Mon Cœur Mis à Nu / 赤裸の心

「美」といふものは「藝術」と人間の靈魂の問題である

2022-03-01から1ヶ月間の記事一覧

『細雪』に倣う京の花見

京で桜の名所と云えば? 円山公園、平安神宮、御室仁和寺、若い人は哲学の道や鴨川を挙げるかもしれない。まあ至る所に名所はある。だから観て回るのが難しい。特に嵯峨の方は。 谷崎潤一郎は『細雪』の中で、洛中及び嵯峨野の桜を見て回るモデルコースを示し…

リラダン『未来のイヴ(L'Ève future)』1879

御冗談でせう!「美」といふものは「藝術」と人間の霊魂の問題です! 1880年のこと『ル・ゴロワ(Le Gaulois)』紙上にて、公に発表された。赤貧の貴族ヴィリエ・ド・リラダン唯一の長編小説。反ブルジョワ精神の結晶。私が読んだのは、東京創元社出版、斎藤磯…

アラン・レネ『去年マリエンバートで(L'Année dernière à Marienbad)』1961

ヌーヴェル・ヴァーグ主流のカイエ派に対し、左岸派を代表する、アラン・レネ(Alain Resnais)監督による作品。ヴェネツィアで金獅子賞。ちなみにカンヌ国際映画祭は、レネの左翼的な政治的見解を理由に、本作品の上映を拒否した。 登場人物はみな名が伏せら…

アンジェイ・ワイダ『ダントン(Danton)』1983

アンジェイ・ワイダ(Andrzej Wajda)監督によるフランス・ポーランド合作の伝記映画。時は大革命期、ロベスピエールによる恐怖政治の最中、ダントン処刑までの数週間を描く。配給はフランスのゴーモン社。セザール賞を受賞。 なんとも特徴的なのは、演者たち…

ニキータ・ミハルコフ『シベリアの理髪師(The Barber of Siberia)』1998

ニキータ・ミハルコフ(Никита Михалков)監督作のロシア映画。云うまでもなくロッシーニの某オペラと掛けている。皇帝アレクサンドルⅢ世による観兵式のシーンが有名で、ずっと観たかった。90年代は意外と名作が多い。 情熱に身を焦がす帝政ロシアの士官候補生…

ジャン・ドラノワ『ノートルダムのせむし男(The hunchback of Notre Dame)』1956

『寄宿舎; 悲しみの天使(Les amities particulieres)』のジャン・ドラノワ監督作。ヴィクトル・ユゴーの『ノートルダム・ド・パリ』を原作とする、古き良き時代のフランス映画。せむし男を演ずるのはアンソニー・クインズ、エスメラルダを演ずるのはジーナ・…

アナトール・フランス『神々は渇く(Les Dieux ont Soif)』1912

時系で云えば、ジャコバン派の恐怖政治全盛から、テルミドール9日のクーデタ、ロベスピエール一派の処刑までを描く歴史小説。哲学的でありながら物語としても面白い。ノーベル文学賞作家の力量だろうか。 正義に燃える心を持つが故に人間性を喪う青年、エヴ…

20220313日記

「ブラームス室内楽マラソンコンサート」なるものに、東京オペラシティまで出かける。文字通りブラームスの室内楽曲を10時間聴き続けるというコンサート。玄人好みだ。 ピアノ三重奏曲第1番ロ長調ピアノ三重奏曲第2番ハ長調ピアノ三重奏曲第3番ハ短調ホルン…

レチフ『パリの夜; 革命下の民衆(Les Nuits de Paris)』1788-94

私はよき秩序の見張りでありたいと思う 18世紀末の小説家レチフ・ド・ラ・ブルトンヌ(Rétif de La Bretonne)の作。道徳や秩序を重んずる立場をとる作者が、大革命下の民衆社会に入り込み、ありのままを観察。その内容を聴き手に対して語るという形式のルポル…

ラヴェル『マ・メール・ロワ(Ma Mère l'Oye)』

oye(=oie)...ガチョウ要するに"Mother Goose"のこと。ラヴェルが英国の童話集『マザーグース』を題材に作曲した組曲。その管弦楽版。木管楽器の多彩な音が、いかにもラヴェル。若き日のチェリビダッケの指揮。 www.youtube.com ランキング参加中音楽

マーク・トウェイン『不思議な少年(The mysterious stranger)』未完成

正気の人間で幸福だなんてことはありえないんだよ。 『トム・ソーヤーの冒険』で名の知られているマーク・トウェイン(Mark Twain)晩年の作品。サーカズムとヒューマニズムを駆使して、人間の醜さ、卑小さを告発する。ペシミスティックな作品。彼は大したスト…