Mon Cœur Mis à Nu / 赤裸の心

「美」といふものは「藝術」と人間の靈魂の問題である

モーリアック『イエスの生涯(Vie de Jésus)』1936

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フランソワ・モーリアック(François Mauriac)が遺したイエス伝。共観福音書(特にルカ伝福音書)と第四福音書とを豊富に引用し、彼の解釈を加えて、イエスの生涯が語られる。
解釈と云えば、殊にイスカリオテのユダの心理に関する記述が独創的。彼もまたイエスを愛した弟子のひとりであることに鑑みての、彼の嫉妬、怨み、そして絶望が描写されている。新しい学びがあった。

 

銀三十枚、そんなものが彼にとって何であろうか?彼がイエスを愛していなかったなら、ほかの者よりも愛されていないことを感じなかったなら、おそらくイエスを引き渡さなかったかもしれない。

 

ユダについて私はいつも不憫に思う。
「ここにイエスを売りしユダ、その死に定められ給ひしを見て悔い」(マタイ27:3)
「彼その銀を聖所に投げすてて去り、ゆきて自ら縊れたり」(マタイ27:5)
ユダは自らの為した罪を悔いたが、遂に救いは與へられなかった。

使徒言行録の記述は更に凄惨を極める。
「この人は、かの不義の価をもて地所を得、また俯伏に堕ちて直中より裂けて臟腑みな流れ出でたり」(使徒行伝1:18)

人の子による贖罪を完成させるため、神は裏切り者を必要とした。それがユダである。彼もまた全人類の救いのため、自らを犠牲にした一人ではないのか? 主よ、ユダに対しても憐れみを。

 

青丹によし(あをによし) 「奈良」をみちびく枕詞、万葉集に27首詠まれている
滔々たる(とうとうたる) 人の話などが淀みなく流れるさま
懶惰(らんだ) なまけ怠ること
吾人(ごじん) 一人称の人代名詞
ゆくりなく 思いがけなく、突然に
重畳の至り(ちょうじょうのいたり) この上なく喜ばしい