Mon Cœur Mis à Nu / 赤裸の心

「美」といふものは「藝術」と人間の靈魂の問題である

2023-11-01から1ヶ月間の記事一覧

20231130日記

Te rogamus audi nos<汝我等の願ひを聴容れ給へ> 晴れ、晩秋の肌寒さ。街路樹に殘る枯葉も稀である。仏蘭西に行く際、是非とも手に入れたい本がある。ジョゼフ・ド・メーストルの各書。 『フランスに関する考察(Considérations sur la France)』1796 『教皇…

再びダンディに就いて

晴れ。図書館で画集を借りた。レンブラント、ルーベンス、ワトー、ゴヤ、ドラクロワ、モロー。 ダンディ。冷血と尊大と自己統制の国、英国で生れた、ボウ・ブランメルを亀鑑とする不可思議な風流の教へ。仏国に於ては王政復古期、斯の教義が流入した後には、…

20231125日記

晴れ。秋闌けて折ふしの移らふも間近。 仏語学校へ行き、授業了りに友人とカフェでボオドレエルの『惡の華』に就きて卑陋なる識見を喋々した後(本当に耻しいのだが女性の前で黙込む訳にも行かぬ)、小石川の植物園を散歩する。メタセコイア、ラクウショウ、ナ…

夏目漱石『草枕』1906

余もこれから逢う人物を―百姓も、町人も、村役場の書記も、爺さんも婆さんも―悉く大自然の点景として描き出されたものと仮定して取りこなして見よう。 ある画工が都会を避け、田舎で「非人情(客観、芸術至上主義の意)」の世界に游ばんとする話。小説ではある…

夏目漱石『夢十夜』1908

『夢十夜』と『草枕』が話題に上つたから、先刻ジュンク堂で文庫版を買つて再読。 こんな夢を見た。 十夜の夢を綴る漱石の小品。『三四郎』、『それから』、『彼岸過迄』そして『こゝろ』。これら漱石の代表作は、云ふなれば心理小説。「明治」と云ふ特定の…

プーシキン『エヴゲーニイ・オネーギン(Евгений Онегин)』1832

いつものフランス料理店、隣のテーブルで夫人と5歳位の男の子とが会話をしてゐる。タイムマシンがあつたら、過去と未来のどちらへ行きたい? 男の子は迷はずに答へた、未来と。 プーシキンの韻文小説。一月に新国立劇場で、チャイコフスキーの『エフゲニー・…

シューマン「美しい五月に(Im wunderschönen Monat Mai)」『詩人の恋(Dichterliebe)』1840

www.youtube.com Im wunderschönen Monat Mai,五月てふ麗はしき月にAls alle Knospen sprangen,冬籠りの蕾咲き出づるDa ist in meinem Herzenそして我が胸裡にDie Liebe aufgegangen.ゆくりなく愛は灯りぬ Im wunderschönen Monat Mai,五月てふ麗はしき月にA…

20231113日記

晴れ。私は倖せである。何故なら私は、私個人の、内奥の進歩を信じてゐるから。 映画を観た。アラン・レネの『二十四時間の情事』。ヌーヴェルバーグ、強烈な個性の集まりを一語で括る事には躊躇ひがあるが、それでも矢張り、私は此の集団が好きである。 Som…

ボオドレエル「再びポオに就いて」覚書

藝術家は美に對する精妙な感性あればこそ藝術家なのである 詩人は、不正のない處に、斷じて不正を見ない。が、俗眼には何物も見えぬ處に、實に屢々不正を見るのである。 詩人の過󠄁敏性なるものは、凡俗の所謂氣質とは關係がない。それは缺陷、不正に對する異…

20231105日記

晴れ。昨日の付合ひで疲労し、今日は何もできなかつた。忌まはしい。 ・土曜日の荘厳司教ミサの曲はオルビス・ファクトールに決まつたと云ふ。de angelisやcum jubiloに比較して静的で優しく響くこのミサ曲を、私は好いてゐる。 ・クロード・ルルーシュの『…

20231103日記

晴れ、京都を訪ねる。七条ステーションは立錐の余地もない、逃げるやうにして市内へ向かふ。 烏丸蛸薬師の前田珈琲で朝食を取つた後、東洞院の仕立て屋をおとなふ。ダブルブレステッドのチェスターフィールドコートを註文。生地は伊太利製の黒無地、6つ釦2つ…