ロランが「心に拠って偉大であった」と崇敬する、作曲家L.V.ベートーヴェンの伝記。英雄への渇望を雄弁に物語る。但しロランはベートーヴェンに対する「信仰と愛との証」により、作品中彼を美化していることを認めている。
不幸で貧しく孤独であったベートーヴェン。世の中から「歓喜」を拒まれた彼であったが、その人間がみずから「歓喜」を造り出し、世界への贈り物とした。作者が称えるのは、この勝利である。
Durch Leiden Freude.
苦悩を抜けて歓喜に到れ
ロマン・ロラン(Romain Rolland), 1866-1944
集団や時代、さらには人類総体を視野におさめた歴史を描き、社会に対して1つの指針を占めそうとする作品は「大河小説(roman-fleuve)」と呼ばれる。ロランは代表作『ジャン=クリストフ』により、この先駆をなした。1915年にノーベル文学賞を受賞。