Mon Cœur Mis à Nu / 赤裸の心

「美」といふものは「藝術」と人間の靈魂の問題である

2021-11-01から1ヶ月間の記事一覧

ヘッセ『車輪の下(Unterm Rad)』1905

周囲の大人からの一方的な期待を背負い、機械的に応え続けてきた少年。最も感じやすい危険な少年時代を壓迫のうちに過ごした彼は、やがて心を壊す。彼は事故死した。しかしそれは偶然でなく、必然の死であったに違いない。 人間が長い生涯を生き抜くためには…

ゲーテ『若きウェルテルの悩み(Die Leiden des jungen Werthers)』1774

愛してはならぬ女を愛して、苦しむウェルテル。ロマン派時代の、人間の自我への目覚めを、この一青年の懊悩を通してみることができる。 不徳な描写もあるはあるが、牧歌的、道徳的な雰囲気。そう、健全なのだ。健全な若さ故、情熱を持つが故の苦悩。ウェルテ…

ワイルド『ドリアン・グレイの肖像(The Picture of Dorian Gray)』1890

本作品は退廃的な哲学を完成させる為の書にあらず、むしろ倫理的な側面が強いように思われる。肖像画はドリアン・グレイの良心、物語の結末が示すのは、モラルの勝利に他ならない。そういう意味で本作は、『サロメ』ではなく、『幸せな王子』と同じ系譜にあ…

20211122日記

東山を北から南へ、法然院から南禅寺まで。雨であったのが却って良かった。静かな午前、散歩を心置きなく愉しめた。順正で昼餉。向いの席には日本髪をしたうら若き4人の娘。舞妓さんだろうか?その装いの趣味の良さ(安着物の観光客とは好個の対照!)と、立居…

20211117日記

晴れ、暖かい。六義園へ行く。何てことはない。こんなものを有難がる東京の人間は馬鹿だと思う。 怯懦(きょうだ) 臆病で気の弱いこと爾余(じよ) それ以外端倪(たんげい) 物事の成行を見通すこと「端倪すべからざる」=推し量れないほどの大童(おおわらわ) な…

堀洋一『ボウ・ブランメル(Beau Brummell)』1979

生涯が美しくあるためには、その最期は悲惨でなければならない オスカーワイルド 牧神社上梓。ボウ・ブランメルの伝記。ちょっとした服飾史を兼ねている。ブランメルのパブリック・スクール時代から、その栄華の極みとカーン(Caen)での客死でを纏める。以下…

ロベール・ブレッソン『田舎司祭の日記(Journal d'un curé de campagne)』1951

ロベール・ブレッソン(Robert Bresson)監督作。原作はジョルジュ・ベルナトスの同名小説。早稲田松竹で観賞。 フランス北部の小さな村に赴任した若い司祭。信仰が形骸化する時代。村人からは受け容れられず、信仰への確信も揺らぎ煩悶しつつも、彼は神と向き…

生田耕作『ダンディズム 栄光と悲惨』1995

中央公論新社。底本は1975年に他社から上梓された評論。典雅の士ジョージ・ブランメルのアネクドートを持ち出して、ダンディズムを問う著者は、「ダンディズム」の不文律2ヶ條を導き出す。 一、立居振舞、衣服など、個人の外観を特徴づけるすべてのものに、…

セシェ, ベルトゥ『ボードレールの生涯(La vie anecdotique et pittoresque de Charles Baudelaire)』1925

アルフォンス・セシェ(Alphonse Séché) とジュル・ベルトゥ(Jules Bertaut)の共著に成る。近代の霊魂の癒し得ぬ悲痛を詠んだ詩人、ボードレールの伝記。原著の初版は1925年頃であり、その後の研究から訂正されるべき箇所も多く在るだろうが、ボードレールが…