2022-01-01から1年間の記事一覧
フォースターの小説『天使も踏むも恐れるところ(Where angels fear to tread)』を原案とする映画。チャールズ・スターリッジ(Charles Sturridge)監督作。他のフォースターの小説同様、異なる人間が互いを理解する可能性と困難とを描いているが、本作にみられ…
リンゼイ・アンダーソン(Lindsay Anderson)監督作。1969年のカンヌでパルム・ドール。時計じかけのオレンジでアレックスを演ずるマルコム・マクダウェルのデビュー作、本作でも似たような役だ。パブリックスクールの伝統に抑圧された少年達の反抗を描く。 英…
ジェームズ・アイヴォリー監督作。ヴェネツィアで銀獅子。ソドミー法が健在であった頃の英国、ケンブリッジで出会った2人の青年は、禁じられた恋をする。 アイヴォリーを賞賛すればよいのか、フォースターを讃えればよいのか判らぬが、階級、宗教、性に根差…
『眺めのいい部屋』、『モーリス』に続き、フォースターの小説を原作とする、ジェームズ・アイヴォリー(James Ivory)監督映画。アイヴォリーは、実力あると判断した英国俳優を繰返し起用するのかな。本作でマーガレットを演じたエマ・トンプソン、ヘンリーを…
リドリー・スコット(Ridley Scott)監督作。彼の怪奇趣味は通俗的。功績を認められ、Sir.の称号を與えられた人物に対する無学な私の評価など、傍痛いだけであるのだが、私としては映像も音楽も鑑賞に堪えない。古典的教養の裏付けを感じられず、悪趣味さばか…
画家や音楽家ほどめぐまれない、われわれ文筆の徒は、対象をひとつひとつ書いてゆくより仕方がないのだ。 テオフィル・ゴーチエの中短篇。我々には想像のつかない、古代エジプト、プトレマイオス朝の幻想的奢侈を、見えるものとして描き出す。女性崇拝の書。…
www.youtube.com 数あるフォーレの歌曲の1つである。詩はヴィリエ・ド・リラダンのもの。『残酷物語』に集録される「恋の物語」の第3篇、「贈物」が出典。「恋の物語」に集録されている7篇の詩は、恋愛の眩惑、歓び、苦悩、そして忘却に至るまでをうたうので…
ド・レエ男爵の為人や、ティフォージュの居城で冒した罪そのものを記した書にあらず。むしろ時代背景など、ド・レエ男爵の周辺に、記述は集中している。ド・レエ男爵の一代記が読みたければ、脚色はあれど、ユイスマンスの『彼方』の方がよほど良い。 ledile…
若き日の恋をむしかえしたり、昨日見た薔薇を見直しにいったりするものではない。 短篇小説。壁布に描かれたオンファール(エルメスからヘラクレスを買い取った小アジアの女王)。この絵は、T侯爵夫人にオンファールの服装をあしらったものであった。彼女は夜…
私が悔恨を覚えずにはいられなかったもの、それは自分の犯した過ちではなく、自分が自分の手で却けた喜びの可能性だった。 マルグリット・ユルスナール(Marguerite Yourcenar)が最初に発表した小説。主題を同性愛の問題に置いているのであるが、直接に言及は…
www.youtube.com 『魔弾の射手』第三幕にあるコーラス。残念ながら私はドイツ語を少しも解さない。Ich spreche kein Deutsch. Was gleicht wohl auf Erden dem Jägervergnügen,Wem sprudelt der Becher des Lebens so reich?Beim Klange der Hörner im Grüne…
本日新国立劇場まで出掛けて鑑賞。クロード・ドビュッシーが完成させた唯一のオペラ。台本はメーテルランクの同名戯曲殆どそのまま。明確に異なるのは、私が確認した限り、メリザンドが窓辺に坐り、髪を櫛りながらうたう歌くらい(出典は何だろう?)。 ledilet…
曇り、暑い。やや朝寝坊、少し遅れてミサに与る。いつものフランス料理屋へ。マダムが御病気になられたとか。全快を願って已まない。ヴァイオリンのレッスンの後、伊勢丹へ。マダムに贈る見舞の品を物色、購入。他に用はないのですぐ帰宅。マーラーの交響曲…
あなたがあの女の中で愛していらっしゃるものは、実はあなたの願望の実体なのです。『未来のイヴ』 ヴィリエが二十四の時の作品。第二部以下は原稿が失われたのか、未完に終わったのか不明。かのボードレールがこの書について賞賛を送ったことが判っているが…
恐らく「恋愛」は生物学者にとって<粘膜の問題>に過ぎず、「女性」は蕩児にとって快楽の道具に過ぎず、「結婚」は西欧の政治家にとって人的資源の向上に過ぎまい。併しながら詩人にとって女性とは、「完璧」の幻であり、恋愛とは「祈禱」であり、婚礼とは「…
仕事終わりに池袋のシネマで。 『戦場のピアニスト』、『マクベス』のロマン・ポランスキー(Roman Polanski)監督作。ヴェネツィアで銀獅子。映画祭で上映後はスタンディングオヴェーションを受けたとか。 19世紀末フランスのドレフュス事件を題材とする。原…
いつものフランス料理屋、が混んでいて入れなかったので、近くのイタリア旗亭へ。食事後東京オペラシティまで音楽会に出かける。シューマンの第3番と第4番。式は飯守氏、細かい指示を与えているのか、手の震えが止まらないのか。御年の所為か、譜面を捲るの…
ウィリアム・トマス・ベックフォード(William Thomas Beckford)作。1782年に仏語で執筆され、1786年に上梓された。22,3歳の頃、3日2晩をかけて不眠不休で書き上げたと作者は嘯いている豪語するが、真偽のほどは。 本作はゴシック小説の金字塔と名高い。異常…
ledilettante.hatenablog.com ledilettante.hatenablog.com マーラーの第7番を聴きながら、『残酷物語』再読。「ヴェラ」や「サンチマンタリスム」、「見知らぬ女」など気に入っている小品は幾度となく読み返しているのであるが、この度は全体を通して。 『…
来る7月新国立劇場でドビュッシーのオペラ『ペレアスとメリザンド』の上演がある。その豫習として杉本秀太郎氏による譯で読んだ。 モーリス・メーテルランク(Maurice Maeterlinck)伯爵の戯曲。ベルギー人の劇作家である彼は、絶対体な力に支配される人間の運…
行動や思考に原理がない(面倒くさい)気まぐれ女の情事。エリック・ロメールの映画みたいだと感じた。というのは登場人物がとりとめもなく、種々の事柄について己の哲学を披露する、そんなうざい場面の連続であるから。軟弱な翻譯も災いして、読むのが大変に…
www.youtube.com ベートーヴァンのピアノ協奏曲を3曲通して聴いた。 第1番: 古典的ながらもベートーヴェンらしい雄大さを感じる。第2番. 全体を通して明朗快活、第1番よりも古典的だと誰もが思う。そのはずで、書かれたのはこちらが先だ。第3番: ドミソファ…
www.youtube.com 輪唱形式で歌われるフランスに起源を持つ童謡。トムとジェリーでニブルスが歌っていた曲! 寝坊した修道士(Frère)が謡われている。 Frère Jacques, Frère Jacques,修道士ジャック、Dormez-vous? Dormez-vous?お眠りですか?Sonnez les matines…
19世紀アメリカの作家トマス・ブルフィンチ(Thomas Bulfinch)。彼は無教養なアメリカ人の為、英国はじめヨーロッパの神話や伝承、文学を、平易な文章に直して紹介した。そのひとつThe Age of Chivalryは、アーサー王と円卓の騎士を中心に扱ったもの。 アーサ…
いつものフランス料理屋で食事した後、バラを観に音羽まで出掛けた。連日の雨で幾らか色褪せてしまってはいたが、何も花が美くしいのはその盛りの時期に限ったことではない。「花は盛りに、月は隈無きをのみ見るものかは」と。帰宅後、マーラーの第1番と第5…
www.youtube.com 短調にはじまり短調に綴じられる古典的な構成。「悲劇的」という副題で知られるが、第3楽章まではむしろ溌剌とした英雄の印象を受ける、cheerfulとでも名付けたい程に。しかし第4楽章における音楽の沈み方は、ベートーヴェンが生み出してブ…
バルベイ・ドールヴィイらしい「語り」による物語小説。 ledilettante.hatenablog.com バルベイの故郷ノルマンディー、大革命の時代が舞台。 実在するふくろう党(レ・シュワン)の騎士ジャック・デトゥーシュ(Jacques Destouches de La Fresnay)の英雄譚に着…
www.youtube.com サン=サーンス作曲、サラサーテに献呈。ルイ・マルの『さよなら子供たち(Au revoir les enfants)』の中に、『チャップリンの移民(The immigrant)』を観賞する場面がある。映画はサイレントであるから、背景音楽として、ギリシア語教師がこの…
はじめて男娼を買う。
www.youtube.com ワーグナーが唯一完成させた交響曲。私はこの曲を面白いと思う。溌剌としていて色彩豊か。ドラマティック。深みがないとも云える。だがもっと演奏機会があって良いと思う。 ランキング参加中音楽