Mon Cœur Mis à Nu

But, darlings, the show must go on.

クロード・ルルーシュ『愛と哀しみのボレロ(Les Uns et les Autres)』1981

私は、クロード・ルルーシュの映画を愛することのできる人間を、愛したいと思う。 昨日のこと、6年ほど通って漸く言葉を交わすようになった寿司屋の主人に言われた。「いつもピシッとしてるんですね」。主人が6年間、私に対し「ピシッと」した人だという印象…

ジャン=リュック・ゴダール他『パリところどころ(Paris vu par...)』1965

炎天溽暑。晏起して昼食にはガスパチョとフロマージュ・ド・テートをグリビッシュソースで頂いた。 新宿青松園で和敬板を買ったあとで、神保町に最近できた「シネマリス(Cinemalice)」まで出かけた。しょうもない名前だが良い場所にある。古書肆街からほど近…

20260806日記_貧乏人のアスパラガス

この世には私たちが恐れているだけのもののほうが実際に私たちを押し潰すものよりも多く、私たちは事実よりも思い込みのために苦労することが多い セネカ『倫理書簡集』 晴、驟雨あり。悲観と厭世が愈々募り千憂散ずる方もなく途方に暮れているが、敢えて前…

メーテルランク『ペレアスとメリザンド(Pelléas et Mélisande)』1892

君よりも千倍も、僕を愛してくれるこの髪 かれらがついに合一をとげ得ないのは、充足が夢の本性に悖るからである グスタフ・レオンハルトによるバッハの旋律が、私の魂を高めて呉れた。音楽がこのまま私を彼方に連れ去ってくれたら。 帰宅後もあれこれと音楽…

ストローブ=ユイレ『アンナ・マグダレーナ・バッハの日記(Chronik der Anna Magdalena Bach)』1968

音楽は神を賛美し、魂を歓喜させるためにある。これを忘れた時、音楽は喧騒でしかない 『アンナ・マグダレーナ・バッハの日記』 ジャン=マリー・ストローブとダニエル・ユイレ両監督作。J.S.バッハの後妻、アンナ・マグダレーナ・バッハの伝記という形で、バ…

ロッセリーニ『ドイツ零年(Germania anno zero)』1948 / ゴダール『新ドイツ零年(llemagne année 90 neuf zéro)』1991

アメリカ人が音楽を殺した 『新ドイツ零年』 昨晩軽井沢から戻り、東京の暑さに改めて絶句した。だが東京の方が居心地は良い。軽井沢の奥座敷に別荘を構える上臈華紳は置いても、ホテルや表通りに居るプティ・ブルジョワの卑しさと言ったらない。 少し前に恋…

人間性

熊本地震の報に接して、TSMCの半導体工場の心配しかできない私は、もはや人間と呼ぶに値しない

保守主義とポピュリズムは異なるということ

要はトランプ前後の共和党の変化である。保守主義はポピュリズム的衝動に身を委ねた瞬間に、保守ならざるものへと転化していってしまう。保守主義者を名乗る者はスノッブであらねばならず、大衆を白眼視する余裕を持たなければならない。 米国務省は建国250…

黒澤明『乱』1985

『秘密の花園』(1993)があまりに俗悪であったため視聴を途中で止め、口直しに名作であることが「保証」されている映画を観たかった。 黒澤明監督作。『リア王』の翻案、英国のシェイクスピア映画さながらの人間ドラマ、人間性に対する何たる悲観主義。最期の…

イアン・ソフトリー『鳩の翼(The Wings of the Dove)』1997

lt was living like this that killed her 惨めな暮らしが母さんを殺した ヘンリー・ジェイムズ『鳩の翼』 炎天溽暑。帽子を被りたい、淑女に挨拶するに、それをおさえて一揖するためだけに。 あれは今年最初の蝉が鳴いた日の朝だったと思う。母が抗GBM病な…

20260702日記_新聞を読んで思うことなど

私は毎日、通勤のゆくさ、日本経済新聞と産経新聞を読んでいる。 昨日はW杯敗退のニュースが朝刊一面を飾った。感傷的な社説が癪に障った。特に鼻持ちならなかったのは、今大会を巡る韓国と中国の醜態・醜聞に対し、日本代表とサポーターを持ち上げるような…

20260630日記_美輪明宏の訃報に接して

美輪明宏の訃報は、他の著名人のそれとは一寸違った感慨を私に与えた。 別に彼のフアンでは無し、彼の書いた物を読むでも無し、彼の音楽を聴くでも無し、そもそもオカマは苦手である。だがそれでも、私は彼の人生を面白いと思い、wikipediaの関連記事を幾度…

フランコ・ゼフィレッリ『ロミオとジュリエット(Romeo and Juliet)』1968 

月毎に姿を変えるあの月に、あの浮気な月にかけて誓ってはなりません、 あなたの愛が月のように変わりやすくなるのはいやでございますもの。 シェイクスピア『ロメオとジュリエット』平井正穂訳 過日、シェイクスピア戯曲の翻訳で知られる小田島雄志氏の訃報…

20260620日記_雨後青山

雨。山法師が咲いている。今年の梅雨はいかにも梅雨らしい。私は本来の梅雨が好き。田の面に落ちる雨滴をうち眺め、その静寂を聞く喜び。それに雨後青山という言葉がある。長い苦悩を乗り越えた人間の心は洗練されより深みを増すという、仏の慰めを思い出す…

AIの正しい使い方

彼女への思いを散文で綴っていたのだが、読ませる相手も居ないのでAIに放り擲げてみた所、例に洩れず万感のflattering。「韻文に直しますか」と粋な提案を寄こして来たので、ならばシェイクスピア風にしてみよと指示した。応答は以下の通り。 It seems a mir…

独り言

美くしい事象に感動する心を有したまま死にたいと思う。天の国には魂を除いて何も持ってはいけないのだ。 忙しい。ボードレールが閑暇を貴重とした理由が分かる。忙殺される人間に芸術は不可能だ。 書生気分の抜けてきたのは良いことかも知れない。学生時代…

20260601日記_アストランティアの花言葉

あなたはあんなに私を仕合せにして下さる力がおありになるのに、めつたにその力をお使ひにならないのね。 三島由紀夫『春の雪』 さても恋愛とは恐るべき遊戯なるかな、この遊戯をする者の一方が、必ず自制の力を失わねばならぬとは。 シャルル・ボードレール…

スタンレー・ウォッシュバン『乃木大将と日本人(Nogi)』1913 目黒真澄訳

www.youtube.com 将軍は一切を甘受して何らの不平もない。生を重んずるのはただ、忠義と尊敬とを集中するその対象に奉仕せんがためであった。満身ただ忠誠、個人的存在を没却して、純理想主義に立脚する点において、近世誰あってこの日本の古武士乃木大将に…

20260517日記

戦略の本質とは自己のもつ手段の限界に見あった次元に、政策目標の水準をさげる政治的英知である。 永井陽之助 われら双方は各々の胸にある現実的なわきまえをもとに可能な解決策をとるよう努力すべきだ。 トゥキュディデス『戦史』アテナイからメーロスの使…

20260506日記

泣くのは今日までにする。強く雄々しく生きることだ。十字軍士の真摯さを以て世と再び対峙する。私は負けはしない、何故なら私は敗北が嫌いだからだ。 をのこやも 虚しかるべき萬代に 語り継ぐべき 名は立てずして

スタンリー・キューブリック『バリー・リンドン(Barry Lyndon)』1975

スタンリー・キューブリック監督作。パリ・カルチェラタンの小劇場での上映を見逃して以来、久しく見たかった作品。 舞台はジョージ三世時代の英国。ヘンデルのサラバンドと決闘の場面とによる幕開けが如何にも18世紀的。蝋燭の火だけを頼って撮影したという…

スティーブン・ダルドリー『リトル・ダンサー(Billy Elliot)』2000

スティーブン・ダルドリー監督作。イングランド北部の炭鉱夫の息子ビリー・エリオットがロイヤル・バレエのダンサーを目指す。 映画としては凡だと思うが、貧しい少年のサクセスストーリーに低評価を付ける気にはなれない。この映画における見所は、実は少年…

セルジオ・レオーネ『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・アメリカ(Once Upon a Time in America)』1984

人が恥というものを心得ている限り、過去を顧みるという行為は、必然的に痛みを伴う。それは恰も、一身において検屍官と切り刻まれるモルグの遺体、相反する役を同時に引き受けることである。因果に逼るほど苦しみは弥増す。だが二十世紀経済学が証明した通…

ロマン・ロラン(1866-1944)「ベートーヴェンの生涯(Vie de Beethoven)」『カイエ・ド・ラ・カンゼーヌ(Les Cahiers de la Quinzaine)』1903

「善くかつ高貴に行動する人間はただその事実だけに拠っても不幸を耐え得るものだということを私は証拠だてたいと願う」 ベートーヴェン 暦において穀雨を迎え、連日曇り模様だが、本日は清々しく晴れた。晏起して、行きつけのフランス料理店で食事をした後…

20260416日記_苦しみの玄義

www.youtube.com 次にブログを更新する時には、白衣の主日の祝詞と、過日、表参道のサロンで拝聴した黒木雪音女史のモーツアルト・ロンド kv.511に就いて、腹蔵なき賛美を書き連ねるのだらうと思つてゐた。 だがよく言はれてゐる通り、人の世は婉然と朝露の…

20260410日記_訪仏の事など

清明と同時に復活節を迎えている。今年はどうも桜に避けられた。過日の桜下茶会(趣向は伊勢物語)では、庭の枝垂れ桜は未だに蕾であったし、リラクタントな恋人(うんざりする)を伴って訪れた小石川植物園では、当然乍らソメイヨシノはとうに盛りを過ぎて…

復活祭

復活前晩、教会には行かず、聖書も紐解かず、寂しさ空しさを紛らわせたい一心で、Tinderを開いて只管に指をスワイプ。 心が麻の如く乱れ、頭の動きは鈍り、苦しい日々を過ごしている。 こういう時に軽挙に出てはならない事を、私は経験から学んでいるから、…

ロジャー・ミッシェル『ノッティングヒルの恋人(Notting Hill)』1999

彼岸西風が吹く季節、暦は進む。桜下茶会のために誂えた着物が仕上り、袴の十文字結びに難儀し乍らも、その着用の日を愉しみにしている素直な私が居る。 ロジャー・ミッシェル監督作。昔見た覚えがあったが、日記を遡って確認してみた所、ほんの2年前の出来…

20260311日記_春の都

一条戻橋の河津桜が咲き誇る頃に京都を訪れることが、毎年の恒例行事となっている。 ledilettante.hatenablog.com 旅には洋服の註文など季節の用事を済ます事以外にさしたる目的はなかったが、強いて言うなら目ぼしい黒楽茶碗を見つけたかった。 まず楽美術…

ジョー・ライト『ウィンストン・チャーチル ヒトラーから世界を救った男(Darkest Hour)』2017

ジョー・ライト監督作。ウィンストン・チャーチルが英国を対ナチ徹底抗戦へと導くまでのドラマを描く。 私はチャーチルを尊敬している。というのも、ブレッチリー・パークの情報戦(ウルトラ作戦)を指揮する冷然さであったり、早い段階からソ連の拡張主義に…