"Music in Nazi Germany"なるDeutsche Welleのドキュメンタリー。「おすすめ動画」として出て来たので視聴。フルトヴェングラー、ワーグナー、ユダヤ人、バイロイト、アウシュヴィッツ=ビルケナウ。話を敷衍した割に、Music is immortalと云ふ漠たる結論で了はつてゐるのは学問として下等だと思ふ。それでも綺麗な復元映像が私の目を愉しませたので、視聴の甲斐はあつた。
ナチス政権下、フルトヴェングラーがドイツに残留した事を以て(帝国音楽院副総裁を一時的乍ら務めた)、彼を讒言する者が居る。彼の"moral degeneration"だと、窮めて失礼な事を云ふ輩も居る。私はそれを不当に感じてゐた。このドキュメンタリーが私と同じ立場を取つてゐる事を嬉しく思ふ。
彼はドイツの芸術家だ。真の芸術家が世俗の悲惨に囚はれる事はないのだ。彼は暗澹たる可限世界に在つて、嚠喨たる無限の音楽を創造し続けた。ベートーヴェンにも比肩する英雄ではないか。アメリカに亡命し、叡智もなければ魂もない成上り者共のまへに立ち、三流オーケストラの指揮をする? 斯やうな事は不可能であつたに違ひない。
私はヒットラーが羨ましい。フルトヴェングラーがバイロイトで指揮するワーグナー、恐らくワーグナー自身の構想に最も適合する演奏を、一等席で聴く機会に恵まれたのだから。私は思ふ、ヒットラーはこの一事を以て、彼の野望を完遂したのではないか。
他、小ネタとして面白く思つたのは、ヒットラー生誕祭のイヴにはベートーヴェン第九の演奏会があつたと云ふ事。ワーグナー家とヒットラーとの間に、家族のやうな親交があつたと云ふ事。