Mon Cœur Mis à Nu

「美」といふものは「藝術」と人間の靈魂の問題である

2024-01-01から1年間の記事一覧

20241213日記

晴、寒し。藝術愛好者が人間性を失ふてふアイロニー。 私は護国寺西の交叉点にゐた。上のはうから2人の男が歩いて来た。青年といふには弱弱しく、少年といふには逞しい感じがした。1人は盲か、目を病んでゐるらしく、もう1人を頼り、腕を組んで歩いてゐた。2…

20241210日記

晴。先の週末は久しぶりにゆつくりできた、昼餉のセルリ・ラーヴのポタージュは大変美味であつた。小石川植物園を訪問、知らぬ間に秋の終つて了つてゐたのには落胆した。仕事も落ち著ゐたので、今週金曜には汐留美術館に 'Paris and La belle Epoque' なる展…

信仰など持たぬはうが幸せになれる 信仰に基づく道義性の発露は、その人にとつての命取りとなる 私には当て嵌まらぬが、大抵の人には真である

梶井基次郎『檸檬』1925

曩日の天気、晴。用多し。ウェッジウッド社のアドヴェントカレンダーとシャツ用に中田ハンガーを購入。最後にゆつくりと惰眠を貪る休日を過ごしたのは、いつであつたらう。理想を云へば、黎明までベッドのうへで読書をし、15時くらいまで眠つてゐたい。自堕…

20241124日記

晴、寒し。荘厳に落ちて来る黄昏に反射して金色に耀くメタセコイア。それにツワブキにコダチダリア、この嬋娟たるクリザンテームらは、その花言葉に相応しき高貴なる色彩を晩秋のかなしさに添ふる。かうした美に惹かれての事であらうか、ここ数日の人手の多…

堀辰雄『美しい村』1934

陰のち晴、冷気。チェスターフィールドコートを着用して事務所に向ふ。文京の並木の木の葉が愈々秋色を深めてゐる。 仕事中に谷崎の『武州公秘話』と『少年』を読み、露悪趣味に疲れた私は、何か清澄な物語を読んで洗はれたいと思つた。私の脳裡に堀辰雄が浮…

20241112日記_保守主義とは何か

お馬鹿ちゃん!さあ、そんな突飛な空想は鎮めて、実際的に生きなさい。 晴、楓葉紅に染む。多忙也。読書の秋とはよく言つたもので、色々と読み返したい本が頭に浮かんで来る。書架から探し出し、ビューローのうへに置いてある。数ふるに15册を越ゆ。机上はひ…

20241110日記

20241109 晴、寒し。晏起。ツイードを着用。カテドラルで荘厳司教ミサ、過日枢機卿に任命されたと報道のあつた菊池大司教の司式。猊下に対する私の印象。まず談話が論理的である。司祭団の中にあつて、際立つてお話がお上手、聡明な御仁。そして教皇聖下に対…

20241104日記_Month of Remembrance

20241102 雨、萬霊節。仏蘭西料理店で昼餉、季節の野菜が美味。午刻疲労を推して所用を済ます、忌々し。 20241103 快晴。友人と新宿御苑を散策、秋色に染まつた篠懸並木は美くしいが、私の心はまづ群聚に愕ゐた、小石川の植物園を逍遥する時の斯の幽婉な心地…

物質への妄執。進歩の狂気。群居精神。伝統と個性の喪失。

20241031日記

晴、涼気、だがツイードを著る程ではない。アザミ、ハギ、スイフヨウが咲いてゐる。銀木犀も馥郁たる香を放つてゐる。良い時節になつた。不思議に思ふのはフヨウは夏の花ではなかつたか、渾沌たる気候の影響? 『君主論』が見つからない。これでも私は大学で…

ワーグナー『さすらひのオランダ人(Der fliegende Holländer)』1843 高木卓譯

苦難を経て星のもとへ(Per aspera ad astra)、神が恵みたまはんことを 『さまよへるオランダ人』楽譜の表紙にワーグナー記す 陰のち微雨。築地教会でミサ、王たるキリスト(Fête de Jésus Christ Roi)の一級祝日。プロテスタント気質の大学の友人を招く。キリ…

エリック・サティ「夜想曲第1番」『5つの夜想曲(Cinq nocturnes)』1919

www.youtube.com 晴れ、冷気。秋深まる。金木犀はもう散つて了つた、その儚さは櫻花の比ではない、それ故に私は金木犀を愛慕してゐるのだらうか?否、その香が、佳き季節の訪れを告げる知らせであるからだらう、イエズスの降誕にも似た慰めと喜びを齎す、深…

『元后あはれみの母/サルヴェ・レジーナ (Salve regina) 』羅和対訳

www.youtube.com 秋晴。長かつた夏の所為か、未だに曼殊沙華<リコリス>が咲いてゐる、紅と白に。紅茶葉の価格が高騰してゐる。これもまたインドの異常気象の所為だといふ、セイロンの擾乱も影響してゐよう。だが私の知つた事ではない、ディンブラにあるディ…

20241009日記

Odi Profanum Vulgus et Arceo <我ハ下賤ノ凡俗ヲ忌ム而シテ之ヲ隔絶ス> 女に會ひに行く?鞭を忘れるな! ニーチェ 微雨。女性の前で聲を荒げる失態。だが私が笞を振はずして、誰か彼女を矯正できよう?彼女を人間にして遣らねばならない、私にはその責任が…

ベッリーニ『夢遊病の女(La Sonnambula)』1831

www.youtube.com 好きな旋律。第一幕第四場より「あゝ言葉を見つけられたなら (Ah! Vorrei trovar parole!)」。公証人の前で婚姻届書に署名を了へたエルヴィーノとアミーナが、明日に結婚式を控へ、歓びに満ちて歌ふ。 薄陰、涼し。新国立劇場にて、珍らしい…

20240929日記

微雨のち陰、涼気。身体は疲れてゐるが約束のため早起き。洗濯と身支度とを済ませ、いつもの仏蘭西料理店で食事、本日は印象的な料理も会話もなかつたが、換言すればいつも通りの平安があつたと云ふ事だ。省線の水道橋驛で降りて友人と合流。神田教会で聖伝…

20240927日記

雨。時既に零時を回つてゐるので昨日の事になるが、私の守護聖人、即はち聖ヴァンサン・ド・ポールの記念日であつた。尤も私は日を跨ぐ迄気付かなかつたのであるが。私はこの聖人が好きだ。強き行動者、幼子に対する慈愛、彼の名を頂いた事を誇りに思つてゐ…

20240926日記

我が人生 神と芸術を賛美すること、人の期待に応ふること、而して強く美くしく生きること

20240923日記

22日、雨のち陰。友人と横濱の山手まで出掛ける。元町のフランス料理店で食事。京都の紅茶店に紹介頂いたMitsu Teaに立寄り、ウダの茶葉を購入。その後山手本通りを上がる。そぞろ歩きの人影もまばら。カトリック山手教会を見学、過不足のないゴシック様式の…

20240921日記

晴、後微雨。先日のさやけき十五夜は大層見事で、今や彼岸である。この頃は風に秋の匂ひを感ずる事も増えた。その為か心が弾む。実に調子が良い。 昼食の前菜、グリビッシュソースの添へられたテリーヌを提供された。「香りが良い」と私。一寸変はつた香辛料…

アンドレイ・タルコフスキー『ノスタルジア(Nostalghia)』1983

晴、溽暑。アンドレイ・タルコフスキー監督作、新文芸坐で鑑賞。幕引き後に聴こえたのは「意味が分らない」と云ふ声。だがそんな愚劣な理由で本映画に対し浅薄な評価を下す者は、抑々映画の観方を知らない。映画に於てストーリーはさして重要ではない。かの…

ダニエル・シュミット『季節のはざまで(Hors saison)』1992

晴、宵には涼しき風。先の週は精神の不調が甚しかつた。 ダニエル・シュミット監督作。スイス映画といふ括り。あざやかな色つかひ。おとぎばなしのやうな優しさ、私の病める魂を慰める、恍惚として画面に見入つて了つた。心地良い時間であつた。 それにして…

アラン・レネ『戦争は終わった(La guerre est finie)』1966

アラン・レネ監督作、曩日新文芸坐で鑑賞。アラン・レネにしては珍しく「訳分からない」事もない、ストーリーのある映画。フランコ体制下のスペインに反撥し、国外(フランス)で運動する共産主義者運動家の男の3日間を描く。時系列を無視して断片的に過去・…

20240816日記_送り火 

晴。炎暑乍ら夕べには松が枝を揺らす風が心地良い。処暑は近い。盂蘭盆なので京を訪うてゐる。識合ひをおとなひ、茶葉を買ひ、冬服の註文を済ませる。 今回註文したのは、秋冬用のハッキングジャケット。抑もスコットランドのツイードで本格的に仕立てさせる…

トルストイ『生ける屍(Живой труп)』1900

トルストイによる戯曲。1900年の執筆だが、上梓されたのは作家の死後、1910年の事。作家は本作の出来を良く思はなかつたらしい。挿絵は竹久夢二の『生ける屍』。 硬直的な宗教的道徳が、自然の情愛に生きんとする人々に強ひて罪悪を発見させると云ふ悲劇が描…

金子修介『1999年の夏休み』1988

金子修介監督作、『トーマの心臓』に着想を得て制作されたといふ、寄宿舎学校に学ぶ4人の少年の物語。 少年の役を少女に演じさせてゐるのは、制作陣のロリコン趣味かな。80年代、時恰もロリコン文化最盛期だから仕方がない。不自然だ、顔が女だもの。少年に…

クリスチャン・ド・シャロンジェ『銀行(L'Argent des autres)』1978

晴、灼熱溽蒸。夜には涼気。 ド・シャロンジェ監督作。ジャン=ルイ・トランティニャン、カトリーヌ・ドヌーヴが出演。第4回セザール賞最優秀作品。 銀行のスキャンダルのスケープゴートにされた男の反抗。メランコリックな音楽、暗澹とした雰囲気の中で、金…

アラン・レネ『プロビデンス(PROVIDENCE)』1977

Providence(摂理)。ジョゼフ・ド・メーストルを思ふ。 アラン・レネ監督作。第3回セザール賞最優秀作品。『ベニスに死す』のフォン・アッシェンバッハ、ダーク・ボガードが出演。王立演劇学校出の舞台役者達、英国映画さながらの美くしいReceived Pronounc…

20240728日記

晴、炎暑。聖霊降臨後第十主日を迎へてゐる。行きつけの仏蘭西料理屋で昼餉を済ませた後(デセールの無花果のコンポートが夏を思はせた)、神田教会へ。Orbis Factor。福音朗読箇所、ルカ傳18:9-14、私の聖書に下線が引いてある。 然るに取税人は遙に立ちて…