Mon Cœur Mis à Nu / 赤裸の心

「美」といふものは「藝術」と人間の靈魂の問題である

アイヴォリー『上海の伯爵夫人(The White Countess)』2005

ジェームズ・アイヴォリー監督作。映画のためにカズオ・イシグロが脚本を書きおろした。題名からし白系ロシア人の話だろうなと思い、久しく気になっていた。

妻と子を亡くし、半ば自暴自棄の生活を送る米国人外交官(レイフ・ファインズ)は、異国の地、上海でバーを開くことを夢みていた(『カサブランカ』を彷彿とさせる)。彼は或る時、ロシア革命から逃れ、同じい上海でホステスをしていた伯爵夫人(ナターシャ・リチャードソン)と出逢い、説得の上、彼のバー "The white countess" の華とすることに成功したが。

予算が掛かっているだけあり、見応えはある。『ハワーズ・エンド』の倍、『眺めのいい部屋』の5倍。しかし興行収入は此れ等に遠く及ばなかった。「興行的に成功した映画が名作」とは言わないが、本作に於て言えば、観客の評価は正しかろう。

全体的にキレが悪い。冗漫な風俗描写が蛇足になっている。音楽が煩くて俳優の声が聞こえない。脚本もベタ。僭越ながらアドヴァイスを申し上げれば、上海居残り組を全員空襲で爆死させていれば、話が締まったと思う。無論こんなことすれば"Rotten Tomatoes"で笞刑に処せられたろうが。

俳優陣の演技は素晴らしかった。ナターシャ・リチャードソンという女優、聞きなれぬ名であるが、なんと彼女はグラナダ・ホームズに出演している。

この写真で判った。面影がなくて気付かなかったが、"The copper beeches"の令嬢だ。紺碧のドレスを着ていた。

あと不満を述べると、日本兵が中国人にしかみえない点か。洋画あるあるだが。