Mon Cœur Mis à Nu / 赤裸の心

「美」といふものは「藝術」と人間の靈魂の問題である

三島由紀夫『女神』1955

1954年から雑誌で連載を始めた本作は、三島文学の中では初期から中期のものにあたる。女性美を追い求める男。彼は自分の娘を「理想の女性」にしようと情熱を注ぐ。理想と現実とが対比されながら話は進み、娘朝子は現実を乗越え「女神」となる。

斑鳩一をみて、太宰を連想したのは私だけではない筈。醜い部分を曝け出しながら、体当り的に女性を求めるかのやり方は、やはり女性に対して有効なのだろうか。まったく羨ましい。

 

人間の悲劇や愛慾などに決して蝕まれない、大理石のように固く、明澄な、香しい存在に朝子は化身した。

 

櫛比(しっぴ) 櫛の歯のように、隙間なく並んでいること
素封家 民間の財産家
索漠 味気ない物寂しいさま
譫妄(せんもう) 軽度の意識障害
ヴーヴォワイエ(仏) 丁寧語
都雅(とが)  上品で優美なさま
奇禍に遭う 思いがけない災難に遭う
狷介 自分の意思をまげず人と和合しないこと
陋劣 卑しく軽蔑すべきであること
英邁 才知が衆に抜きん出ていること
蹉跌 上手く進まない、失敗の状態になること
偏頗 偏って不公平なこと
警蹕 貴人の通行の際にある、先払いの掛け声
汗顔の至り(かんがん) 大変恥じ入る様子
眦を決する 怒りや気力を奮い起こした時の表情
含羞(がんしゅう) はじらうこと
劫初(ごうしょ) この世のはじめ
秘鑰を握る(ひやく) 秘密のカギ