Mon Cœur Mis à Nu / 赤裸の心

「美」といふものは「藝術」と人間の靈魂の問題である

2023-08-01から1ヶ月間の記事一覧

フォーレ「メリザンドの歌(Chanson de Mélisande)」『ペレアスとメリザンド(Pelléas et Mélisande)』1901

www.youtube.com モーリス・メーテルランクの戯曲『ペレアスとメリザンド』、英訳版の劇付随音楽。第三幕第二場、塔の窓際に坐すメリザンドが、光の束のやうな美くしい金色の髪を、くしけずり乍ら歌ふ「王様の三人の盲の娘」。これはロレイン・ハント・リー…

エルネスト・ルナン『イエスの生涯(Vie de Jésus)』1863 

基督が、祈禱と信仰とは物質的にすら全能だと信じ給うたことを、ルナンは莫迦げてゐると考へてゐる。(ボオドレエル『赤裸の心』) エルネスト・ルナン(1823-92)は19世紀フランスの思想家。ブルターニュの敬虔な家庭に生れ、サン・シュルピス神学院に学ぶが、…

20230823日記_京の夏

洋服の注文とお茶を買う為に京都に赴いた。暑い、だが私は京都の夏は嫌いではない。 静寂の中に響く蝉の声。青紅葉や苔の深い緑と、空の紺碧との調和。どこからか馥郁たる香が漂う。神韻縹渺、京の夏には暑い中にも優雅がある(気持ち一つじゃないか)。 ああ…

函館紀行(4)_当別教会(聖リタ教会)、当別トラピスト修道院

峻厳なる生活のよろこびをさとれ、而して祈れ、絶え間なく祈れ。祈禱は力の貯蔵所だ。意志の祭壇、精神の力学、秘蹟の魔法、霊魂の衛生。(ボオドレエル『火箭』) 朝まだき、雨の函館驛を発つ。乗込んだ国鉄時代の気動車は日本海沿いを走り、幾つかの淋しき漁…

函館紀行(3)_厳律シトー会 天使の聖母トラピスチヌ修道院

曇り、27度。 本日はトラピスチヌ修道院に行くと決めていたのに、朝を寝過ごした。時間に余裕もないので昼食は取らず、だが元町教会での祈りは忘れずに済ませて、市電に乗込んだ。トラピスチヌ修道院は正式名を「厳律シトー会 天使の聖母トラピスチヌ修道院…

函館紀行(2)_カトリック元町教会(2)

詩人てふ苛立ちやすき種族 雨、涼しい。 聖母被昇天を函館元町教会で祈る。教会への道すがら、街に鐘の音が響いていたが、あれは正教会のものだろうか?彼らもまたNotre Dameの祭日を祝っているのだろうか?しかあれかし。函館は信仰と共にある街だ。衰退の…

函館紀行(1)_カトリック元町教会

暫く函館に逗留している。本日の天気は霧雨、涼しい。京都が37度、東京32度、軽井沢でも28度だと云う事だが、函館は24度。何たる特権の享受。この気温と、一向に顔を出さぬ太陽との所為で、私はイングランドに来ているかのような錯覚を覚え始めた。じめっと…

ワーグナー『パルジファル(Parsifal)』高木卓譯

偕に悩みてさとりゆく 純真無垢(Parsi)のおろかもの(Fal)かかる男を待てよかし 我の選べる者なれば 『パルジファル』はワーグナーの死の前年、1882年に完成しバイロイトで初演された。 作曲家は『パルジファル』を舞台神聖祝典劇(bühnenweihfestspiel)と銘し…

20230808日記

晴れ、積乱雲をみる。感傷な想いを起こしている私の横を、日に灼けた少年2人が通り過ぎた。彼らは翳りの無い笑顔をしていた。その表情が持つ率直さは、私を苦しめた。