Epistula ad mē

美というものは、芸術と人間の霊魂の問題である

ゴーチエ『詛いの星をいただく騎士(Le Chevalier double)』1840

ゴーチエ自身も協賛するパリの文芸雑誌、Musée des famillesに発表された短篇小説。
題名は直訳すれば「二重の騎士」なのであるが、ストーリーに因んで「詛いの星を戴く」としてある。なかなか趣味の良いことだと思う。

ドッペルゲンガーを主題とする幻想的小説。
中世ノルウェーの伯爵家に子、オルフが生まれる。占星術師は語る、嬰児は豊かな恩寵を蔵する「緑の星」と、悲惨な破滅を予告する「赤い星」、二つの星を戴いていると。
成長して伯爵となったオルフは、雪道で見知らぬ騎士と出逢う。見知らぬ騎士はオルフと瓜二つの姿をしていたが、唯一つ、兜の飾り羽根の色だけが異なっていた。

19世紀の創作ではなく、中世の写本に書かれた伝説を読んでいるような気分。ロマン派の冗漫さ、感傷、思想、道徳を斥け、見事にゴーチエ自身が信奉する「芸術のための芸術」たり得ている。ゴーチエが操る絢爛な言葉遣いと、自由奔放な幻想力とは、彼の時代に於いて他に類を見ない。ボードレールはゴーチエをしてこう呼ぶ、「無瑕の詩人にしてフランス文学の完璧なる魔術師」と。