Mon Cœur Mis à Nu

「美」といふものは「藝術」と人間の靈魂の問題である

ドールヴィイ『ホイスト・ゲームのカードの裏側(Le dessous de cartes d'une partie de whist)』1850

『魔性の女たち(Les Diaboliques)』1874を構成する、会話文体の短篇。語り手がサロンで物語を語ってみせ、聴衆に息詰まる興奮を巻き起こさせる。明らかになる事実は限定的である、何故なら語り手による事件の「主観的な」観察しか、物語に反映されないから。だがドールヴィイに云わせれば、それが「人生に於ける最も美しい小説≪ロマン≫」のあるべき姿なのだ。

 

人が知らないということこそ、知っていることの印象を百倍にもするのだ。(…)風の吹き抜け穴から見た地獄の方が、かりに一望のもとにその全体を眺め渡したときより遥かに恐ろしいに違いない。

 

彼の作品の幻想性は、こうした思想から生まれている。

 

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バルベイ・ドールヴィ(Barvey d'Aurevilly)1808-1889
名門貴族の家柄。ロマン主義が退潮し、科学的な実証主義が隆盛を迎えた時代に於ける「反動派」として、色彩豊かな文体の雄大な物語を多く遺した「最後のロマン派」。