Mon Cœur Mis à Nu / 赤裸の心

「美」といふものは「藝術」と人間の靈魂の問題である

2022-01-01から1年間の記事一覧

チャールズ・スターリッジ『天使も許さぬ恋ゆえに(Where angels fear to tread)』1991

フォースターの小説『天使も踏むも恐れるところ(Where angels fear to tread)』を原案とする映画。チャールズ・スターリッジ(Charles Sturridge)監督作。他のフォースターの小説同様、異なる人間が互いを理解する可能性と困難とを描いているが、本作にみられ…

リンゼイ・アンダーソン『If もしも....(If....)』1968

リンゼイ・アンダーソン(Lindsay Anderson)監督作。1969年のカンヌでパルム・ドール。時計じかけのオレンジでアレックスを演ずるマルコム・マクダウェルのデビュー作、本作でも似たような役だ。パブリックスクールの伝統に抑圧された少年達の反抗を描く。 英…

アイヴォリー『モーリス(Maurice)』1987

ジェームズ・アイヴォリー監督作。ヴェネツィアで銀獅子。ソドミー法が健在であった頃の英国、ケンブリッジで出会った2人の青年は、禁じられた恋をする。 アイヴォリーを賞賛すればよいのか、フォースターを讃えればよいのか判らぬが、階級、宗教、性に根差…

アイヴォリー『ハワーズ・エンド(Howards End)』1992

『眺めのいい部屋』、『モーリス』に続き、フォースターの小説を原作とする、ジェームズ・アイヴォリー(James Ivory)監督映画。アイヴォリーは、実力あると判断した英国俳優を繰返し起用するのかな。本作でマーガレットを演じたエマ・トンプソン、ヘンリーを…

リドリー・スコット『決闘者(The Duellists)』1977

リドリー・スコット(Ridley Scott)監督作。彼の怪奇趣味は通俗的。功績を認められ、Sir.の称号を與えられた人物に対する無学な私の評価など、傍痛いだけであるのだが、私としては映像も音楽も鑑賞に堪えない。古典的教養の裏付けを感じられず、悪趣味さばか…

ゴーチエ『ある夜のクレオパトラ(Une nuit de Cléopâtre)』1838

画家や音楽家ほどめぐまれない、われわれ文筆の徒は、対象をひとつひとつ書いてゆくより仕方がないのだ。 テオフィル・ゴーチエの中短篇。我々には想像のつかない、古代エジプト、プトレマイオス朝の幻想的奢侈を、見えるものとして描き出す。女性崇拝の書。…

フォーレ「贈物(Les Présents)」『2つの歌(2 Mélodies)より』op.46-1, 1887

www.youtube.com 数あるフォーレの歌曲の1つである。詩はヴィリエ・ド・リラダンのもの。『残酷物語』に集録される「恋の物語」の第3篇、「贈物」が出典。「恋の物語」に集録されている7篇の詩は、恋愛の眩惑、歓び、苦悩、そして忘却に至るまでをうたうので…

澁澤龍彦『ジル・ド・レエ候の肖像』1961

ド・レエ男爵の為人や、ティフォージュの居城で冒した罪そのものを記した書にあらず。むしろ時代背景など、ド・レエ男爵の周辺に、記述は集中している。ド・レエ男爵の一代記が読みたければ、脚色はあれど、ユイスマンスの『彼方』の方がよほど良い。 ledile…

ゴーチエ『オンファール(Omphale: A Rococo Story)』1834

若き日の恋をむしかえしたり、昨日見た薔薇を見直しにいったりするものではない。 短篇小説。壁布に描かれたオンファール(エルメスからヘラクレスを買い取った小アジアの女王)。この絵は、T侯爵夫人にオンファールの服装をあしらったものであった。彼女は夜…

ユルスナール『アレクシス あるいは空しい戦いについて(Alexis ou le Traité du vain combat)』1929

私が悔恨を覚えずにはいられなかったもの、それは自分の犯した過ちではなく、自分が自分の手で却けた喜びの可能性だった。 マルグリット・ユルスナール(Marguerite Yourcenar)が最初に発表した小説。主題を同性愛の問題に置いているのであるが、直接に言及は…

ウェーバー「狩人の合唱(Jägerchor)」『魔弾の射手(Der Freischütz)』より, 1821

www.youtube.com 『魔弾の射手』第三幕にあるコーラス。残念ながら私はドイツ語を少しも解さない。Ich spreche kein Deutsch. Was gleicht wohl auf Erden dem Jägervergnügen,Wem sprudelt der Becher des Lebens so reich?Beim Klange der Hörner im Grüne…

ドビュッシー『ペレアスとメリザンド(Pelléas et Mélisande)』1902

本日新国立劇場まで出掛けて鑑賞。クロード・ドビュッシーが完成させた唯一のオペラ。台本はメーテルランクの同名戯曲殆どそのまま。明確に異なるのは、私が確認した限り、メリザンドが窓辺に坐り、髪を櫛りながらうたう歌くらい(出典は何だろう?)。 ledilet…

20220703日記

曇り、暑い。やや朝寝坊、少し遅れてミサに与る。いつものフランス料理屋へ。マダムが御病気になられたとか。全快を願って已まない。ヴァイオリンのレッスンの後、伊勢丹へ。マダムに贈る見舞の品を物色、購入。他に用はないのですぐ帰宅。マーラーの交響曲…

リラダン『イシス(Isis)』第一部 1862

あなたがあの女の中で愛していらっしゃるものは、実はあなたの願望の実体なのです。『未来のイヴ』 ヴィリエが二十四の時の作品。第二部以下は原稿が失われたのか、未完に終わったのか不明。かのボードレールがこの書について賞賛を送ったことが判っているが…

20220620日記_恋愛とは

恐らく「恋愛」は生物学者にとって<粘膜の問題>に過ぎず、「女性」は蕩児にとって快楽の道具に過ぎず、「結婚」は西欧の政治家にとって人的資源の向上に過ぎまい。併しながら詩人にとって女性とは、「完璧」の幻であり、恋愛とは「祈禱」であり、婚礼とは「…

ロマン・ポランスキー『オフィサー・アンド・スパイ(J'accuse)』2019

仕事終わりに池袋のシネマで。 『戦場のピアニスト』、『マクベス』のロマン・ポランスキー(Roman Polanski)監督作。ヴェネツィアで銀獅子。映画祭で上映後はスタンディングオヴェーションを受けたとか。 19世紀末フランスのドレフュス事件を題材とする。原…

20220611日記

いつものフランス料理屋、が混んでいて入れなかったので、近くのイタリア旗亭へ。食事後東京オペラシティまで音楽会に出かける。シューマンの第3番と第4番。式は飯守氏、細かい指示を与えているのか、手の震えが止まらないのか。御年の所為か、譜面を捲るの…

ベックフォード『ヴァテック(Vathek)』1782

ウィリアム・トマス・ベックフォード(William Thomas Beckford)作。1782年に仏語で執筆され、1786年に上梓された。22,3歳の頃、3日2晩をかけて不眠不休で書き上げたと作者は嘯いている豪語するが、真偽のほどは。 本作はゴシック小説の金字塔と名高い。異常…

リラダン『残酷物語(Contes cruels)』1883、その2

ledilettante.hatenablog.com ledilettante.hatenablog.com マーラーの第7番を聴きながら、『残酷物語』再読。「ヴェラ」や「サンチマンタリスム」、「見知らぬ女」など気に入っている小品は幾度となく読み返しているのであるが、この度は全体を通して。 『…

メーテルランク『ペレアスとメリザンド(Pelléas et Mélisande)』1892 

来る7月新国立劇場でドビュッシーのオペラ『ペレアスとメリザンド』の上演がある。その豫習として杉本秀太郎氏による譯で読んだ。 モーリス・メーテルランク(Maurice Maeterlinck)伯爵の戯曲。ベルギー人の劇作家である彼は、絶対体な力に支配される人間の運…

アナトール・フランス『赤い百合(Le Lys rouge )』1894

行動や思考に原理がない(面倒くさい)気まぐれ女の情事。エリック・ロメールの映画みたいだと感じた。というのは登場人物がとりとめもなく、種々の事柄について己の哲学を披露する、そんなうざい場面の連続であるから。軟弱な翻譯も災いして、読むのが大変に…

ベートーヴェン『ピアノ協奏曲第3番ハ短調』

www.youtube.com ベートーヴァンのピアノ協奏曲を3曲通して聴いた。 第1番: 古典的ながらもベートーヴェンらしい雄大さを感じる。第2番. 全体を通して明朗快活、第1番よりも古典的だと誰もが思う。そのはずで、書かれたのはこちらが先だ。第3番: ドミソファ…

フランス民謡『フレール・ジャック(Frère Jacques)』

www.youtube.com 輪唱形式で歌われるフランスに起源を持つ童謡。トムとジェリーでニブルスが歌っていた曲! 寝坊した修道士(Frère)が謡われている。 Frère Jacques, Frère Jacques,修道士ジャック、Dormez-vous? Dormez-vous?お眠りですか?Sonnez les matines…

ブルフィンチ『中世騎士物語(The Age of Chivalry)』1858

19世紀アメリカの作家トマス・ブルフィンチ(Thomas Bulfinch)。彼は無教養なアメリカ人の為、英国はじめヨーロッパの神話や伝承、文学を、平易な文章に直して紹介した。そのひとつThe Age of Chivalryは、アーサー王と円卓の騎士を中心に扱ったもの。 アーサ…

20220514日記

いつものフランス料理屋で食事した後、バラを観に音羽まで出掛けた。連日の雨で幾らか色褪せてしまってはいたが、何も花が美くしいのはその盛りの時期に限ったことではない。「花は盛りに、月は隈無きをのみ見るものかは」と。帰宅後、マーラーの第1番と第5…

マーラー『交響曲第6番 イ短調』1904

www.youtube.com 短調にはじまり短調に綴じられる古典的な構成。「悲劇的」という副題で知られるが、第3楽章まではむしろ溌剌とした英雄の印象を受ける、cheerfulとでも名付けたい程に。しかし第4楽章における音楽の沈み方は、ベートーヴェンが生み出してブ…

ドールヴィイ『デ・トゥーシュの騎士(Le Chevalier Des Touches)』1864

バルベイ・ドールヴィイらしい「語り」による物語小説。 ledilettante.hatenablog.com バルベイの故郷ノルマンディー、大革命の時代が舞台。 実在するふくろう党(レ・シュワン)の騎士ジャック・デトゥーシュ(Jacques Destouches de La Fresnay)の英雄譚に着…

サン=サーンス『序奏とロンド・カプリチオーソ(Introduction et Rondo capriccioso)』1863

www.youtube.com サン=サーンス作曲、サラサーテに献呈。ルイ・マルの『さよなら子供たち(Au revoir les enfants)』の中に、『チャップリンの移民(The immigrant)』を観賞する場面がある。映画はサイレントであるから、背景音楽として、ギリシア語教師がこの…

20220504日記

はじめて男娼を買う。

ワーグナー『交響曲ハ長調』1832

www.youtube.com ワーグナーが唯一完成させた交響曲。私はこの曲を面白いと思う。溌剌としていて色彩豊か。ドラマティック。深みがないとも云える。だがもっと演奏機会があって良いと思う。 ランキング参加中音楽