Epistula ad mē

美というものは、芸術と人間の霊魂の問題である

『バルタザールどこへ行く(Au Hasard Balthazar)』1966

 ロベール・ブレッソン(Robert Bresson)監督作。少女マリーとバルタザール(東方三賢者の名だ)と名付けられたロバの受難を描く。無駄を削ぎ落した禁欲的映像と強い音への拘り(例えば跫音、ガラスが割れる音、リンゴを齧る音)が印象的。
 ロバを主役に用いた作品は前にも後にも本作以外に例がないのではないか。「何を観さされているのだろう」って気持ちに陥ったが、最後にしっかりと高揚感を以てまとめるのは監督流石の構成力。

 全体でシューベルトピアノソナタ第20番第二楽章(嬰ヘ短調/fis-moll)が用いられている。映画のイメージにぴったりの、不気味で不安で寂しげな調。ブレッソンは音楽を用いるのが最も上手な監督の1人だと思う。彼は古典派が好きなのかな?『スリ』や『抵抗』ではモーツァルトが使われていた。