Mon Cœur Mis à Nu / 赤裸の心

「美」といふものは「藝術」と人間の靈魂の問題である

Diary

20240413日記_西洋美術館にて

乱文になるが、もう以前のやうに平日ゆつくりと書く事のできぬ故、忘却するよりは文章に残して置きたいと思つた次第。 愛は死よりも強しと、ソロモン王は云つた。然り、愛とは不可思議だが、偉大な業である。殊に女性の愛は限りを知らぬ、男の蒙を啓くものだ…

20240401日記_復活祭或いは愛する人の死

主の御復活おめでたうございます。 先日、祖父が亡くなつて以来はじめて祖父の家を訪れた。殊勝な事に、今や祖母は一人でestateの管理をしてゐる。女は強い、祖母や母を見てゐるとさう思ふ。私の一族の男はみな感傷的でいけない。 かのやうなclichéを使ひた…

長谷川潔とマニエール・ノワールに就いて

晴れ、身に堪ふる寒さ。各大学は卒業式を迎へてゐるやうで、昨日などは学習院門前で愛子内親王殿下を御見かけした。祖母に話してやらう、きつと悦ぶだらう。 扨て、眩しい若者達を余所目に、私は休暇を利用して群馬県立近代美術館を訪ふた。私はこの美術館を…

20240317日記

晴れ、四旬節第5主日。目白聖公会の教会堂をお借りして、跪き、天使祝詞三環を捧げ奉る。本日彌撒に與つては居ないが、朗読箇所はヨハネ傳第12章だと思はれる。即ち、 一粒の麥、地に落ちて死なずば、唯一つにて在らん、もし死なば、多くの果を結ぶべし(ヨハ…

20240214日記

Ash Wednesday, it means the first day of Lent. 巴里ではDeus Genitor alme<施しを齎す神>が歌はれたであらうか。尚ほ嘗て2月14日は聖ウァレンティヌスの記念日であつたのだが、第二バチカン公会議の際に削除された。 新聞に目を通す。政治資金問題が紙面…

20240203日記

峻厳なる生活のよろこびをさとれ、而して祈れ、絶え間なく祈れ。祈禱は力の貯蔵所だ。意志の祭壇、精神の力学、秘蹟の魔法、霊魂の衛生。(ボオドレエル『火箭』) 昨日はマリア清めの祝日であつたから、今朝目黒教会へ行き、ロザリオ三環を捧げて来た。帰るさ…

20240129日記_道義、選択、後悔

www.youtube.com 記録しておかねばなるまい。 私は自らの選択を後悔する事が滅多にない。喩へその選択が不合理で、(現世的な)利益を損なふものであつたとしても、私はその不利益を勘定に入れた上で選択し、その不満足な結果に満足する。 しかし今日、私は選…

パリ紀行(6)_ルーヴルにて 

昼下がりの公園にて、年端も行かぬ5歳位の少女が入口を通ろうとしていたから、私は戸を開けて彼女を通した。すると彼女はこちらを振り向いて、顔を斜に、口元に微笑を湛え乍らmerci, monsieurと、いとも優雅な挨拶を私に返して、軽やかな足取りで去って行っ…

パリ紀行(5)_ソレム修道院への巡礼

巴里に退屈を覚え始めた此頃、グレゴリオ聖歌復興の地、ヴィリエ・ド・リラダンも屡々訪れたというソレム修道院へ。生涯で一度は行かねばと思っていた。 朝まだきと云っても午前8時に近いが、写真の通りパリの日の出は遅い。モンパルナス駅からナント行きのT…

パリ紀行(4)_ヴィリエ・ド・リラダン伯の墓

巴里に来て十日が経つ。本日のミサ曲はキリアーレから第12番Pater Cuncta(万物の父)が歌われた。サンクトゥスの抑揚が美くしい。これが歌われるミサに与った事のある現代日本人は、恐らく私だけだろう。 私はメトロを降り、メニルモンタン通りからペール・ラ…

パリ紀行(3)_モンマルトルとモンパルナス

信心深い女というのは、何故斯くも美くしく私の眼に映るのか。日本でめっきり見ないからだろうか。もっとも我が国のご婦人方の金銭への信仰の篤さは見上げたものだが。サクレ・クール晩課の帰るさ、ペール・ラシェーズで母の手を引き、メトロを降りたうら若…

パリ紀行(2)_左岸

ホテルでトマという名のブルトン人と相識り合ったので、試しにヴィリエ・ド・リラダンを知っているか尋ねてみたが、知らぬと云う。 左岸を歩く。サン・フランソワ・グザヴィエ教会。ヴィリエ・ド・リラダンの葬儀が執行われた教会。 サント・クロチルド聖堂…

パリ紀行(1)_ノエル

24日午後6時巴里市内に到着。En lui viens reconnaître, ton dieu, ton sauveur~♪ 至る所でカトリック聖歌集第113番『きたれ友よ(Adeste fideles)』の調べ。文章は後日加筆するとして、行動記録だけでも残して置きたい。 24日夜半降誕祭、サント・トニリテ教…

20231223日記

晴れ。愈々明日巴里に発つ。朝本棚を整理。午後ディンブラ・ケアネスの茶葉を使い切り、遺書を書いた。よし客死しても、悔いは残さぬように。

20231220日記_チェスターフィールドコートに就いて

忌まわしい事に眠れない為、件のチェスターフィールドコートに就いて書こうと思う。仕立屋がホームページで紹介をして呉れていたので写真を拝借。構わない、私のコートである。 チェスターフィールドコートは、英国で生れた王党派の外套である。シングルの比…

20231219日記

晴れ。 以前註文したチェスターフィールドコートの仕上りを閲するに、どうも裏地がよろしくない。十全無瑕の洋服を他人に仕立てさせるのは何と難しい事かと、改めて思う。だが抑々私の理想主義が良くない。この性質の所為で諸般の事を怪しむ事になる。神経は…

20231204日記_葬送 

扶けては斷橋の水を過ぎ、 伴つては無月の村に歸る 『無門関』第四十四則 祖父の葬儀を了へた。私個人はバタ臭い加特力主義者であるが、本家は臨済宗妙心寺派の檀家で在るから、その様式に則り式を執行つた。私も今日ばかりはロザリオでなく数珠を持つて、使…

20231202日記

午前1時47分、祖父帰天の報受く。Pie Jesu Domine, Dona eis requiem.

20231130日記

Te rogamus audi nos<汝我等の願ひを聴容れ給へ> 晴れ、晩秋の肌寒さ。街路樹に殘る枯葉も稀である。仏蘭西に行く際、是非とも手に入れたい本がある。ジョゼフ・ド・メーストルの各書。 『フランスに関する考察(Considérations sur la France)』1796 『教皇…

20231125日記

晴れ。秋闌けて折ふしの移らふも間近。 仏語学校へ行き、授業了りに友人とカフェでボオドレエルの『惡の華』に就きて卑陋なる識見を喋々した後(本当に耻しいのだが女性の前で黙込む訳にも行かぬ)、小石川の植物園を散歩する。メタセコイア、ラクウショウ、ナ…

20231113日記

晴れ。私は倖せである。何故なら私は、私個人の、内奥の進歩を信じてゐるから。 映画を観た。アラン・レネの『二十四時間の情事』。ヌーヴェルバーグ、強烈な個性の集まりを一語で括る事には躊躇ひがあるが、それでも矢張り、私は此の集団が好きである。 Som…

20231105日記

晴れ。昨日の付合ひで疲労し、今日は何もできなかつた。忌まはしい。 ・土曜日の荘厳司教ミサの曲はオルビス・ファクトールに決まつたと云ふ。de angelisやcum jubiloに比較して静的で優しく響くこのミサ曲を、私は好いてゐる。 ・クロード・ルルーシュの『…

20231103日記

晴れ、京都を訪ねる。七条ステーションは立錐の余地もない、逃げるやうにして市内へ向かふ。 烏丸蛸薬師の前田珈琲で朝食を取つた後、東洞院の仕立て屋をおとなふ。ダブルブレステッドのチェスターフィールドコートを註文。生地は伊太利製の黒無地、6つ釦2つ…

20231017日記_祭囃子

晴れ、冷たき風にくゆりて金木犀が馥郁と匂ふ此頃。この時期の林檎は、一年を通して最も美味しい。近くの鬼子母神は御会式だと云ふ。提灯金棒、太鼓と笛のかしましさ。人々の不思議な衣装、奇怪な動き。それらは南米の謝肉祭のやうで異国染みた面白さはある…

20231011日記_ニヒリスムの悪

晴れ。歯科検診。オーダーしてゐたパンツが仕上がつた。深まる秋の永き夜、シューベルトのピアノ曲を聴いてゐる。 人間の本性は腐敗してゐる。この世に真の満足はなく、愉しみは虚栄に満ち、不幸は無限であり、さうした大層な人生の最期を飾るは死である。 …

20231006日記_伊太利と私

晴れ。靴を買つた。伊太利製、内羽根のプレーントゥ。ストレートチップが欲しかつたのだが、寸法が合はなかつた。革の色は光の当たり方次第で茶にも灰にも黒にも見える、それを面白く思つて擇んだ。 さういへば、先日の外套の服地も伊太利製であつたが、私は…

20231004日記_覚書など

霧雨。毎月の紅茶と、西武百貨店から商品券を受取る。もつと繁く日記をしたためるべきなのだけれども、つひ億劫で。 中秋の月の皎皎たるや見事だつた。その翌日だつたか、仕立て屋へ行き冬のコートを注文した。シングルブレステッドのチェスターフィールドコ…

20230925日記_原罪

晴れ。大変な疲労。マタイ受難曲を聴き動悸を抑へる。 原罪について公教要理を確認した。 ・人間は創造主に背き、神なしに、また神によらずに「神のように」なろうと望んだ(創世記3:5)。これにより人間は、原初の聖性と義の恵みを失った。斯かる状態を原罪と…

20230917日記

さりながら、何といふ愕くべきことであらう、我々の理解から最も懸け離れてゐる秘義、即ち原罪遺伝の秘義が、それなくしては我々がおのれ自身について何等の理解をも得ることの出来ぬ一事であらうとは。(パスカル『パンセ』) 私の魂を縛るは、唯原罪の意識の…

20230903日記

秋来ぬと目にはさやかに見えねども 風の音にぞ驚かれぬる 晴れ。処暑らしく、昼の日差しは夏そのまま乍ら、夕暮れ時には涼しい風もある。 今朝は肺腑を抉るやうな悪夢で目を覚ました。愛する人、友人、そして来し方の夢。これらが象徴的に出現しては、私を拒…