ロベール・ブレッソン(Robert Bresson)監督作。“Un condamné à mort s'est échappé ou le vent souffle où il veut”訳すと『死刑囚は逃げた、あるいは風は吹きたい所で吹く』。「あるいは」で2つの主題を掲げるのは、昔のフランス小説などによくみられる例。
ナチスにより収監されたフランス人が収容所からの脱獄を試みる。彼の行動のディテールが執拗に描写される。映像は静的である反面、扉の音、足音、外の物音など「音」へのこだわりが感じられ、観客に脱獄囚さながらの非常なスリルを与えてくれる。なお音楽には『スリ(pickpocket)』同様、重厚なモーツァルトが用いられていて私好み。