Mon Cœur Mis à Nu / 赤裸の心

「美」といふものは「藝術」と人間の靈魂の問題である

クリストファー・ハンプトン『キャリントン(Carrington)』1995

クリストファー・ハンプトン監督作、Progressiveな映画。ブルームズベリー・グループの作家、リットン・ストレッチーとその恋人(かう呼んで差し支へないと信ずる)、エマ・トンプソン演ずるドーラ・キャリントン、並びに周辺人物との関係を描く。どうしたら彼、彼女らのやうに、熾烈に肉を覓め、互ひに執着できるのだらう。三島由紀夫の『仮面の告白』後半を読む時と同じい虚しさを覚えた。

 

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ブルームズベリー・クラブ。大学で歴史を学んでゐた私は、このグループの存在をまつたく意外な所から、即ち英国の外交官、サー・ハロルド・ニコルソンを通して知つたのだつた。因みにヴァージニア・ウルフの著作は手にとつた事すらない。

 

イングランドの夏が羨ましくなつた。私は堪らなくなつて、ハリソンズ・オブ・エディンブラのメルソレアで仕立てた麻のスーツを着てこれを視聴したのだ。笑つてくれて良い。

 

管弦による背景音楽が美くしい。シューベルトも使はれてゐるが、多くは映画オリジナルのもので、マイケル・ナイマンの作曲。ベートベンの悲痛な後期カルテット(当時それは疑ひやうもなくprogressiveであつた)を思はせる。彼はパトリス・ルコントの『仕立て屋の恋』や『髪結ひの亭主』にも音楽を提供してゐるやうで、私の気に入るのも宜なる事だと思つた。

 

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