Mon Cœur Mis à Nu / 赤裸の心

「美」といふものは「藝術」と人間の靈魂の問題である

2021-01-01から1年間の記事一覧

バタイユ『マダム・エドワルダ(Madame Edwarda)』1941

筋らしい筋のない、ヌーヴォー・ロマンの先行作品というべきもの。男と娼婦の、啓示的な一夜の物語。バタイユは、『聖なる神』という総題のもと、エロティシズムを主題とした三部作を構想していた。本作はその第一部である。 快楽と苦痛、すなわち性と死は根…

コッポラ『タッカー(Tucker: The Man and His Dream)』1988

『ゴッドファーザー』シリーズのフランシス・フォード・コッポラ監督。第二次世界大戦後のアメリカに実在した、スタートアップの自動車メーカー「タッカー社」が、革新的なアイデアと実行力で優れた車を生み出すも、成果を妬む大手に潰されるという話。古き…

ユイスマンス『さかしま(A Rebours)』1884

物語は断片的で、殆どは主人公デ・ゼッサントの芸術論。文学、絵画、室内装飾、花、香水等、多岐にわたって彼のダンディズムが披露される。悍ましいブルジョワ社会から逃れて人工的耽美の世界に沈んだデ・ゼッサント。しかしそれにも嫌気が差すと、彼は漠と…

20210501日記

2021.05.01青蓮院門跡の楠を見た。親鸞が植えたものと書いてあるが眉唾物。服を作りに四条まで出かける。 2021.05.02行きつけの紅茶屋に寄り、お決まりの散歩道をゆく。南禅寺から禅林寺、若王子神社、安楽寺、法然院を経て慈照寺に至る。高度に洗練されたル…

コクトー『恐るべき子供たち(Les enfants terribles)』1929

ジャン・コクトー(Jean Cocteau)は生涯3作の小説を遺しているが、『恐るべき子供たち』が代表作といってよい。阿片中毒の治療中に僅か17日で書き上げたらしい。感傷的なラストシーンがあまり好きではない。混乱を混乱のままに書いている印象。少年たちの心理…

ブリテン「入祭唱(Procession)」『キャロルの祭典』

www.youtube.com 『キャロルの祭典』の入祭唱。グレゴリオ聖歌"Hodie Christus natus est" と旋律を共有。宗教曲のソプラノは少年合唱団に任せるに限る、それが不安定であろうと。 Hodie Christus natus est:今日、キリストがうまれた hodie Salvator apparu…

川端康成『古都』の舞台探訪(1)

ledilettante.hatenablog.com 以前『金閣寺』でやったのと同じことを、川端の『古都』でやろうという試み。京都市内で完結する。 東山方面千重子と真一が、平安神宮に枝垂れ桜を見に行く。その後、京の町の夕暮れをみるため、清水へ向かう。・平安神宮・南禅…

フローベール『ボヴァリー夫人(Madame Bovary)』1857

レアリスムの大作。ロマン的な夢を抱くエンマ・ボヴァリーは、平凡な現実の中で夢を1つ1つ喪い、遂には身を滅ぼす。汚い現実描写が精緻である。殊にエンマが死にゆく様の描写=装飾のない執拗な穢れの描写には驚いた。死を飾り立てるロマン主義との違いを感じ…

ラディゲ『肉体の悪魔(Le diable au corps)』1923

レイモン・ラディゲが16~18歳の間に書かれた小説。すこぶる皮肉な調子で、戦時下の少年の恋愛を描く。少年のエゴイズムに振り回されて女性が破滅を迎えるというストーリーは、コンスタンの『アドルフ』を思わせる。

20210411日記

漱石山房記念館訪問。4年来の希望が適って嬉しい、大した見世物はなかったが。

予備自衛官補採用試験について

変わり種だが、その内容をメモしておく。内容は面接、筆記、身体検査。正確に記憶している訳ではないので、参考程度に。 面接について名前及び受験番号志望動機どれくらいの期間務める予定か親族、保護者の同意は得ているか訓練に参加できるかスポーツの経験…

ラディゲ『ドルヂェル伯の舞踏会(Le bal du comte d’Orgel)』1924(堀口大學訳,1931)

20歳で夭折したレイモン・ラディゲ(Raymond Radiguet)の遺作。背景の描写は最低限に、恋愛心理の純粋な分析にページが割かれている点、ラ・ファイエット夫人の『クレーヴの奥方』を思わせる。文体の面にも硬質な古典主義を指摘することができる。 フランソワ…

『トスカ』第2幕 1964年 コヴェントガーデン

Maria Callas and Tito Gobbi at Covent Garden, 9.02.1964-Tosca, prod Franco Zeffirelli, atto II. マリア・カラスとティート・ゴッビ。文化遺産。

20210323日記

祖父に学位記を見せる。「貴方のお蔭です」と学位記を手渡したとき、祖父は「これが見たかった」と云って涙を流した。はじめて孝行ができたと思った。 夜、円山公園に桜を観る。やはりここの枝垂れ桜は一級であって、これをみなければ春を感ずること、とても…

三島由紀夫『金閣寺』の舞台探訪

ledilettante.hatenablog.com 以前立てた計画をそのまま実行した。私の卒業旅行を兼ねた、『金閣寺』の舞台探訪。京都駅から山陰本線を使い、綾部で舞鶴線に入る。西舞鶴からは、本来歩くべきところであるが(途中まで挑戦はした)、宮津線(宮舞線)に乗換。丹…

三島由紀夫『奔馬』1969

三島作品中、どれが最高傑作かと問われたらば、私は『奔馬』を挙げる。本作品に描かれているのは三島自身の感情の推移。最晩年の三島の夢と飯沼勲の夢とは一致するのではないか。此度で4度目の読了だろうか。『金閣寺』以来、三島文学を貫いてきた「行為」の…

20210310日記

四条大宮から嵐電に乗り、太秦広隆寺で降りる。拝観したかったが、門は締められていた。夜も更ける時間であった。北に向かう。山陰本線の高架下を潜って妙心寺まで来た。『金閣寺』に描かれる山門(三門)をみたかったからである。境内は静かで鐘の音だけが荘…

エルガー『チェロ協奏曲ホ短調』op.85

Elgar Cello Concerto Pierre Fournier Berlin Philharmonic Alfred Wallenstein (1966/2017) エドワード・エルガーが1918年に作曲したもの。悲劇的で胸を裂かれるような主題に惹かれる。紹介するのは私が気に入っているピエール・フルニエの録音。デュ・プ…

『金閣寺』に於ける溝口の出奔について(聖地巡礼?)

溝口が「金閣を焼かなければならぬ」という想念に搏たれた、舞鶴湾への出奔について。小説から読取れることを纏める。私の卒業旅行のため。 京都駅発敦賀行の列車「保津峡に沿うて走った」とあるから山陰本線に違いない。途中園部を経由。綾部駅での分岐を北…

三島由紀夫『金閣寺』1956

数日中に鹿苑寺を訪ねる積である。だから三島の『金閣寺』を読み直した。 「観念」に沈んでいた青年が、「金閣を焼く」という「行為」によって、生を得る。「行為」に重きを置く点、三島文学の真の始まりを思わせる作品だ。他にも健康に対する劣等感であった…

シャトーブリアン『アタラ(Atala)』1801

『アタラ』は作者の目論見から『キリスト教精髄』に先んじて発表されたが、翌年同書第3部第6篇として組入れられた。本作には作者がアメリカ大陸に渡り得た見聞が描写されており、そのエキゾチズムが評判を呼んだ。ヨーロッパ諸国では翻訳が相次いだという。 …

シャトーブリアン『ルネ(René)』1802

『キリスト教精髄』の第二部第四編(「情熱の空漠性について(Du vague des passions)」にある挿話。一般的には「世紀病」を表現した典型的な作品と看做されている。欲望が抑圧された結果として生じた孤独、憂愁、厭世に代表されるルネの魂は、シャトーブリア…

シューベルト『野薔薇』D257

云わずと知れたシューベルトのリート。日本では近藤朔風の訳詩が有名。また『細雪』の下巻では、大垣から蒲郡へ向かう列車の中で、陸軍士官の唄うのにつれて、みながこの曲を合唱するシーンが描かれている。 童は見たり 野中の薔薇きよらに咲ける その色愛で…

バッハ『パルティータ第2番ニ短調』BMV1004よりシャコンヌ

ヤッシャ・ハイフェッツ(Yasha Heifetz)よりも優れたヴァイオリニストというのは、ありえないのではないだろうか。D-minorからD-majorへの転調。太陽の輝き。

20210221日記

修学院の方へ散歩。鷺森神社の境内を歩くとほのかに香る白梅に気が付いた。そのまま曼殊院を目指したが、かなりの山道で難儀した。途中武田薬品の薬用植物園を見つけた。なかに洋館(田辺貞吉旧邸というらしい)もみえたので見物したかったが、原則一般公開は…

20210219日記

枚方国際ゴルフ倶楽部 total72 +6 +3 △ +4 +3 - +6 +3 +3 △ +5 ▢ ▢ +3 ▢ ▢ +3 +4 OUT 65 IN 60 TOTAL 125

20210217日記

関西の魅力はその多極性にある。京都、大阪、神戸といった中心都市とその周辺都市が各々歴史と文化を持っていて、且つ重要なことに、そこに住む人々がそれを誇りに思っている。云わば、関西の人々は生活にこだわりを持っている。

ロラン『ベートーヴェンの生涯(Vie de Beethoven)』1902

ロランが「心に拠って偉大であった」と崇敬する、作曲家L.V.ベートーヴェンの伝記。英雄への渇望を雄弁に物語る。但しロランはベートーヴェンに対する「信仰と愛との証」により、作品中彼を美化していることを認めている。不幸で貧しく孤独であったベートー…

コンスタン『アドルフ(Adolphe)』1816

人妻に手を出した青年(=語り手)の話。青年は深刻なペシミズムに冒されているが、これはフランス革命後の世紀病に冒された作者コンスタン自身の反映である。近代心理小説の先駆と名高い。世の常の「恋愛小説」のような情熱がみられるのは3章まで、残りの章(こ…

Wir setzen uns mit Tränen nieder und rufen dir im Grabe zu, Ruhe sanfte, sanfte ruh'! 私たちは涙を流し、ひざまずいて、墓の中にいる貴方に呼掛けます、安らかにお休みください、安らかに。