Mon Cœur Mis à Nu / 赤裸の心

「美」といふものは「藝術」と人間の靈魂の問題である

lexicon

リラダン『残酷物語(Contes cruels)』1883、その2

ledilettante.hatenablog.com ledilettante.hatenablog.com マーラーの第7番を聴きながら、『残酷物語』再読。「ヴェラ」や「サンチマンタリスム」、「見知らぬ女」など気に入っている小品は幾度となく読み返しているのであるが、この度は全体を通して。 『…

ドールヴィイ『デ・トゥーシュの騎士(Le Chevalier Des Touches)』1864

バルベイ・ドールヴィイらしい「語り」による物語小説。 ledilettante.hatenablog.com バルベイの故郷ノルマンディー、大革命の時代が舞台。 実在するふくろう党(レ・シュワン)の騎士ジャック・デトゥーシュ(Jacques Destouches de La Fresnay)の英雄譚に着…

20220422日記

晴れ。暑い。伊勢丹で靴を買う。 絲の如く 麻の如く尠くとも(すくなくとも)holocaust 燔祭(はんさい) 猶太人虐殺の意で使われるが、原義は生贄を火焙りにして神に捧げる行事のこと。いや、同義か。ゆくりなく 思いがけなく、突然に心緒(しんしょ) 心の中で思…

ゴーチエ『金髪をたずねて(La Toison d'or)』1839

ああ!気の毒な青年よ。きみの蔵書を火に投じ、絵をさき、塑像をくだき、ラファエルやホメロスやフィディアスを忘れてしまいたまえ。おろかしいきみの情熱はどういう効果をもたらすのだ。謙虚な心をもって、きみの愛するものを愛したまえ。 ゴーチエの短篇小…

リラダン『未来のイヴ(L'Ève future)』1879

御冗談でせう!「美」といふものは「藝術」と人間の霊魂の問題です! 1880年のこと『ル・ゴロワ(Le Gaulois)』紙上にて、公に発表された。赤貧の貴族ヴィリエ・ド・リラダン唯一の長編小説。反ブルジョワ精神の結晶。私が読んだのは、東京創元社出版、斎藤磯…

アンジェイ・ワイダ『ダントン(Danton)』1983

アンジェイ・ワイダ(Andrzej Wajda)監督によるフランス・ポーランド合作の伝記映画。時は大革命期、ロベスピエールによる恐怖政治の最中、ダントン処刑までの数週間を描く。配給はフランスのゴーモン社。セザール賞を受賞。 なんとも特徴的なのは、演者たち…

ジャン・ドラノワ『ノートルダムのせむし男(The hunchback of Notre Dame)』1956

『寄宿舎; 悲しみの天使(Les amities particulieres)』のジャン・ドラノワ監督作。ヴィクトル・ユゴーの『ノートルダム・ド・パリ』を原作とする、古き良き時代のフランス映画。せむし男を演ずるのはアンソニー・クインズ、エスメラルダを演ずるのはジーナ・…

『刑事フォイル』SE02

EP01 Fifty ships容疑者の所属する組織、持てる影響力、何を動員することが可能かなどに気を配ること。定量的に物事を判断すること。 EP02 Among a few犯人しか知り得ない事実は何かを把握すること。 EP03 War Games今日も推理を当てた。事件を紐解く鍵はEp0…

『刑事フォイル 兵役拒否(A Lesson in Murder)』SE01EP03

因果関係の難しいエピソードであった。そもそも見落としが多い。手がかりが見えぬことに動揺し、基礎をも忘れてしまった為、成す術が無かった。悔しくて今夜は眠れない。 "Eliminate the impossible and whatever remains however improbable must be the tr…

『刑事フォイル ドイツ人の女(The German Woman)』S01E01

She was only a German woman. 出版社の女性から、『刑事フォイル(Foyle's war)』なる英国のドラマを勧められたのであるが、これが中々面白い。名前の通り推理物。1940年戦禍の英国が舞台、話には戦争が大きく絡む。まだシーズン1の1話しかみていないが、殺…

20211117日記

晴れ、暖かい。六義園へ行く。何てことはない。こんなものを有難がる東京の人間は馬鹿だと思う。 怯懦(きょうだ) 臆病で気の弱いこと爾余(じよ) それ以外端倪(たんげい) 物事の成行を見通すこと「端倪すべからざる」=推し量れないほどの大童(おおわらわ) な…

リラダン『アクセル(Axël)』1890

斎藤磯雄氏譯、東京創元社。ヴィリエの理想主義的な夢と中世趣味が見事に結晶した詩劇。ヴィリエの死後に出版された。 ledilettante.hatenablog.com 青春から逃れ、シュヴァルツヴァルトの古城で現身と永劫世界の間に揺れる男。美姫サラがもたらした最後の誘…

20210810日記

2021年の夏が私に残すものは 蹌踉(そうろう) よろめくこと易わる 変わるaccomplished 嗜みを身に付けたvexed いらいらして聟(むこ) 婿当代浮薄見晴るかす はるかに見渡すこと凭れる(もたれる)星辰(せいしん) 星々のこと悉皆(しっかい) 残らずすべてhitherto …

ユイスマンス『彼方(Là-bas)』1891

現代世界に厭いているデュルタルが、ジル・ド・レー男爵の研究を通して、超自然的世界をみる。彼は中世キリスト教の世界を理想視し渇望するも、信仰を持つには至らない。ジル・ド・レーの一代記として読んでいて面白いが、物語としてはどうか。シャントルー…

ラ・ファイエット夫人『クレーヴの奥方(La Princesse de Clèves)』1678

描写が殆ど恋愛心理の明晰な分析に集中しており、心理小説の祖と云われている。ラ・ファイエット夫人が生んだ、新たな近代心理小説の伝統は、ラクロ『危険な関係』、コンスタン『アドルフ』、ラディゲ『ドルジュル伯の舞踏会』等に引継がれた。また、『クレ…

リラダン『殘酷物語(Contes cruels)』1883

『残酷物語』は、ヴィリエ・ド・リラダン伯爵が1883年まで種々の雑誌に発表してきた作品に推敲彫琢を施し、そこに未発表の4篇を加えて出版された短篇集である。 「ヴィリエは夢と諷刺の両者から成り立っている」とレミ・ド・グールモンは言う。この『残酷物…

20210501日記

2021.05.01青蓮院門跡の楠を見た。親鸞が植えたものと書いてあるが眉唾物。服を作りに四条まで出かける。 2021.05.02行きつけの紅茶屋に寄り、お決まりの散歩道をゆく。南禅寺から禅林寺、若王子神社、安楽寺、法然院を経て慈照寺に至る。高度に洗練されたル…

ロマネク『私を離さないで(Never let me go)』2010

マーク・ロマネク(Mark Romanek)監督作。カズオ・イシグロの同名小説を原作とする。舞台は並行世界の英国。臓器提供(National Doner Programme)のために育てられた子供たちが、恋をし、自身の役目を果たすまで(completion)の話。人々の倫理観に訴える、ベル…

フレミング『ジャンヌ・ダーク(Joan of Arc)』1948

『風と共に去りぬ』のヴィクター・フレミング(Victor Fleming)監督作。ジャンヌ・ダルクの生涯を描く。イングリッド・バーグマン(Ingrid Bergman)がジャンヌを演じる。多額の制作費を投じた豪華な作品であるが、商業的には成功しなかったらしい。まぁ崇高な…

20201201日記

紅葉を観に鹿ケ谷辺りを廻った。写真は法然院の境内。南禅寺から鹿ケ谷通を上がる。途中冷泉通に入り哲学の道へ出た。安楽寺と法然院に寄る。静かで落ち着く。今日の散歩は成功だった。すぅっと心が透通った気持ちがして、活力が湧いた。柄にもなく和歌を学…

20201126日記

どうも僕は旅行が嫌いらしい。帰心矢の如し。はやく京都へ帰ろう。 衣桁(いこう) 着物を掛ておく家具感情の飽満 満足していること

20201114日記

心の晴れない日が続く。どうしようもない。 相伴(しょうばん) 正客の相手となり一緒に接待を受けることまんじりともせず 少しも眠らないさま棚卸し 人の欠点を言い立てること内証 表向きにせず、内々にしておくこと諒察 相手の事情を思いやること侍史(じし) …

20201105日記

教会の敷地で遊ぶ子供たち。彼らの声を聴く幸せ。 あんじょう 具合よく、うまくと胸を突く びっくりする就中(なかんずく) 特に彳む(たたずむ)世故に長ける 世情によく通じているスレート 屋根材の1種義理一遍 世間体を飾るために形式的に物事をすること落魄…

アルベール・カミュ『転落(La chute)』1956

全編を通してクラマンスと名乗る男が聴き手に対し「告白」をする形。自身が「二重性」ある人生を歩んできたこと。自身が持つ傲慢さ、偽善性、孤独を独白する。しかしそれは「懺悔」とは異なる。「だがあなただってそうでしょう」と言わんばかりの、云わば自…

20201027日記

鴨川へ出かけた。川辺のベンチに寝ころび太陽の光を浴びながら3時間ほど読書した。北向きのじめっとしたアパートの1室にいるよりも余程気持ちが良い。 日が暮れてきたので喫茶店へと移動した。今や貴重な喫煙可能店。周りを見渡すと、みな煙草を呑んでいた。…

20201016日記

コートの注文を済ませた。黒のバルカラーベルテッド。仕上がり迄ひと月程待たねばならない。仕立て屋は、僕が今日どのようなコートをオーダーする積りであるかを、初めの会話でピタリと当ててきた。これには全く感心させられた。普段の僕のファッションや、…

三島由紀夫『サド侯爵夫人』

第三幕の渾沌の前に読者の「道徳」が問われる。諸価値をそれぞれ代表する女6人が想描くサド侯爵"像"。どれも真実ではないのだ。 三島は本作品と『わが友ヒットラー』をお気に入りの戯曲に数えていた。 剣呑 危険を感じている様子 杜氏 酒の醸造工程を担う職…

三島由紀夫『太陽と鉄』1968

1965年から1968年に渡って佐伯彰一らの文芸同人雑誌『批評』に連載された。晩年を生きる三島が「芸術と生活、文体と行動倫理との統一」を図るにあたり、その根底に置く観念が紹介されている重要な作品である。 その密度と、論理的飛躍が相俟って極めて難解だ…

三島由紀夫『女神』1955

1954年から雑誌で連載を始めた本作は、三島文学の中では初期から中期のものにあたる。女性美を追い求める男。彼は自分の娘を「理想の女性」にしようと情熱を注ぐ。理想と現実とが対比されながら話は進み、娘朝子は現実を乗越え「女神」となる。 斑鳩一をみて…

三島由紀夫『肉体の学校』1964

元男爵夫人の女性が、美しい顔とからだを持つゲイバーのバーテンに入れ込む話。本作を基にした、ブノワ・ジャコ(Benoît Jacquot)によるフランス映画もある。 話の構成力は流石の一流である。私は小説を読みながら要所要所で話の行きつく先を、つまり結末を予…