Mon Cœur Mis à Nu / 赤裸の心

「美」といふものは「藝術」と人間の靈魂の問題である

2021-10-01から1ヶ月間の記事一覧

ポオ『ウィリアム・ウィルソン(William Wilson)』1839

ドッペルゲンガーを扱う話。さる良家の子息は、寄宿学校で自身と瓜二つの少年と出逢う。主人公が悪行に走る時、このドッペルゲンガーは決まって彼の前に表れて、彼を止めるのだ。 「奴は何者だ? どこから来るのだ? そしていったいなんの目的で?」

リラダン『王位要求者(Le Prétendant)』1866

所謂「幻の書」。1866年に上梓されたと推定されるが、その稿本が発見されたのは1954年。1965年ジョゼ・コルティ社から刊行されたのは、実にヴィリエの死後76年目であった。初期作品らしく存分にロマンティックでありながらも、ヴィリエ作品の一貫した主題、…

20211017日記

友人と化野まで散歩する。天龍寺前の老松でお抹茶を戴く。現代短歌の話をしたり、フランス革命の話をしたり。このような酔狂に附合ってくれる人はそう居ない。

20211016日記

京都を散歩。南禅寺へ、奥丹で昼食をとる。 いつものように鹿ヶ谷通りを上る、途中光雲寺に寄り、哲学の道へ。法然院へ行く。この辺りの雰囲気がとても好きだ。静かで品があって。「神韻縹渺」とでも云えば可いのだろうか。私はこの土地を愛している。鄙賤の…

ポオ『アッシャー家の崩壊(The fall of the house of Usher)』1839

病的なポオの短篇小説。暗澹たる恐怖に襲われるアッシャー氏。友人の助けも虚しく、彼は恐怖の生贄となる。 ポオは数学的に残酷な文体を用いて、じわりじわりと、私の理性を恐怖で支配してしまう。ポオの作品を読むときに私たちが受ける、壓倒的な冷たい印象…

リラダン『彼岸世界の話(Propos d’au-delà)』から「崇高なる愛(L'Amour sublime)」「こよなき戀(Le meilleur Amour)」1893

『彼岸世界の話』はヴィリエ最晩年の作を収めた短編小説集である。彼の死後4年目1893年に単行本として上梓された。 「崇高なる愛」1889世俗的な実際家エヴァリスト・ルソー・ラトゥーシュと、崇高なる魂の持主との間には、「愛」の認識について、非常な隔た…

エドマンド・ウィルスン『アクセルの城(Axel's Castle)』1931

米国人文学者による象徴主義についての文学評論。ヴィリエ・ド・リラダンの詩劇『アクセル』の主人公、アクセル・ドーエルスペール伯を、象徴派のあらゆるヒーローたちの典型であると看做し、書名に用いている。 ledilettante.hatenablog.com 象徴主義はロマ…

リラダン『エレン(Elën)』1865

1865年1月14日、ヴィリエが27歳の時に上梓した作品。若きヴィリエの作品に、『未来のイヴ』や『アクセル』の充実感はあるのか?侮る莫れ。本作は崇高なる理想主義者であるヴィリエの本領が、存分に発揮された傑作。 不滅を探し求めていた男サムエルが、見目…

ポオ『リジイア(Ligeia)』1838

人もその繊弱い意志の甲斐なさによらぬかぎりは、天使にも将た死にも、屈従しおわるものではない 亡き妻リジイアを想う男。彼の意志が、喪われた恋人を幽世から呼戻す。リラダンが本作を参考に『ヴェラ』を書いた事は間違いない。両者の筋書きは殆ど同じだ。…

リラダン『新残酷物語(Nouveaux Contes Cruels)』1888

レミ・ド・グールモンが指摘するように、ヴィリエ作品は夢と諷刺の両者から成立っている。『新残酷物語』(1888)は『残酷物語』(1883)に続き、こうしたヴィリエの二面性を愉しめる短篇集。 『寄宿舎友達』諷刺。近代社会の道徳顚倒、拝金主義。『希望による拷…

20211003日記

木犀の馥郁たる香気。好きな季節の到来を告げる馨り。 ああもう散々だ。これ以上心の平安を乱されたくはない。京都に遁世をしたい。変わらぬものだけを見つめて静かな時を過ごしたい。それが叶わぬなら消えてしまいたい。Libera me domine de morte eterna.

リラダン『アクセル(Axël)』1890

斎藤磯雄氏譯、東京創元社。ヴィリエの理想主義的な夢と中世趣味が見事に結晶した詩劇。ヴィリエの死後に出版された。 ledilettante.hatenablog.com 青春から逃れ、シュヴァルツヴァルトの古城で現身と永劫世界の間に揺れる男。美姫サラがもたらした最後の誘…