Mon Cœur Mis à Nu

「美」といふものは「藝術」と人間の靈魂の問題である

ベルトラン『夜のガスパール(Gaspard de la nuit)』1842

 

この稿本には、諧調と色彩のおそらくは新しい技法が數かずおさめてあるのです。

 

アロイジウス・ベルトラン(Aloysius Bertrand)による詩集。「散文詩」とはすなわち、無韻無脚でありながら詩的律動を感じさせる文章のことを言うが、ベルトランは『夜のガスパール』を以て、この「散文詩」というジャンルを確立した。苦悩の創造者に讃美。

『夜のガスパール』はサント=ブーヴの心を動かし、ボードレールを感嘆させた。もし彼が『夜のガスパール』に啓発を受けなければ、『パリの憂鬱』は書かれなかったろう。芸術とは連綿たる歴史であると思う。

而して私の所感。散文詩は難しい。私はリズムのない文章を上手く吞み込めない。大方の日本人は私と同様なのではなかろうか。我々の慣れ親しむ母国語が元来音楽性豊かな為かと思う。要再読。

 

藝術は常に正反對の二面を持つてゐる。例へば片面は著しくパウルレンブラントの風韻を伝へ、裏はジャーク・カローの趣をつたへるメダルのやうなものである。レンブラントは白髯の哲人、庵にこもつて瞑想と祈禱に思ひをひそめ、眼を閉ぢて三昧に入り、美や學や智慧や愛の諸靈と語らひ、自然界の幻妙な象徴に徹せんものと精根を涸らす。これにひきかへカローは法螺吹きで助平な野武士どの、街の廣場を肩であるき酒場にゐては亂痴氣さわぎ、ジプシー娘をかはいがり、誓の代は剱と銃、髯をみがくほかに屈托のない男。

 


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