Mon Cœur Mis à Nu / 赤裸の心

「美」といふものは「藝術」と人間の靈魂の問題である

ポオ『リジイア(Ligeia)』1838

人もその繊弱い意志の甲斐なさによらぬかぎりは、天使にも将た死にも、屈従しおわるものではない

亡き妻リジイアを想う男。彼の意志が、喪われた恋人を幽世から呼戻す。リラダンが本作を参考に『ヴェラ』を書いた事は間違いない。両者の筋書きは殆ど同じだ。

『ヴェラ』と『リジイア』の違い。前者は、意志の輝かしき昂揚(ヴェラ復活の場面の昂揚感は何者も比肩し得ない)を謳っているのに対し、後者はぞっとするような怕しさが全体を支配する。デ・ゼッサントの言葉を借りれば、ヴェラは「ほとんど天上的とも言える穏やかな流麗な幻影」であるのに対し、リジイアは「陰鬱な蜃気楼」である。