世紀末から20世紀への過渡期に於て輝く「小さな奇蹟の書」。詩的な短篇小説である。「詩的な」と云うのはつまり、①凝ったストーリーを持たず、②無駄を徹底的に省いた構成で、③選び抜かれた美くしい言葉が用いられていること。
ヴァンドームとケルンからそれぞれエルサレムに向かう子供たち、「少年十字軍」の悲劇が、癩者や教皇、又当の十字軍に加わる子供たちなど様々な語り手の視点で語られる。
マルセル・シュウォッブ(Marcel Schwob)、1867-1905
ユダヤ系フランス人。学士院図書館長の伯父を持った彼は、少年の頃より過去の文学、歴史、言語への強烈な関心を示した。その博識に裏付けられた幻想的短篇小説の傑作を多く遺すが、結核により37才でその短き人生を終えた。