Epistula ad mē

美というものは、芸術と人間の霊魂の問題である

リラダン『エレン(Elën)』1865

1865年1月14日(私の誕生日!)、ヴィリエが27歳の時に上梓した作品。
若きヴィリエの作品に、『トリビュラ・ボノメ』、『未来のイヴ』や『アクセル』の充実感はあるのか?侮る莫れ。本作は崇高なる理想主義者であるヴィリエの本領が、存分に発揮された傑作。

不滅を探し求めていた男サムエルが、見目麗しき女エレンの悪戯に惑わされ、自らを貶める。愛に対する冒瀆。神の名のもと赦されるものではない。だがサムエルは女を赦した。ひとり自らが咎を追い、永遠の忘却の世界へと旅立った。なぜ彼は、かくたる侮辱を赦し得たのか。私にこのような振舞いは到底できまい。

 

君は僕が眠つてゐる間にやつて来て額に接吻した。君のお蔭で、僕は人の世まで轉落してしまつた。ああ失はれし誇りよ、僕は今や、嘗てありしおのれの亡霊なのだ。

 

かうして君は、僕から初戀を偸んだ!君はこの純潔な心の最初の言葉を穢し、それを君の冒瀆的な息吹で汚染した!神の見そなはすところで君は僕の名譽を失墜せしめた!君は僕の良心の尊厳を厚かましくも嘲弄した!一先駆者の中に眼を見張つてゐる神聖なる理想、王者の紋章よりも高貴な理想に、君は平手打ちを食はせた!君は僕を欺いたのだ!

 

安らかに眠れ、女よ、君を赦してやらう。束の間の心弱さを僕は一人で償ふべきなのだ。