Mon Cœur Mis à Nu

But, darlings, the show must go on.

2025-01-01から1年間の記事一覧

20251228日記_パリ逗留の近況

性懲りも無く、クリスマスから公現祭までを厳冬のパリで過ごしている。理屈が分からないが、今年のパリはロンドンは疎かベルリンよりも寒く、体に堪える。吝嗇し過ぎた宿、長すぎる旅程にうんざりするのは毎度だが、不思議なことに帰国後にはこれら不快な記…

『われらはきたりぬ(We Three Kings of Orient Are)』1857

気づかぬうちに待降節に入り、無原罪の御宿りの祝日も終り、喜びの主日(Gaudete)を迎えようとしている。意識を向けるためにアドベントカレンダーを用意すべきだったと反省している。次の主日ではVeni, veni, Emmanuelが歌われるかも知れないし、教会に行こう…

20251127日記_晩秋の名残

晴、朔風払葉(きたかぜこのはをはらう)の候が言う通り、街路のイチョウが黄葉をしきりに振払う。その落つる木の葉に、晩秋の淡い陽光が当たって金色に輝く様は大層美くしく、うっとりとしてしまう。と同時に、私が一年で最も愛する季節が終わってしまうこ…

20251121日記_虹蔵れて見えず

www.youtube.com 晴、仕事を終えて、恋人と夕食を共にする。イタリアン。レストランから歩いて初台のオペラシティへ。紀尾井室内管弦楽団の定演、ブラームスの交響曲第一番を鑑賞。夢に見た恋人とのコンサートだというのに、私の心は高鳴らない。演奏自体も…

20251120日記_昭南島にて

18日、終日働いた後に羽田を発ち、ラウンジで頂いたシャンパンでほろ酔い状態とは言えエコノミークラスで眠れる筈もなく、19日の早朝シンガポールに到着。そのままサミット会場のホテルで、ひねもす銀行家・投資家と会合・社交。普段は触れ合うことのない人…

20251117日記_われふかき淵より汝をよべり

晴、菊が最期の色を添える晩秋の小石川植物園を逍遥。柔らかい陽光を受けて輝く金色の落葉を踏みしめると、何とも神秘的な音が。尤も、私の心は穏やかではない。 上野にある某アトリエへ赴き、「イコン展」を鑑賞。正教の聖具をただのコレクターズアイテムと…

20251106日記_炉開

晴、霜降も末候となり、楓蔦黄(もみじつたきばむ)と言うように、確かに先日歩いた御池通の亭々たる欅並木は紅に黄色に色づき始め、晩秋のおとづれを感じさせるものであった。カトリックとしては、11月は「死者の月」である。3日は万霊節であった筈だが、朗読…

ヴァレリオ・ズルリーニ『タタール人の砂漠(Il deserto dei Tartari)』1976

今月は東劇で『娘道成寺』が上演されるので、是非足を運びたいと思う。またベッリーニの『夢遊病の女』も、気が乗れば見ようと思う。 ズルリーニ監督作。ブッツァーティの同名小説の映像化。読書家にとってすれば、やはり小説を下敷きにした映画が一等面白い…

クエンティン・タランティーノ『イングロリアス・バスターズ(inglourious Basterds)』2009

伊勢丹に依頼していた傘の修理が済んだ。前に記事を書いてから何があったかと思い返して見る。金木犀をはじめ、名残の花の香は絶え絶えになり、揺落の季節に入らんとする折、私の目を引いたのは、花と見紛う程に紅の、ハナミズキの葉であった。 タランティー…

20251019日記_scent of autumn

私たちの人生が神の喜びとなるのは、悲しみや荒廃をもたらすあらゆる悪に満ちた世界の中で、人間の尊厳を高め、身体と精神を尊重する生き方であるときです。(聖霊降誕後第19主日 説教) 陰、蟋蟀戸に在り。聖霊降誕後第19主日、キリアーレ"Orbis Factor"が…

市村崑『破戒』1962

過日、仕事で関西に伺った折、シンポジウムに大学の指導教授も来ており話をした。「ところで君は美濃の出身であったね」と仰るので、そんな些事を覚えている学者の記憶力に感心しつつ、その問いの真意を尋ねた所、『破戒』の作者、島崎藤村の生まれた中津川…

20251013日記_秋の七種

秋の野に咲きたる花を指折りて かき数ふれば七種の花 萩の花尾花葛花なでしこの花 女郎花また藤袴朝貌の花 山上憶良 晴、菊花開。寓居近くに新しくビストロが出来たので、そちらで昼餉を済ます。4月以来に植物園へと出かけた。春に植物園を騒がせた中国人た…

ジョージ・オーウェル『1984(Nineteen Eighty-Four)』1949

www.youtube.com 牢晴、寒露を迎えた。愛用するイタリア・ビエラ製の黒無地ジャケットを今季初めて着用し、いよいよ秋の深まりを感じる。昨日は友人と神保町の壹眞珈琲店で論談、中国帰りの彼から『毛沢東詩集』を受取る。その語感、若き毛沢東の瑞々しさ、…

外務省『日本外交の過誤』1951 

陰、昨日は高円寺教会でロザリオの聖母を記念、クム・ユビロとサルヴェ・レジナが歌われた。私を感動させるものは、究極的にはカトリシスムしかあり得ない。それはシャトーブリアンが『キリスト教精髄』で書いたように美の源泉としての宗教であって、人間の…

20250930日記_死はご都合主義のデウス・エクス・マキナではない

www.youtube.co 晴、蟄虫坏戸。まだ記録を残すまでもないが、先日見た映画の登場人物がひとりごちた「死は物語の結末足り得ない」という台詞が心に引っかかり、思索を巡らせている。 そうかも知れぬ。思えば私が好きな物語は、主要な登場人物がみな最期には…

ジャン=リュック・ゴダール『軽蔑(Le Mépris)』1963

「お金がいるでしょう」「なぜ、そう思うのです」「美くしい奥方をお持ちと聞いています」 死は物語の結末にならない。(フリッツ・ラング) 諸君は知識を求め徳に従うべく生まれたのである。(ダンテ『神曲』) ゴダール監督作、新文芸坐で鑑賞。BBことブリジッ…

ロベール・ブレッソン『白夜(Quatre nuits d'un reveur)』1971

晴、秋分。心地よい休日。丸の内でスエードの黒靴を買った、先日のフランネルスーツと合わせて着用する。 ロベール・ブレッソン監督作。早稲田松竹で鑑賞。最後にブレッソンを見たのは4年前、同じ早稲田松竹でのことだった。思えばこの名画座には随分と世話…

20250922日記_米国の復元力、或は英国の梳毛フランネルに就いて

晴、彼岸を迎えている。今年も炎天酷暑を乗り切った。暑さも寒さも彼岸迄というが、この古い諺は今日でも辛うじて真たり得ている。 註文した秋冬物が仕上がるのもこの季節の愉しみ。今年は英国ヨークシャーの織元、ウィリアム・ハルステッドの梳毛フランネル…

ソフィア・コッポラ『ロスト・イン・トランスレーション(Lost in Translation)』2003

ソフィア・コッポラ監督作。"Lost in Translation" は言語による意思疎通の失敗を意味する訳だが、日本を訪れた2人の西洋人が遭遇したのは、言語の壁に留まらない、日本社会の異質さであった。80年代から90年代にかけて、日本の閉鎖的市場・保護主義政策を揶…

20250918日記_AIを巡る恐怖と希望

晴、玄鳥去。昨日はシンポジウムのために福岡に出張した。シャガール目当てに尋ねた福岡市美術館のコレクションの、矯正し得ない卑俗さを目の当たりにして完全に気分を損ね、せめて平家都落ちの旧跡でもあればよいのに、矢鱈歩かされるし不快な街だと、不平…

ジャック・オッフェンバック『ホフマン物語(Les contes d’Hoffmann)』1881

晴、暑し。白露に入り、秋らしい風も吹くようになったか。 この季節には、無為な夏を過ごした悔恨から、芸術を覓める活動が旺盛になる。ミサに与る頻度も増える。今週末には大学時代の友人に誘われて、ベートーヴェン・プログラム。ピアノ協奏曲第1番から第5…

夜半の雑感

世の風紀の乱れを見るよりは、国際政治なりを見てマキャヴェリックな報告書を作成している方がマシに思えてくるから、虚しい。世の末を思うと、いっそ今、我が玉の緒が絶えて仕舞えばいいと、本気で思う。 SNSは恐ろしい。男の性欲と女の虚栄心には限りがな…

テレンス・マリック『天国の日々(Days of Heaven)』1978

テレンス・マリック監督作。パラマウント配給。音楽は『ニュー・シネマ・パラダイス』のエンニオ・モリコーネ、映像はトリュフォー、ユスターシュ、ロメールのお抱えカメラマン、ネストール・アルメンドロス。要は、職人の仕事である。 米国南部の労働者たち…

20250822日記_軽井沢にて

軽井沢に逗留している。残暑見舞の類を書きながら、聞こえてくるテニスボールの爽やかな打球音に私の心は沈む。本通りには醜い小型犬が沢山、世の末か中国人まで湧いている。 それにしても金持ちとは本当に耐え難い人々だと思う。主が彼らをして天の国に入る…

村田晃嗣『大統領たちの五〇年史』2024

中国やメキシコがアメリカを破壊することができない。アメリカを破壊できるのはアメリカ自身だけである。 ジャレド・ダイアモンド 盂蘭盆を郷里で迎えている。気温の上では東京よりも暑い筈であるが、庭によく涼風が通り、体感の上では余程過ごし易い。 学生…

セルゲイ・パラジャーノフ『火の馬(Тіні забутих предків)』1965

晴、立秋を迎えている。このつまらぬ破滅的な生活はいつまで続くのか。 セルゲイ・パラジャーノフ監督作。原題ままに和訳すれば「忘れ去られた祖先の影(Shadows of Forgotten Ancestors)」となる。ウクライナの少数民族フツル人の美くしい青年の男女、イヴァ…

吉野源三郎『君たちはどう生きるか』1937 再読

快晴、大暑。土潤うて溽暑し。午后5時を回らなければ外出も儘ならず、終りの見えない炎熱地獄に生きた心地がしない。 扨て昨日、知人が勤める店にひょっこりと4年ぶりに顔を出し、夕べから小夜更ける頃まで、バーカウンター越しかたみに語らい合って、旧交を…

三島由紀夫『春の雪』1969

京都から戻り、事務所で仕事を済ませた後、N響のソワレに出かけた。 シューマン ピアノ協奏曲イ短調シューマン 森の情景op.82-7 「予言の鳥」(アンコール)ブラームス 交響曲第1番ハ短調シューベルト 「ロザムンデ」間奏曲第3番(アンコール) このドイツロ…

20250717日記_前祭

祇園祭のため15日から17日にかけて炎天溽暑の京都に滞在。ただ一点仕立て屋と会話のできなかったことを除いて、完全無瑕な旅であった。懐かしき人々に会い、酒を交わし、茶を一服。2泊3日の間、私には全く珍しいことに、滔々とお喋りを続け、笑っていた。こ…

20250714日記_参院選前の覚書

陰、ろくに仕事しなかった。明日はいよいよ京都である。彼女とも会える。 参院選が近づいて来た。仕事柄、マスコミやら研究者やらから様々な情報が入ってくる。彼らの言うことは大筋で当たるのだが、100%は当たらない。だから聞き流す程度が良い。永田町では…