Mon Cœur Mis à Nu / 赤裸の心

「美」といふものは「藝術」と人間の靈魂の問題である

フランクル『夜と霧(Ein Psychologe erlebt das Konzentrationslager)』1946

死に至る病とは絶望のことである
                 キェルケゴール

著者ヴィクトール・フランクルは、ホロコーストを生き延びたオーストリアの心理学者。本書は、強制収容所に於いて限界状況にある人間の姿を、心理学的に記録したものである。人間はいと高き處に近付けるという確信。人間性の最低劣を目撃した筈の著者が語る「人間性への確信」には、感動を禁じ得ない。

面白く読んだのは、「元来精神的に高い生活をしていた感じ易い性質の人間が、屡々頑丈な身体の人々よりも収容所生活をよりよく耐え得た」というパラドックスについての説明。

内的な豊かさを具えた人間は、極限状況に於ても精神世界へと想いを馳せる事で、自らが未来に向かって、何かのために存在していると信ずる事ができた。即ち「絶望」に至る事が無かった。而して収容所に於て絶望とは生存放棄に他ならず、「死」そのものであったのだ。

何の生活目標ももはや眼前に見ず、何の生活内容ももたず、その生活において何の目的も認めない人は哀れである。彼の存在の意味は彼から消えてしまうのである。

私は耻かしい。何ら外的苦難に晒されず安逸な生活を送る事ができる現代社会に於て、一体どれだけの人間が自らの使命を神に問うているだろう。即ち真の意味に於て「存在」しているだろうか。

その一方で。褒むべき哉、生を賭して使命のため戦う者。こうした人々は現代社会に於いても存在する。その数は僅かかもしれないが。私は一カトリックとして断言できる。我等の信ずる神は汝等と偕に在る。

 

stone 約6.35kg、14ポンド。
parish 教区
manly 男らしい
fallacy 誤謬
Pharisees ファリサイ派
candid 意見の率直な
whence どこから
balsam バルサム樹、松脂など粘度の高い樹脂を出す樹木
gooey ねばねばした、感傷的な
ブラン・マルジェ 冷菓の一種。パンナコッタに似ている。