Mon Cœur Mis à Nu / 赤裸の心

「美」といふものは「藝術」と人間の靈魂の問題である

Films/Dramas

濱口竜介『ドライブ・マイ・カー』2021

濱口竜介監督作。村上春樹の2014年の同名小説が原作。アカデミー賞国際長編映画賞はじめ、国際的に高い評価を受けた。 「意識高い系フランス映画」の不肖の弟子みたいな印象。意味深長を気取り、のっぺりとした進行にするのであれば、アラン・レネのように音…

黑澤明『生きる』1952

近々、黑澤明監督『生きる』のリメイク作品が上映される。カズオ・イシグロの脚本で、英国を舞台にした物語になるという。 本作品観賞中は、日本固有の、済度し難い不変の世相を見ている気分になる。しかし黒澤が作品中で痛烈な非難を浴びせる「死に際に後悔…

『銀河英雄伝説 わが征くは星の大海』1988

神の母聖マリアの祝日に、4Kリマスター版を池袋東宝で観賞。 4Kリマスターにすることで何がどう変わったのか、芸術的な向上はあるのか、正直よく分からない。徳間書店の商業主義の産物なんだろうなと思いつつも、やはり名作を大画面大音量で観賞できるという…

タルコフスキー『サクリファイス(Offret)』1986

本日は待降節第3主日、「喜び(Gaudete)の主日」。神父様は薔薇色のストラをまとう。入祭唱ではVeni, veni, Emmanuelが歌われた。 ledilettante.hatenablog.com 静謐な美を湛えたアンドレイ・タルコフスキー監督最期の作品。マタイ受難曲に始まり、終る。Vati…

市村崑『こころ』1955

市村崑監督作。夏目漱石の『こゝろ』が原作、森雅之が先生、安井昌二が私、新珠三千代がお嬢さん。やけに芝居臭い演出と思ったが批評家の受けは良かったそう。確かに、先生の遺書の場面になってからは面白かった。だが襖を開けるシーンは絶対に2度必要であっ…

メル・ギブソン『パッション(The passion of the Christ)』2004

メル・ギブソン監督作。キリストの受難を描く。全編アラム語とラテン語による、吹替版は監督の意向で作成されていない。サタンの登場以外は、共観福音書に極めて忠実であるように思われる。 世の人の救いのため、自らの尊き命を捧げ給うイエズス。笞打たれ血…

ヴィスコンティ『山猫(Il Gattopardo)』1963

ルキノ・ヴィスコンティ監督作。カンヌでパルム・ドール。俳優はバート・ランカスター、アラン・ドロン、クラウディナ・カルディナーレら、ヴィスコンティ作品にお馴染みの顔ぶれ。 教養と秩序、正統美。これぞ芸術。バチカンの推薦を受けるのも宜なる哉。こ…

アイヴォリー『上海の伯爵夫人(The White Countess)』2005

ジェームズ・アイヴォリー監督作。映画のためにカズオ・イシグロが脚本を書きおろした。題名からして白系ロシア人の話だろうなと思い、久しく気になっていた。 妻と子を亡くし、半ば自暴自棄の生活を送る米国人外交官(レイフ・ファインズ)は、異国の地、上海…

ヴィスコンティ『地獄に堕ちた勇者ども(The damned)』1969

ルキノ・ヴィスコンティ監督作。 製鉄一族である男爵家。当主が殺害されequibiliumの崩れた一家の、醜い権力闘争を描く。デカダンな風俗描写がその醜さを際立たせるが、この至高の腐敗に、美を見出す人もいるのだろう。渋澤龍彦氏あたりは歓びそうだ。 私が…

モーリス・クロシュ『聖バンサン(Monsieur Vincent)』1947

本日は聖ビンセンチオ・ア・パウロ司祭の記念日。ミサには行けなかったが、1947年のフランス映画『聖バンサン』を観て、彼に思いを致すことにした。 モーリス・クロシュ監督作。クロード・ルノワール撮影。幾つか映画賞を受賞した古典的作品であり、1995年ヨ…

ゴダール『カルメンという名の女(Prénom Carmen)』1983

ジャン=リュック・ゴダールが死んだ。まだ生きていたことに愕いた。あとヌーヴェルバーグで存命なのはクロード・ルルーシュくらい? 私は一時期フランス映画に凝っていた。だからゴダールの作品は少なからず観た。否、「フランス映画好き」を名乗る為に、観ざ…

市川崑『細雪』1983

市川崑監督作。吉永小百合が雪子を演ずる。 女優陣が大変美しい。『細雪』はみたび映画化されているが、本作は筋書きも雰囲気も、最も原作に沿ったものになっているのではないか。幸子の夫である貞之助を、どうして女好きの遊び人に描いたのか、その意味は理…

市川崑『炎上』1958

『犬神家の一族』(1976)の市川崑監督。京都大映の制作。音楽は後にオペラ『金閣寺』を作曲する黛敏郎。 三島由紀夫の『金閣寺』を原作とする。題名が『炎上』、寺の名前が「驟閣寺」となっているのは、映像化にあたり京都仏教界の反対を受けたからだそう。境…

オリバー・パーカー『ドリアン・グレイ(Doriangray)』2009

オリバー・パーカー(Oliver Parker)監督作。オスカー・ワイルドの『ドリアン・グレイの肖像』を原作としているが、オリジナルの要素が強い。本作はこれまで何度か映画化されているから、変化を付けたかったのだろう。ちなみにパーカーは、同じくワイルドの喜…

チャールズ・スターリッジ『天使も許さぬ恋ゆえに(Where angels fear to tread)』1991

フォースターの小説『天使も踏むも恐れるところ(Where angels fear to tread)』を原案とする映画。チャールズ・スターリッジ(Charles Sturridge)監督作。他のフォースターの小説同様、異なる人間が互いを理解する可能性と困難とを描いているが、本作にみられ…

リンゼイ・アンダーソン『If もしも....(If....)』1968

リンゼイ・アンダーソン(Lindsay Anderson)監督作。1969年のカンヌでパルム・ドール。時計じかけのオレンジでアレックスを演ずるマルコム・マクダウェルのデビュー作、本作でも似たような役だ。パブリックスクールの伝統に抑圧された少年達の反抗を描く。 英…

アイヴォリー『モーリス(Maurice)』1987

ジェームズ・アイヴォリー監督作。ヴェネツィアで銀獅子。ソドミー法が健在であった頃の英国、ケンブリッジで出会った2人の青年は、禁じられた恋をする。 アイヴォリーを賞賛すればよいのか、フォースターを讃えればよいのか判らぬが、階級、宗教、性に根差…

アイヴォリー『ハワーズ・エンド(Howards End)』1992

『眺めのいい部屋』、『モーリス』に続き、フォースターの小説を原作とする、ジェームズ・アイヴォリー(James Ivory)監督映画。アイヴォリーは、実力あると判断した英国俳優を繰返し起用するのかな。本作でマーガレットを演じたエマ・トンプソン、ヘンリーを…

リドリー・スコット『決闘者(The Duellists)』1977

リドリー・スコット(Ridley Scott)監督作。彼の怪奇趣味は通俗的。功績を認められ、Sir.の称号を與えられた人物に対する無学な私の評価など、傍痛いだけであるのだが、私としては映像も音楽も鑑賞に堪えない。古典的教養の裏付けを感じられず、悪趣味さばか…

ロマン・ポランスキー『オフィサー・アンド・スパイ(J'accuse)』2019

仕事終わりに池袋のシネマで。 『戦場のピアニスト』、『マクベス』のロマン・ポランスキー(Roman Polanski)監督作。ヴェネツィアで銀獅子。映画祭で上映後はスタンディングオヴェーションを受けたとか。 19世紀末フランスのドレフュス事件を題材とする。原…

アイヴォリー『眺めのいい部屋(A room with a view)』1986

『日の名残り(The remains of the day)』のジェームズ・アイヴォリー(James Ivory)監督作。原作はエドワード・フォースターの同名小説。 O mio babbino caro! プッチーニ、ベートーヴェン、シューベルト、モーツァルトが使われている。見事な映像美、アイヴ…

坂東玉三郎『外科室』1991

五代目 坂東玉三郎氏の監督。原作は泉鏡花の同名小説。 ledilettante.hatenablog.com こんなに美くしいことがあるか。90年代に於て比類に絶する美くしき映画。美を表現するに言葉は多く要らぬと、納得せしめらる。伯爵夫人の高峰を見初めし時、閉じられた雙…

サルヴァトーレ・サンペリ『エルネスト(Ernesto)』1979

サルヴァトーレ・サンペリ(Salvatore Samperi)監督作。同性愛が主題の映画。年端のいかぬ少年の、己の性的指向を判断しかねる話か。少年の苦悩を映している訳ではなく、寧ろ少年は周囲の人間を惑わす悪魔。話に深遠さはなく、映像的な美しさもない。主人公が…

泉鏡花『海城発電』1896

短篇小説。鏡花が描く非日常の世界に、読者は数頁のうちに取込まれる。 軍人が捕虜となった後帰還した赤十字の看護員を尋問する。軍人は、支那兵相手に立派に己が職務を全うしてきた看護員を、非愛国的、国家の観念が欠如していると責めるが、看護員は意にも…

アラン・レネ『二十四時間の情事(Hiroshima mon amour)』1959

ヌーヴェル・バーグの「左岸派」、アラン・レネ監督作。フランス語を話す岡田英次が恰好良い。 私の愛する映画、三本の指に入れてもよい。1959年にして、英国や米国のそれと異なる、「フランス映画」の確立を知らしめる先駆的作品。フランス映画、それは即ち…

アラン・レネ『去年マリエンバートで(L'Année dernière à Marienbad)』1961

ヌーヴェル・ヴァーグ主流のカイエ派に対し、左岸派を代表する、アラン・レネ(Alain Resnais)監督による作品。ヴェネツィアで金獅子賞。ちなみにカンヌ国際映画祭は、レネの左翼的な政治的見解を理由に、本作品の上映を拒否した。 登場人物はみな名が伏せら…

アンジェイ・ワイダ『ダントン(Danton)』1983

アンジェイ・ワイダ(Andrzej Wajda)監督によるフランス・ポーランド合作の伝記映画。時は大革命期、ロベスピエールによる恐怖政治の最中、ダントン処刑までの数週間を描く。配給はフランスのゴーモン社。セザール賞を受賞。 なんとも特徴的なのは、演者たち…

ニキータ・ミハルコフ『シベリアの理髪師(The Barber of Siberia)』1998

ニキータ・ミハルコフ(Никита Михалков)監督作のロシア映画。云うまでもなくロッシーニの某オペラと掛けている。皇帝アレクサンドルⅢ世による観兵式のシーンが有名で、ずっと観たかった。90年代は意外と名作が多い。 情熱に身を焦がす帝政ロシアの士官候補生…

ジャン・ドラノワ『ノートルダムのせむし男(The hunchback of Notre Dame)』1956

『寄宿舎; 悲しみの天使(Les amities particulieres)』のジャン・ドラノワ監督作。ヴィクトル・ユゴーの『ノートルダム・ド・パリ』を原作とする、古き良き時代のフランス映画。せむし男を演ずるのはアンソニー・クインズ、エスメラルダを演ずるのはジーナ・…

『刑事フォイル』SE02

EP01 Fifty ships容疑者の所属する組織、持てる影響力、何を動員することが可能かなどに気を配ること。定量的に物事を判断すること。 EP02 Among a few犯人しか知り得ない事実は何かを把握すること。 EP03 War Games今日も推理を当てた。事件を紐解く鍵はEp0…