Mon Cœur Mis à Nu / 赤裸の心

「美」といふものは「藝術」と人間の靈魂の問題である

三島由紀夫『私の遍歴時代』1963

三島自身の17歳から26歳までの古典主義への熱情や、人との出会い、作家としての歩みを38歳の時点で振り返る。1963年の1月から10月にかけて『東京新聞』上で発表された。

戦中戦後の作者の心情は、大切に嚙み砕いてゆかねばならない。殊に終戦のことは豊饒の海第4巻を理解する上でも。戦中の「昨日あったものは今日ないような時代の、強烈な印象」は、晩年まで三島を捕えていた。「不幸は、終戦と共に、突然私を襲ってきた」。三島はニ十歳で早くも、時代おくれになってしまった自分を発見している。

三島は太陽との出会いを経て、自身の余分な感受性を捨て去り、欠けている肉体的な存在感を補う作業に傾く。そうして行き着いたのは、過去未来ではなく、「現在の、瞬時の、刻刻の死の観念」。ここにエロティシズムを見出す視点であった。