『犬神家の一族』(1976)の市川崑監督。京都大映の制作。音楽は後にオペラ『金閣寺』を作曲する黛敏郎。
三島由紀夫の『金閣寺』を原作とする。題名が『炎上』、寺の名前が「驟閣寺」となっているのは、映像化にあたり京都仏教界の反対を受けたからだそう。境内の撮影も金閣寺の撮影許可が下りなかった為か知らぬが、大覚寺で行われている。
歴とした芸術作品に違いないが、原作とは根本的に論点が異なることに言及したい。
原作の主題は「観念」と「行動」の二律背反にある。しかし映画で焦点となっているのは、溝口の「永遠の美に対する崇拝」及び「承認の欲求」。原作に於てこれらは副次的な意味しか持たない。換言すれば、原作は映画よりも抽象であり、深遠であるのだ。
尤も、映画とは第一次義的に「大衆向け」の「娯楽」である。そのために内容を容易にしたかったのだろう。
古し京都でロケ撮影を行った映画をたくさん知りたい。上の写真は京都駅とみて間違いなかろうか?