Mon Cœur Mis à Nu / 赤裸の心

「美」といふものは「藝術」と人間の靈魂の問題である

『グレース・オブ・ゴッド 告発の時(Grâce à Dieu)』2018

ふた月程前、烏丸御池に「新風館」という商業施設がオープンした。
ここの地下に小さな映画館があって、学生(19~22歳)はいつでも割引料金で映画を観ることができるので、重宝している。

 

今日観たのは『グレース・オブ・ゴッド』というフランス映画。監督はフランソワ・オゾンカトリックの神父による小児性虐待事件を描いている。様々な事情から沈黙していた被害者たちが、神父および教区・教会に罪を認めさせるために行動を起こす。

 

それなりにバランスのとれた映画で、過度に被害者の訴えばかりを取り上げるわけでもない。被害者間の軋轢も描いている。

 

それでも教会をどこか巨大な悪の根源としているような。
エンディングのシーンで、ある被害者の息子が"Vous croyez en Dieu?(Do you believe in God?)"と父に問いかける。問いに対する父の反応の描写が、とても気に入らなかった。
なにか訴えたげな視線をカメラに向けるのだ。
一神父の失態と信仰を結びつけるのは短絡的。本人にとっては仕方がなくとも、他人に共感を求めるなと思う。

 

あと印象的であったのは、作中小児性愛は「性的倒錯」で同性愛は「性的志向」と区別をし、前者を「病気」で穢らわしいものと扱っていることか。なぜ前者だけ、なぜ「小児性愛者」であることだけでその人を否定するのか。欺瞞を感じる。(私に言わせればどちらも病気であるし、神への許されぬ背徳であるが。)神父は自身が「病気」であることを深く悩み、犯した罪について深く悔いている。被害者に対して(最終的には)謝罪もした。この神父を過度に糾弾することが必要だろうか。神はすべてを赦される。主の寛容さを忘れたのか。人は誰でも過ちを犯す、"ERRARE HVMANVM EST"。互いに許し合うことが必要なのだ。そうした方が、自身と周りの人間の心の平安は保たれるだろう。