとなつてゐた友人と再会、休日の新橋で酒を飲み乍ら彼の話を聞く。私の世界の矮小さを再認識。 今日の昼は近くの伊太利料理店で食事、給仕が夏の了りで辞めると云ふ。彼が来たのは2年前か、真面目によく働くと感心…

20240607日記

晴、薄暑。早朝の会議は身に堪へる。米国との時差が恨めしい。午后、曩に書いた竹久夢二展のため旧朝香宮邸を訪ふ。黄口学芸員共の横風な態度、それには何も言ふまい。 彼女と美術を見て廻るは愉快。私が気にかけぬ点をよく指摘して呉れる。「日本画なのに表…

20240601日記

www.youtube.com 薄陰のち晴、涼気。早朝仏語学校、近頃耳が馴れて来たやうに思ふ。茶葉の註文、ディンブラ地方ケアネスを100g。西武池袋で昼餉、テニスクラブの支拂ひ。夜18才の青年と出逢ふ、私がピアノを弾く事に興味を示したので聞くと、サクソフォーン…

20240428日記

晴、立夏を迎へてをらぬのに暑し。リネンスーツを着用。 朝医者へ行き睡眠薬、その他二週間分処方さる。この頭痛はいつまで続くのだらう。 午過ぎ、藤沢まで後輩のピアノ演奏会へ赴く。恋人紹介さる。扨てProgramme、第一部は私好みにサティ、ラヴェル、ドビ…

20240421日記

晴のち微雨。薄暑。神田教会でミサに與る。隣に坐つた聖イグナチオ教会の御婦人方と交流し、聖歌隊席の裏手にある玻璃窓、禁教時代の殉教者に捧げられたものを見学し、実行委員の方々とカフェを共にした。社交、しかも英語で。私に社交の天稟はない。平生孤…

20240420日記

晴れ、仏語学校の新学期始業。播磨坂の伊太利料理店で食事をして、小石川植物園を逍遥。躑躅が盛りを迎へてゐる。思へば昨年も同じ時期に同じ場所で躑躅を見たのだつた。この一年、私の生活はまるで変はつてゐない。私といふ人間も相変はらずである。それの…

20240413日記_西洋美術館にて

乱文になるが、もう以前のやうに平日ゆつくりと書く事のできぬ故、忘却するよりは文章に残して置きたいと思つた次第。 此頃の私の顔には、拭へぬ生活の痕が顕らかである。又、立居振舞や言ひまわしから、余裕が消えたと思ふ。平生のやうに仏蘭西料理店でマダ…

20240401日記_復活祭或いは愛する人の死

主の御復活おめでたうございます。 先日、祖父が亡くなつて以来はじめて祖父の家を訪れた。殊勝な事に、今や祖母は一人で地所の管理をしてゐる。女は強い、祖母や母を見てゐるとさう思ふ。私の一族の男はみな感傷的でいけない。 かのやうなclichéを使ひたく…

長谷川潔とマニエール・ノワールに就いて

晴れ、身に堪ふる寒さ。各大学は卒業式を迎へてゐるやうで、昨日などは学習院門前で愛子内親王殿下を御見かけした。祖母に話してやらう、きつと悦ぶだらう。 扨て、眩しい若者達を余所目に、私は休暇を利用して群馬県立近代美術館を訪ふた。私はこの美術館を…

20240317日記

晴れ、四旬節第5主日。目白聖公会の教会堂をお借りして、跪き、天使祝詞三環を捧げ奉る。本日彌撒に與つては居ないが、朗読箇所はヨハネ傳第12章だと思はれる。即ち、 一粒の麥、地に落ちて死なずば、唯一つにて在らん、もし死なば、多くの果を結ぶべし(ヨハ…

20240214日記

Ash Wednesday, it means the first day of Lent. 巴里ではDeus Genitor alme<施しを齎す神>が歌はれたであらうか。尚ほ嘗て2月14日は聖ウァレンティヌスの記念日であつたのだが、第二バチカン公会議の際に削除された。 新聞に目を通す。政治資金問題が紙面…

20240203日記

峻厳なる生活のよろこびをさとれ、而して祈れ、絶え間なく祈れ。祈禱は力の貯蔵所だ。意志の祭壇、精神の力学、秘蹟の魔法、霊魂の衛生。(ボオドレエル『火箭』) 昨日はマリア清めの祝日であつたから、今朝目黒教会へ行き、ロザリオ三環を捧げて来た。帰るさ…

20240129日記_道義、選択、後悔

www.youtube.com 記録しておかねばなるまい。 私は自らの選択を後悔する事が滅多にない。喩へその選択が不合理で、(現世的な)利益を損なふものであつたとしても、私はその不利益を勘定に入れた上で選択し、その不満足な結果に満足する。 しかし今日、私は選…

パリ紀行(6)_ルーヴルにて 

昼下がりの公園にて、年端も行かぬ5歳位の少女が入口を通ろうとしていたから、私は戸を開けて彼女を通した。すると彼女はこちらを振り向いて、顔を斜に、口元に微笑を湛え乍らmerci, monsieurと、いとも優雅な挨拶を私に返して、軽やかな足取りで去って行っ…