此の頃の憂鬱を紛らはさむと、金曜はバガボンドで、土曜はНаднеで、そして日曜はどん底で飲んだ。だが効験はなかつた。酒に酔へたらどんなに良いだらうと思はぬでもないが、陶酔から覚める瞬間を味はふのはより怕しい。
この憂鬱は、私が感ずる惨めさに起因してゐる事疑ひない。宗教の無い世界。廃頽の一途を辿る文明と人心の低下とを私は認識してゐるのだが、その裡に生活して、屈辱を味はふより遣る方のない己が、惨めで仕方ないのである。
つまるところ、私は今一番悪い考へに陥つてゐる。すなはち、悪に絶望してゐる。この悪は必要悪であるといふ、ライプニッツ流の神義論を信ずる気が興らない。私は迷走してゐる。主よ、我を見出し給へ。主よ、願はくは不肖なる我が身を、御身の食卓へと招き入れさせ給へ。