Mon Cœur Mis à Nu / 赤裸の心

「美」といふものは「藝術」と人間の靈魂の問題である

2021-03-01から1ヶ月間の記事一覧

ラディゲ『ドルヂェル伯の舞踏会(Le bal du comte d’Orgel)』1924(堀口大學訳,1931)

20歳で夭折したレイモン・ラディゲ(Raymond Radiguet)の遺作。背景の描写は最低限に、恋愛心理の純粋な分析にページが割かれている点、ラ・ファイエット夫人の『クレーヴの奥方』を思わせる。文体の面にも硬質な古典主義を指摘することができる。 フランソワ…

『トスカ』第2幕 1964年 コヴェントガーデン

Maria Callas and Tito Gobbi at Covent Garden, 9.02.1964-Tosca, prod Franco Zeffirelli, atto II. マリア・カラスとティート・ゴッビ。文化遺産。

20210323日記

祖父に学位記を見せる。「貴方のお蔭です」と学位記を手渡したとき、祖父は「これが見たかった」と云って涙を流した。はじめて孝行ができたと思った。 夜、円山公園に桜を観る。やはりここの枝垂れ桜は一級であって、これをみなければ春を感ずること、とても…

三島由紀夫『金閣寺』の舞台探訪

ledilettante.hatenablog.com 以前立てた計画をそのまま実行した。私の卒業旅行を兼ねた、『金閣寺』の舞台探訪。京都駅から山陰本線を使い、綾部で舞鶴線に入る。西舞鶴からは、本来歩くべきところであるが(途中まで挑戦はした)、宮津線(宮舞線)に乗換。丹…

三島由紀夫『奔馬』1969

三島作品中、どれが最高傑作かと問われたらば、私は『奔馬』を挙げる。本作品に描かれているのは三島自身の感情の推移。最晩年の三島の夢と飯沼勲の夢とは一致するのではないか。此度で4度目の読了だろうか。『金閣寺』以来、三島文学を貫いてきた「行為」の…

20210310日記

四条大宮から嵐電に乗り、太秦広隆寺で降りる。拝観したかったが、門は締められていた。夜も更ける時間であった。北に向かう。山陰本線の高架下を潜って妙心寺まで来た。『金閣寺』に描かれる山門(三門)をみたかったからである。境内は静かで鐘の音だけが荘…

エルガー『チェロ協奏曲ホ短調』op.85

Elgar Cello Concerto Pierre Fournier Berlin Philharmonic Alfred Wallenstein (1966/2017) エドワード・エルガーが1918年に作曲したもの。悲劇的で胸を裂かれるような主題に惹かれる。紹介するのは私が気に入っているピエール・フルニエの録音。デュ・プ…

『金閣寺』に於ける溝口の出奔について(聖地巡礼?)

溝口が「金閣を焼かなければならぬ」という想念に搏たれた、舞鶴湾への出奔について。小説から読取れることを纏める。私の卒業旅行のため。 京都駅発敦賀行の列車「保津峡に沿うて走った」とあるから山陰本線に違いない。途中園部を経由。綾部駅での分岐を北…

三島由紀夫『金閣寺』1956

数日中に鹿苑寺を訪ねる積である。だから三島の『金閣寺』を読み直した。 「観念」に沈んでいた青年が、「金閣を焼く」という「行為」によって、生を得る。「行為」に重きを置く点、三島文学の真の始まりを思わせる作品だ。他にも健康に対する劣等感であった…