Mon Cœur Mis à Nu

「美」といふものは「藝術」と人間の靈魂の問題である

行定勲『春の雪』2005

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「私がもし急にいなくなってしまったとしたら、清様、どうなさる?


行定勲監督。原作は勿論三島由紀夫。健闘したといって差し支えない仕上がりだと思う。

次作『奔馬』へと繋がらぬことを前提としているからであろうか。飯沼は出て来ない。しかしそうであるなら輪廻の話は下手に出さねばよかった。酷く浅い理解で終わっている。鎌倉でシャムの王子が仏像に手を合わせる描写は全くの無駄だ。

清明と聡子がキスするまでが早すぎる。原作にはもっと聡子から清明への揺さぶりがあった筈だ。そう、強かであると同時に弱い「女」としての聡子をもっと描かなければ。そこが面白いのに、決定的に足りていない。三島が紡いだ高度な心理描写が蔑ろにされているので、ただのメロドラマと化している感が否めない。

最悪なのは新橋ステーションの場面だ。改悪以外の何でもない。「馬鹿がよ」と思わず声がでてしまった、台無しにされた、あぁ最悪だ。

 

「又、会うぜ、きっと会う。滝の下で」
飯沼出て来ないのに会う訳ないだろう、いい加減なこと言うな。