Mon Cœur Mis à Nu / 赤裸の心

「美」といふものは「藝術」と人間の靈魂の問題である

『銀河英雄伝説 わが征くは星の大海』1988

神の母聖マリアの祝日に、4Kリマスター版を池袋東宝で観賞。

4Kリマスターにすることで何がどう変わったのか、芸術的な向上はあるのか、正直よく分からない。徳間書店の商業主義の産物なんだろうなと思いつつも、やはり名作を大画面大音量で観賞できるという誘惑には抗えず。35年前のアニメーションである。劇場には中高年の(神経質そうな)紳士ばかり。

私はアニメーションをあまり観ない。香具師に劣らず無学な輩が無理して小難しい話を喋々しているのを見ると、怖気がするから。無論総てがそうだとは言わぬし、私如きに見下げられては、アニメーションも気の毒だ。アニメーションは今や、日本という斜陽国家を支えるソフト・パワーである。

そんな私だが『銀河英雄伝説』は好きである。百何篇あるアニメーションを、何度観直したか判らない。BGM感覚である。一体何が『銀河英雄伝説』を特別にしているのか。

まず、『銀河英雄伝説』には原作小説が存在するのであるが、該博な著者の史観・政治理論が散りばめられた、深遠な「文芸作品」としての性格を強調するためか、アニメーションに於てはアニメアニメした演出の一切が排されている。その結果、観賞者としては吹替洋画を観ているような心持になる。

更に、背景音楽にはワーグナーマーラーはじめ、厖大な種類のクラシック音楽(ドイツ・シャルプラッテンの録音)が使用されているのであるが、これが場面に応じて見事に使い分けされている。製作陣は余程クラシック音楽に造詣が深いのだろうと思う。

他にも色々要因はあるのだが、結論、製作陣の神経質な完璧主義(私はこれをダンディズムと呼ぼう)が、本アニメーションを芸術たらしめているため、私は『銀河英雄伝説』が好きなのだ。

 

本作と云えば、ニールセンの第4交響曲第4部アレグロである。

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