Mon Cœur Mis à Nu / 赤裸の心

「美」といふものは「藝術」と人間の靈魂の問題である

ボーヴォワ『神々と男たち(Des hommes et des dieux)』2010

グザヴィエ・ボーヴォワ監督作。1996年のアルジェ、「ティビリヌの修道士殺害事件」を題材とする。テロに巻込まれ殉死する未来を覚悟して修道院に留まるのか、或いは去るのか。修道士たちが決断に至る過程を描く。カンヌでグランプリを受賞。

 

殉教した7名の修道士はベネディクタンの伝統を引継ぐトラピスト会の所属。正式名に"Strictioris Observantiae"とあるように、トラピストは世俗と距離を置き、厳律の下で瞑想的修道生活を送ることで知られている。しかし映画を観て、修道士が村に出て人々と交わることもあるのかと、意外に思った。

 

修道院長であったドン・クリスチャン・ド・シェルジェは軍事貴族の出。父がアルジェ方面軍の指揮官であった関係で、幼少期をアルジェで過ごす。またアルジェ戦争の際にも士官として当地に赴いたらしい。2018年他の6名とともに列福された。

 

ロベール・ブレッソンを思わせる禁欲的な映画。雨の音や雪を踏みしめる音、鳥が啼き羽搏く音、遠くから聞える民族音楽などが印象に残っている。だから最後、修道士たちがワインを酌み交わすシーンの感傷は際立っていた。それを可しとするか悪しとするかは視聴者の感性によるだろう。私はこのセンチメンタルなシーンの挿入により、映画の格が下がったと思っている。