この小説は難しい。
一読して、いやな姦通小説の印象が強い。
酷いdécadentisme。論理の破綻。
『獣の戯れ』というタイトルは、まったくこの小説に相応しい。近代小説の主人公たり得る、理性的な生き物としての人間は、本作に登場しない。彼らはただ破滅に向かって、歩を進めるだけなのだ。
優子も喜美も、いい女じゃなかった。
優子には初め期待をしたのだけれど(p.29)。
こういったことは三島文学では珍しい。三島が描く女性に、僕はいつも魅かれるから。
入り乱れた色濃い毛に包まれて垂れている恥。萎えしぼんで垂れている恥。それは澱んだ小川の雑多な漂流物にからまった鼠の死骸のようだった。
何故三島は、執拗にペニスを描写するのか。