Mon Cœur Mis à Nu

「美」といふものは「藝術」と人間の靈魂の問題である

モーリス・クロシュ『聖バンサン(Monsieur Vincent)』1947

本日は聖ビンセンチオ・ア・パウロ司祭の記念日。ミサには行けなかったが、1947年のフランス映画『聖バンサン』を観て、彼に思いを致すことにした。

モーリス・クロシュ監督作。クロード・ルノワール撮影。幾つか映画賞を受賞した古典的作品であり、1995年ヨハネ・パウロ二世教皇台下のもとで認可された「バチカン映画リスト」にも名を連ねている。

聖ヴァンサンはガスコニーの豊かな農家(生家には6つのベッドルームがあったという)に生れる。親の意向もあり、「下層階級の立身出世の手段」として、教会でのキャリアを志したらしい。『赤と黒』のジュリアンを思い出す。

学問を修めた後、史実としては怪しいが北アフリカに奴隷として売られる。フランスに戻ってからはヴァロワ家のチャプレン、ゴンディ家の家庭教師、聴罪司祭を務めながら、上流社会の人脈を広げた。

やがて彼は築いた人脈を活かして、貧しい者たちへの献身的奉仕をはじめる。今日まで存続するラザリスト会や愛徳修道女会を創立するなど、その生涯のすべてを以て貧しさに仕えた。

軽佻浮薄な現代社会に於ては、「チャリティー」と称しながら、その実際は偽善、道楽、虚栄的行為であることが往々である。しかし聖ヴァンサン・ド・ポールの生き方は私たちに伝える。「チャリティー」とは如何に忍耐を要する困難なものであるかを。

 

さて、私は特別この聖人、ヴァンサン・ド・ポールに親しみを覚え、崇敬している。
聖ヴァンサンは神の栄光を証しするに、弁舌に拠らず、行動でそれを為した。
また聖ヴァンサンが時にみせる峻厳さは、宮で笞搏つキリストのそれである。
つまるところ、彼は「男らしい」。そこが魅力なのだ。