Mon Cœur Mis à Nu / 赤裸の心

「美」といふものは「藝術」と人間の靈魂の問題である

クリストフ・オノレ『Winter boy(Le Lycéen)』2022

 

クリストフ・オノレ監督作。新文芸坐で鑑賞。オノレは指揮者の大野和士氏と交遊があるやうで、彼の依頼により幾つかオペラ演出も手掛けてゐる。

 

During the play, I wondered to get up and walk away several times. 同性愛描写がきつい、宗教を悪し様に描く。さういふ訳で私には歪んだ評価しかできぬ。

 

What a mundane film. The insufferable fatigues of idleness!「世の流行に媚びれるだけ媚びてみました」と云ふ印象。同性愛者の少年が、父を亡くし、巴里に出て、黒人に恋し、失恋し、自殺未遂を起し、失語症になり、黒人の行動により恢復する。信仰なき、魂に於る「弱者」の、瑣末な「ドラマ」である。これに高評価を与へる人間が多数派であると云ふ現実がおぞましい。

一点、constructive criticismを申し上げる。英題"Winter boy"ママの邦題に就いては、オリジナルの直訳『或る高校生』とした方が、ドラマの本質を捉へると云ふ観点から遙かに良い。

 

エス彼處にては、何の能力ある業をも行ひ給ふこと能はず、(...)彼らの信仰なきを怪しみ給へり(マルコ傳6:4-6)

 

映画と云ふ領域に於る美の喪失は、近年愈々著しいやうに思ふ。だが信仰なき處に印の生ぜぬ如く、芸術を理解せぬ世に美が生じないのは、当然の事であらう。