Mon Cœur Mis à Nu

「美」といふものは「藝術」と人間の靈魂の問題である

アイヴォリー『ハワーズ・エンド(Howards End)』1992

眺めのいい部屋』、『モーリス』に続き、フォースターの小説を原作とする、ジェームズ・アイヴォリー(James Ivory)監督映画。
アイヴォリーは、実力あると判断した英国俳優を繰返し起用するのかな。
本作でマーガレットを演じたエマ・トンプソン、ヘンリーを演じたアンソニー・ホプキンスは、翌年の『日の名残り』に本作同様主役級として出演。他にも、ヘレナ・ボナム=カーターは『眺めのいい部屋』に、ジェームズ・ウィルビーは『モーリス』に、ヴァネッサ・レッドグレーヴは『上海の伯爵夫人』にそれぞれ起用されている。

美くしい別荘地ハワーズ・エンドをめぐる凄惨なドラマ。
あの人は年に何ポンド稼ぐとか、家賃は幾らとか、遺言書はどうとか、更には不倫、離婚、堕胎など。こうした題材を好んで用いるのは、英国の物語の特徴と云えるだろう。夢に逃れ得ない人間の悲哀をしみじみと感じさせるのは、かような現実主義的描写によるのかもしれない。

なおベートーヴェンの第5番がテーマとして用いられている。第3楽章である点がポイント高い。